飼い猫のついでに異世界へ
しし丸
第1話 プロローグ
「流石にないわぁ」
何がというとおれは今、オオカミっぽいケモノ?に囲まれていた。いままで野良犬には追いかけられた事はあったけど、まるで迫力が違う。
石か何か投げる物はないか辺りを探したら、草むらの所に太くて長い木の枝があったので引っ張ってみたらおれと同じ背丈位の長さだった。
とりあえず素手よりはマシかと思い、それを振り回したが軽く避けられてしまった。
「ただ振り回すのでは無く、よく動きをみて当ててみろ」
声のする方を見たら、木の上にいるベンガル柄でポッチャリしたネコがこっち見ていた。
「どこ行っていたんだよ、ブン太を追いかけてたらコイツ等にあって襲われそうになってるんだろ、助けてくれよ」
「だからさっきアドバイスしたであろう、相手の動きを良くみて振ってみるのだと」
言われた通りに相手を見て振ってみたら1匹の眼の当たった…けど少しよろけただけであった。
それでもさっきより警戒して、魔物達が少し離れた時だった。
「やれば出来るではないか、んじゃ手助けしてやろう、
「ボトッ」
ブン太から何か放たれたと思ったら、一瞬で1匹のケモノの頭と体が分断された。それを見てか、他のケモノ達が急いで逃げていった。
「………………………グッ、グロい」
首の断面図を初めて見たのでそれしか言葉が出てこなくて、そのまま動けずにいたらブン太が降りて近寄って来た。
「何ボケっと突っ立っておる、さっさと森を抜けて近くの町に行くのだ」
「あ、あぁ、分かってるよ、でも人並み以上に能力が上がってるはずのになんでうまく当たらないだよ」
おれは枝を地面に投げそう言いはなった。
「身体をならすのが必要とあの者も言っておっただろう、なにもせずにいきなり出来る訳がなかろう」
「そういえばそんな事言ってたな、とりあえず、ならす前に街に着かないとだね、でもブン太を追いかけていたからどっちに進めばいいか分からないし、それとこのケモノはこのままでいいのかよ」
「ローウルフの事か、あれならほっといて問題ない、しばらくしたら
そう言ってブン太は、森の中を歩き始めたので自分も言われるがまま後をついて行った。どうしてこんな事になってしまったと思いながら…………
それは今朝の出来事から始まった。
♦ ♦ ♦ ♦ ♦
「もう7時じゃん、また二度寝してしまった」
昨日遅くまで、モン○ンやり過ぎたと軽く後悔してる、おれの名前は
35歳独身、一般工場で働くしがないサラリーマンだ。
「おはよう」
それはいつもと変わらない日常から始まった。母親に声を掛けられ、ご飯の用意を一緒にしていたら
「にゃ~~」
「あら、ブン太おはよう」
家で飼っているブン太と名前を付けたネコが水を飲みにやって来た。いつものようにネコ用の器に水が入っているのにも関わらず、しゃもじ入れの水を当然のように顔を突っ込んで飲むというわがままネコだ。
まぁ子猫の時にゴミ捨て場の小屋に閉じ込められてるのを見つけて、その場を見て見ぬふりが出来ず、かわいそうで家に連れて行き、飼い始めてから16年も経てばそうなるよね。室内で飼うようにしてるのだが、隙をついて脱走してはなかなか捕まえるのが大変なのだ。
今日もそんな隙をつかれた日だった。朝飯を食べ終えて仕事に出掛けようと玄関を開けたら後ろから母親が叫ぶ声が聞こえた。
「ブン太が玄関の方行っちゃった、脱走するつもりだから捕まえて‼」
急いで振り返るとブン太がもう足元まで来ていた。
「ブン太‼駄目だよ」
一瞬にしてブン太はおれの脇を通り玄関から出て行ってしまったが、たまたま野良猫が歩いていたみたいでブン太の事を威嚇していた。そのお陰でブン太も威嚇していて動けずにいた所を捕まえた。
「また脱走して‼すぐ逃げ出そうとするんだから」
ブン太を捕まえて家に入ろうした時、急に地面が光出した、それが段々光が強くなり目の前が真っ白になった。
眼を開けたらブン太を抱えたまま、真っ白な空間にいた。
「気が付いたようですね」
ビックリして急いで声がする方へ振り向いたら、20代半ばの男性がいた。
まず誰⁈っていうか立って気を失っていたのか、おれは。とりあえず返事しないと
「あ、はい…………ところで貴方は誰ですか?」
「私に名はありません、色々な世界の調律をする者ですから、強いて言えば
世界の調律者?なんだそれ、それに庭にいた筈なのに何この白い空間、怖いんすけどなどと色々頭の中で考えていたら
「ここは私が作った空間なので心配ありませんよ」
え、何この人、言葉に出して無いのになんで考えてる事分かるの?っと思っていたらまた、
「私は神や女神達に近い存在なので考えてる事は分かるのですよ」
「そうなんですか、それでおれはなんでこの空間にいるんですか?」
「それはこれから向かうエターナルという魔法がある世界に召喚される所だったのを不具合という問題が発生したので一時的に私が呼びました」
マジか、ラノベではよく異世界物が好きで読んでいたけど、実際に自分がなると嬉しい反面少し戸惑うな、それに気になる事言ってたような。
「あの、異世界に行けるのは嬉しいんですけど、問題っていうのが聞こえたような…………」
そしたら調律者は申し訳なさそうに言ってきた。
「その問題って言うのがですね、召喚対象があなたでは無く抱えているそのネコなんですよね、それなのに近くにいたあなたまで巻き込んで召喚されてしまったので、とりあえず説明とお詫びを兼ねてお呼びしました」
「え、おれじゃなくて、ブン太が、ネコなのになんで?」
「ネコの能力が高くて召喚対象になったからです、高い理由なんですがそのネコの前世がエターナルの世界では槍と風魔法の達人だったからみたいですね」
調律者を見ると、いつの間にか手元に本がありそれを見ながら説明しだした。
それで聞いたのをまとめると、エターナルという世界で生涯を終えたら、色々と
「そういえばそのネコを話せるようにしないといけなかったですね」
そうすると調律者がブン太に手をかざしたら、急にブン太が光りだした。しばらくすると光りは消え、知らないおっさんの声が聞こえてきた。
『比呂、早く下ろせ、我だ、ブン太だ』
「うぉっ⁈」
おれはビックリしてブン太を急に放してしまった。
『ばぁっかぁもん‼急に放す奴があるかぁ‼あぶないだろ‼』
めっちゃおれの方を見ながら言われた。
「すいません…………っていきなりブン太が喋るから色々な意味でビックリするでしょ、普通」
そこから少し言い合いが続いた。ブン太が地球での自分に対する躾け《しつけ》の事や人間の言葉が分かってたのに、なぜおれの話を聞かなかった事などお互いについてだ。そしたら最後にブン太が言ってきた。
『まだお主に言いたい事はあるが、これだけは言っておく、われがゴミ箱に閉じ込められてる時に拾ってくれて感謝しておる、………あ、ありがとうなのだ』
「な、なんだよ、急に言われると照れるだろう」
「あのぉ、そろそろよろしいですか」
調律者が無の表情なんだがイラッてしてるのが伝わる口調で言ってきた。
「あ、はい長々とすいません」
『す、すまん、すまんついでにわれは何で猫のままなのだ』
「その事なんですけど、女神様からの伝言を預かってるんで読み上げますね。……(ジークヴェルナちゃん、其方を地球に転生させる為、向こうの神に本人はのんびり暮らしたいのが希望だから、それに沿うようにとぶん投げ……じゃなく頼んだから人間に戻すのは妾には無理じゃ、それにこっちの世界の都合で召喚させられたのに、また頼むのは言いづらいから、ゴメンね)っだそうです」
『ゴメンね…ってなんじゃ』
「プッフフフククッ」
笑っちゃいけないんだけど、おれは我慢できずに吹いてしまった。
「それでは続けますね、対象が猫なのに冴木さんがついでに巻き込まれてしまった件についてで」
「ついでなら、地球に戻してくれるんですか?」
おれは思わず調律者の話を遮った。異世界に行けるのは嬉しいが、地球に戻れるんなら戻りたいし、対象者がブン太なら、ついでのおれなんて戻っても問題ないだろと聞いてみたのだ。
「いえ、ついでも戻す事は出来ません。」
「何でですか?」
「ネコを人間に戻すのがダメな理由と一緒で、女神さまが地球の神に頭を下げて頼み込むのが嫌なんだそうです」
申し訳なさそうに言った。
どんだけ嫌がってんだよ、女神さまはと思っていたら
「そういうお人なので諦めてください。それで冴木さんはついでに召喚されたので能力が人並みです。ネコは能力は高くてもその姿では何も出来ません。そのまま行っては二人とも生きて行くには厳しい環境なので女神さまからのお詫びのプレゼントがあります」
調律者は仕事の様に淡々と話し続けた。
「プレゼントの内容なんですが、ネコの姿だと槍は使えないので風魔法は昔のまま使用出来るようになります。冴木さんにはネコの変わりに槍スキルを受け継ぐ形になりますが、少し鍛錬が必要です。それと能力も全体的に一般よりも底上げの状態で、風属性と水属性を適正にし
また無表情に戻り説明してくれたので、おれからは出来れば街の近くで人に見られない所がいいと頼んだ。それと世界が大変だから呼ばれたんだと思い、魔王的な奴を倒すとかあるのかと聞いてみた。そしたらそういう者達はいるがおれは巻き込まれたのだから好きに楽しめばいいとの事だ。それからブン太からも質問し、二人で色々と聞いてみた。
「それでは最後に女神さまの伝言がついさっき来たので伝えて転移させます、(妾が忙しい中、わざわざプレゼントしたんだからすぐに死なないように頑張って生きてね)では」
それを聞いて反論する前におれ達が光始めて、また目の前が真っ白になった。
また視界が元通りに戻ったらおれ達は草原にいた。本当に異世界に来たのかな?周りの景色を見てもまだ信じられない、だって自然豊かな山に来たって感じなんだもんな。
『どうした、ボーっとして?』
ブン太が立った前足でおれの足をポンっと叩いて話しかけてきた。
「なんか異世界に来た実感がないなって思って、でもブン太が喋ってるのを見るとそうなんだなって思うよ」
最後の方は笑いながら言った。
『なんだ、その納得の理由は。確かに、ここは草原で下った所は森だしな、そう思うのも仕方ないが、その格好はちと目立つぞ』
呆れた感じでブン太に言われた。そういえば仕事に行く所だったからユ◯◯ロの水色パーカーにジーパンという服装だった。
「着替えなんか無いし、このまま行くしかないね」
とりあえず小高い丘の草原にいて遠くに街らしきのが見えたのでそこを目指し、これからの事を話ながら森の中に入っていった。
♦️ ♦️ ♦️ ♦️ ♦️
朝の事を思い出しながら、しばらく歩いてやっと街道らしい所に出た。朝飯を食べてから飲まず食わずで歩きっぱなしなのでそろそろ限界だ。
「ブン太~街はまだなの?腹減ってやばいんだけど」
もうへばりそうな感じで言った。
『われだって減っておるわい、街もこの街道を進んで行けば着くはずだから、我慢しろフレン』
そう言ってるブン太に疲れは見えなく、ぽっちゃりしてる割にはトットットッ♪とリズミカルに歩いてた。それでフレンとはこのエターナルの世界で名乗る名前だ。冴木比呂だと変わった名前で目立つという事なのでゲームで使っていたフレン・レフィリアというのをそのまま名乗る事に決めたのだ。それからブン太の言葉を信じてしばらく進んでいると、急に止まりおれの頭の上に乗って来た。
「どうしたんだよ、急に乗ってきて?疲れたのか」
『そうではない、少し先の方で土煙が見えるだろう、そこで人間たちが魔物に襲われてるからよく見えるようにお主に乗ったのだ。してどうする、助けるかそれとも遠回りして街に行くか?お主に戦闘はまだ無理じゃからな』
前足を起用に組んでそう聞いてきた。確かにローウルフから逃げたおれには無理だろう、でも見捨てる事は出来ないしな、ヨシ。
「おれには無理だけどブン太なら何とかなるだろう、助けてあげてくれない?」
『フレンならそういうと思ったわい、んじゃこのまま向かうか』
ブン太を頭に乗せながらおれは襲われてる人達の所に走り出した。
近くまで来たら、馬車が倒れていてその周りで冒険者達が戦闘してるのが分かった。
「馬車の近くに
『魔物の方はゴブリン3匹とオーク1匹みたいだな、それに対して戦士はいるが倒れているな、それと
おれは馬車の方をブン太は戦闘してる方を報告しあい、持ちそうもないってヤバイじゃん って思ったらオークが弓術師に向かいこん棒を振りかざしながら走り出した、その時、
『風刃×3』
急にブン太が唱えて髪の毛がブワってなりそれと同時にオークの両腕と首が落ちていった。その光景を見たゴブリン達は恐怖を感じたのか逃げ出したが後ろから弓術師によって矢を射れられ倒された。
「魔法するなら降りてやってくんない、髪の毛がブワってなってビックリしただろ!!」
おれはブン太に怒鳴った後、冒険者達に近寄り声をかけた。
「あのみなさん、大丈夫ですか?」
「ああ、おれら二人は大した怪我はない、あなたのお陰で命拾いしたよ、ありがとう」
弓術師が頭を下げお礼を言ってきて、回復術師は頭だけ下げ、倒れている人達の方に向かった。男性は声をかけられたらゆっくりと起き上がり、回復術師は少し話をして次に御者の方に行った。少し怪我をしていたみたいで治してもらっていた、その間に気絶していた戦士が目覚めて弓術師に状況を聞いて、おれ達の方に近寄って来た。
「ジョルジュから聞いた、助けてくれてありがとう」
「ジョルジュ?」
「自己紹介がまだだったな、おれはこのゴールドマウンテンのリーダーで戦士のガイル、弓術師のジョルジュ、回復術師のリイスだ。それからあちらにいるのが護衛対象のゴルドーさん達だ」
ガイルは手で示し、それぞれ紹介してくれた。
「私はフレン・レフィリアといいます、それからネコのブン太です、一体何があったんですか?」
「ああ、実はな……」
聞いたら隣街へ取引しに行った長旅の帰り、魔物共に二度襲われ、最後にオーク達がやって来たそうだ。
たまたまオークが投げた岩が、ガイルに当たり馬車まで吹っ飛んで気絶してしまい、馬車が倒れた時にゴルドーさんも気絶したみたいだ。そう話していたらゴルドーさんが近寄ってきた。
「先程、話を聞きました。この度は私共を助けて頂きありがとうございます。何かお礼をしたいのですが……」
深く頭を下げて言ってきた。
「お礼だなんてそんないいですよ、たまたま通り掛かっただけですから」
それにおれは何もしてないからね、やったのはブン太だし、そのブン太はというと頭の上であくびしていた。
「それではこちらの気が収まりません」
ゴルドーさんは真剣な表情で言ってきた。
「そう言われてもな………だったら街に向かおうとしてたんですけど、私達、凄く田舎から出てきて迷っていたんで一緒に行ってもいいですか?」
「それだけでいいのですか?そんな事なら大歓迎ですよ、より安全に街に帰れますから此方からお願いしたいくらいです』
そしたらガイルさん達も頷いていた。よかった、ブン太を信じてないわけじゃないんだけど、ホントに街に着けるか不安だったんだよね。
「あと、ゴルドーさんにお金の事も教えて頂けますか?ご存じの通り田舎育ちなのでお金をあまり見る機会が無かったので価値が分からないんです」
「それくらい御安いご用ですよ、街に入るにも通行料が必要ですからね、ただしガイルさん達みたくギルドカードがあれば免除なりますけどね」
ゴルドーさんが笑顔でそう話してきてくれた。
「通行料の事知らなかったのでよかった、ありがとうございます」
「お礼を言うのは此方の方ですから、馬車の方もそんなに破損はなく走れるみたいなので街に着くまで馬車の中でお教えしますよ」
「よかった、それじゃよろしくお願いします」
おれはゴルドーさんと握手した、そしたら待ちわびたブン太が話しかけてきた。
『やっと話がついたか、長かったな』
《ネコが喋った!!》
おれ以外の全員が一斉に驚いた。この異世界じゃ喋ってるネコとか動物居そうな気がするけどな。
「あの、ネコが喋るって珍しいんですか?」
「初めて見たぜぇ」
ガイルが驚いた顔で言い、周りが頷いた。
「ネコが喋るのは初めて見ますね、高位の魔物にならそういう記述があったと古い文献に乗ってましたけど…」
そう言ったのは興味津々でブン太を見てる回復術師のリイスだ。だんだん近付いてきて緊張してしまう、ブン太はというとちょっと嬉しそうだ。
『魔物と同類はちと嫌じゃが、高位というのは嬉しいな。フレンも我の事様付けで呼んでもいいのじゃよ♪』
「何が様付けで呼んでもいいのじゃよ…だよ!ブン太はブン太だろ、まったく」
機嫌がいいのか、鼻歌していて聞いちゃいなかった。それから馬車の中でお金の事やブン太の事を話ながら街へと向かって行った。
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