第36話 エリエルとの再会
「やっほー!お久しぶりー!エリエルだよー!」
キメポーズのエリエルが居た。ガングロギャルは止めたのだろうか、化粧はしているが黒くはない。一番変わったのは大きさで、天使の姿はそのままに、手のひらサイズよりは少し大きいくらいのサイズになって宙に浮いている。
「さて、お祈りも済んだし、次に行くか」
そう言って立ち上がり、出ていこうとしたのだが。
「ちょ、ちょっと!何で?何でスルーするの?あたしのこと見えてないの?むしろあたしの可愛さに目がくらんじゃって見えてないの!?」
正面に回り込んできた。言動も行動もウザい。
「女神さまが、周回遅れのルイをサポートするようにって、この世界に送り込んでくれたんだよ!」
「あ、そういうの、結構ですから。それじゃ」
片手をあげて、横を通ろうとする。しかし回り込まれた!
「いや、結構とかそういう話じゃなくて!何かの勧誘みたいに断るのやめて!?ほら、聞いて聞いて、あたし物知りだよ?色んなこと教えてあげられるよ?あたしが居れば、ちょちょいのちょいでみんなに追いつけるんだよ?」
「いやいや、逆に足を引っ張られる未来しか見えない」
「やだ!ルイ、未来が見えるの?すごーい!」
だめだ。こいつはヤバい。一刻も早く別れるか、誰かになすりつけなければなるまい。取引所に ”あっちいってくださいカード” とか売ってないかな。
「と、に、か、く。あたしが来たからには大丈夫!全部エリエルにお任せだよ!女神さまにも、ちゃんとルイを幸せにするようにって言われてるんだから」
「女神さまは何て言ってたんだ?」
「仕事をさぼった上に勝手なことをした罰として、研修を兼ねていってらっしゃいって…」
「そうか、研修頑張れよ」
笑顔で手を振る俺。
「わぁ、ありがとー」
満面の笑みで手を振り返すエリエル。俺がそのまま通り過ぎようとすると、ハッとした表情になって回り込んできた。
「だから、ダメなんだってー。ルイに連れて行ってもらわなかったら、あたし天界にも帰れないんだってー。ホントごめんであやばるかだぁー」
最後の方は号泣だ。ちっ、仕方ない。
「分かった、分かったよ。しょうがないな。邪魔だけはするなよ」
「あ、ありがどぉー」
悪気無く迷惑をかけてくるタイプとはいえ、そんな酷いことにはならないだろうし。本音を言えば少し寂しくなっていたところだ。旅の道連れができるのはありがたい。のだが。
「でもエリエル、お前目立つよな?何とかならないのか?」
少なくとも街中で、天使を連れた冒険者など見かけたことが無い。
「あ、大丈夫だよ。この辺りにはいないけど、高レベルの冒険者がいるような先の街では、普通に妖精連れの人とかいるし。インフォメーションボードでオンオフできてね、オフにしてる時は、妖精はこの世界と重なる別次元で自由に過ごしてるの。敢えてオンにして連れ歩いてる人もいるけどね。ほとんどの妖精は特に役立つわけじゃないから、アクセサリー感覚?私も同じシステムだよ」
「そうかそれなら安心…じゃない。レベル1の冒険者が天使連れ歩いてたら悪目立ちするだろ?」
「あ、それも大・丈・夫!私は役に立つ方の天使だから、オンの時にも他の人から見えないように姿を隠すことができるよ!」
「おぉ!初めて役立つ情報が!」
「ルイ?スルー出来ない単語が混じってるよ?」
つまりこの世界にいる ”オン” 、別世界で休んでる ”オフ” 、さらにオンの時にも他人に姿を見せてる状態と、見せてない状態が選べるということだ。これなら同行させてもトラブルにはならないだろう。
”トイレに行くときはオフにしていいからねー” とかニヤけ顔で言ってるが、そのままずっとオフにしといたらどうだろう。次に呼んだ時に面倒くさいかな。
さてこの部屋にもだいぶ滞在してしまった。 “何か悪いこと考えてない?” と聞いてくるエリエルは置いておいて、買い物に向かうとしよう。
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