第69話 初めてのパーティ

「さて、レベルは28か。ブルサハギンやイザリガも倒せるようになるとはの。さすが、わちが見込んだだけはある」

「あいつらそんな名前だったのか。けど、それなら?」

「うむ、よかろ。ただし、攻撃ではなく回復役を頼む」

「回復役?ハンマーで?」

「・・・いや。ハンマーにヒールをのせて叩くこともできようが、杖で普通に頼む」

「俺の攻撃力では、まだ不足だったか?」


 それなりに頑張ってレベル上げしたつもりだったので、少し残念だ。相手がどんな魔物か分からないけど、アタッカーとして貢献する前提だったのだが。


「いや、そうではない。今のお主でも充分ダメージは与えられようが、言ったであろう?わちなら倒せると。最初から攻撃役は足りておるのよ。むしろ、村人たちに怪我人が出る可能性が高いのだ。年によっては死人も出る」

「「!」」


「前回、10年ほど前のこと。その頃に、世界中で魔物が増えてな。わちは年若いながらもそれなりに戦えたから、村を出て方々の魔物と戦っていたのよ。だが運悪く、ヤツの現れる時期と重なってな。わちが不在のまま村人総出で戦うことになってしもうた。…ひどい戦いだったそうな。皆の力で何とか追い返すことはできたが、多くの村人が帰らぬ人となった。わちも、幼馴染を失ったよ」


「…そうか、そんなことが」

「昔のことよ。でも、昨日のことのよう。村に帰ってきたわちを、皆は暖かく迎えてくれたが、この10年、わちはわちを許すことができなんだ」

「ワウミィ…」

「要らぬことを言うたな、許せ。お主にはつい余計なことまで話してしまう。ほんに末恐ろしいやつじゃ」


 力なく笑うワウミィに何も言ってあげられないが、ワウミィも慰めの言葉が欲しいわけじゃないんだろう。だから代わりに、カラ元気も込めて言ってやった。


「俺に任せとけ!村人全員、傷一つ付けずに終わらせてやるよ!」

「ふふっ。頼んだぞ」


 当初の予定とは違うし、職種的にも回復役に専念するのはミスマッチで不安が残るが、ワウミィによると元々数に入れてない補助要員だし、回復自体もそう必要にはならないだろう、とのこと。お役に立ちたいが、回復役は出番が無い方が結果的には一番だし、複雑な気持ちだ…。


「さて、そうとなればパーティを組んでおこう。離れて戦うことにはなるが、万が一にも連携する時があるやもしれんし、一定の距離なら経験値も共有されるからの」

「おぉ。俺、パーティ組むの初めてだ」

「ほぅ?では、ルイの初めてをもらうとするか」

「…なんかヤラシイ」

「手続きは簡単。冒険者カードの角に印が…そう、その印よ。その印が下に来るようにしてわちに差し出すがよい」


 ワウミィも同じように、カードを差し出す。互いのカードが重なったところで、澄んだ音が響き渡り、カードが薄く光る。久しぶりにインフォメーションボードを確認すると、無事パーティを組めたことが確認できた。


「なんかこれ、握手してパーティ組むみたいで良いな」

「ねぇねえ、ルイ!カードとカードでハート型を作ってるみたいだったよ!これって、男の人同士なら、うふふふふふ」

「妙な妄想で楽しむのは、どっか遠くでやってくれ」


 ちなみにパーティ解散は別の角の印を上に向けて互いのカードを重ねる。お疲れ様のハイタッチのような感じだ。


「パーティは先も少し触れたが、連携の強化や経験値の共有のほか、特定の魔法の効果範囲がパーティ限定だったり何かと特典が多い。デメリットも特にないから、共に冒険する仲間が出来たら組んでおいた方が良い。転生者はメンバーのステータスを閲覧したりもできるそうだが?」

「…ワウミィのステータス、"?" とか "-" とかが並んでてさっぱり分からないぞ」

「レベル差があって見えない部分と、わちが意図的に隠ぺいしている部分がある。お主、まだまだわちの婿にはなれそうにないな?」

「婿にはならないけど、どんだけ強いんだ」

「ふふっ。早くわちの全てを見れるよう、強くなっておくれ」


 レベルもステータスも、各武器の熟練度もさっぱりだ。今のところ見る必要はないと言えば無いんだけど、見れないのは何か悔しい。くそぅ、精進だ。


 初のパーティ結成も体験したところで、明日の戦いの全体の流れについて説明を受ける。これについては勝手な思い込みで大型モンスター対象のレイドバトルみたいな様子を想像していたのだが。


 それはまさしく、漁だった。

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