第27話 15歳、冒険者登録2

 ---------------

 名前:ルイ

 種族:人間

 年齢:15

 職業(クラス):ウォーリア

 Lv:1

 -------------


 カードを受け取った瞬間、世界がひっくり返ったような衝撃を受けた。職業を得たこと、武器の熟練度などがパラメータとして発生したこと、念じるだけで視界の端に透過性のある”インフォメーションボード”を表示できるようになったこと、インベントリが使用できるようになったことなど、様々なことが急激に当たり前になったような感覚。


「ルイ君、ルイ君?大丈夫?急にボーっとして」

「え、あぁ。ちょっと色んな事が頭の中を駆け巡って…」


 情報量が多くて少しめまいがしそうだ。


「転生者の人はみんな、今のルイ君みたいな反応をするんだけど、地元民でもこうなることがあるんだね。知ってたら先に教えてあげれたんだけど、ごめんなさい」

「いや、もう大丈夫。それより、冒険者について教えてもらえる?」


「少し長い説明になるから、具合が悪くなったら言ってね?冒険者はそのまま、冒険する人。ギルドや個人から依頼を受けて、達成して、報酬をもらって生活する人たちのことね。ギルドから受けた依頼を達成したら報酬をギルドで受け取れます。失敗した時も必ず報告してくださいね。情報は共有してるから、報告はどこの街のギルドでも大丈夫。個人からの依頼は色んなパターンがあるから、その依頼人から詳しい話を聞いてください。トラブルになることもあるけどギルドを通さない依頼は自己責任だから慎重にね。あと冒険者全員が対象の特殊なクエストもあります。これは世界のルール、女神さまからの依頼とも言われてるの。ユニークモンスターの討伐とか様々な物があるよ。これを達成したらマジックバッグに直接報酬が配られます。転生者の人の場合はインベントリに配られるみたいね。女神さまの御業ってすごいよね」


 他にも細かな説明を受けた。良くある”冒険者ランク”みたいなものは無いらしい。SSランクの冒険者だぜ!みたいなのは無いのだ。


 ただクエストには推奨レベルや、前提となるクエストを達成していることなど、様々な基準が設定されているので、ギルドはあまり無茶なクエストはおススメしないようにしているし、個人からも依頼されない模様。全員対象のクエストは千差万別。


「冒険者のみなさんはパーティを組んでクエストに挑むこともあります。パーティは最大5人までで、口頭で勧誘、承諾したらパーティ成立。冒険者カードにもその場で反映されるよ。達成したクエストの報酬は平等に配られたり、ランダムに配布されたり、依頼によって様々。大規模なクランを結成して活動する人たちもいるけど、その説明はまた今度ね」


 親しい人とは深く仲良くするけど、基本的には引っ込み思案で社交的ではない俺は、ソロ活動が割と好きだったりする。パーティとかクランはまだまだ先の話かな。


「説明はこんなところかな、分からなかったところはある?」

「いや、大体わかったよ、ありがとう。じゃあ今日のところは帰るよ」

「あ、待って。冒険者登録した人には、マジックバッグ(小)をプレゼントしてるの。お好きなものをどうぞ!」


 お姉さんがそう言って、カウンターの横から袋を取り出してきた。リュックサックタイプ、肩掛けカバンタイプ、道具袋タイプ…まだまだ出てくる。多いな。


「何でこんなに種類あるの?」

「え?好みってあるじゃない?選べた方がいいでしょ。あ、外見にかかわらず、入る量は一緒だから安心してね」


 まぁ、確かに選べるのは嬉しいけど。植物で編まれたような、ネギとかフランスパンを半分出しながら運搬するのが似合いそうなお買い物カゴや、俺の身長の半分くらいはありそうなつづらは冒険に不向きだと思うんだが、誰か選ぶんだろうか。


 入る量が一緒なら小さいほうが邪魔にならないし、両手も空いた方がいいだろうから、腰につけるタイプのベルトポーチを選ぶことにしよう。


「転生者の人はインベントリがあるけど、地元民は無いからね。女神さまから報酬を受け取るためにも、マジックバッグは冒険者の必須アイテムだよ。お金をためて、もっと収納量が大きなものを買えるように頑張ってね!」


 もう一度お礼を言って、今度こそ冒険者ギルドから出ることにする。掲示されている依頼とか少し気になったけど、たくさん説明を聞いて少し疲れたし、何より検証しないといけないことが多い。インベントリにしれっと放り込まれたも気になる。バルバラにも相談した方が良いだろうから、今日は急いで帰ることにしよう。


 門に向かう途中、珍しく冒険者、それも転生者を見かけた。門に近づくにつれてその数は増えていき、門を出る頃には街に入る人が列を作っているのを見て驚いた。ベルンハルトもかなり忙しそうにしていて、声をかけることができなかった。


 街を出ると、道の向こうから途切れ途切れに姿が消えるほどの高速移動をしながら街へ向かってくる人や、ペガサスのような生き物に乗って飛んでくる人など、続々と冒険者が集まってくる。今、ヌルの街で何かのイベントが発生しているらしい。


 すごく気になるけど、こちとら周回遅れのLv1。4年もこの世界で冒険者をやってる人たちが集まるようなイベントに参加できるとは到底思えない。早く追いついて参加できるようになりたいけど、今は我慢だ。明日から頑張ろう、そう思いながら家路を急いだ。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る