ミステリーが導く先はミステリー
桐華江漢
1:読者への挑戦状
ミステリーの醍醐味といえば謎解き、特にクローズドサークルものの謎解きは至高の産物だ。
主人公が訪れた不気味な館。
一癖も二癖もある登場人物達。
突然の豪雨や嵐による脱出の不可能。
翌日に発見される一人の遺体。
そして次々と起こる連続殺人。
ミステリーが大好物な読者ならこの文句だけで唆られるのではないだろうか。もちろん、人の死なないミステリーもあるし、恋愛を絡めた青春ミステリーも存在しその系統のミステリーが好みの人もいるだろうが、やはり殺人というミステリーが私は断トツで好みである。
限られた空間での殺人事件。登場人物の誰が犯人なのか。どのようなトリックを駆使して計画を進行させているのか。動機は一体何なのか。
読み進めながら自分でも考え犯人を突き止める。読者探偵とでも表現しようか、その物語の事件に自分も参加し解決することに没頭する。ミステリー小説を読む時は常にこの姿勢だ。
いつ殺人が起きるのかというハラハラ感と、謎が謎を呼び混乱するモヤモヤ感。そして終幕で謎を開示していった時のスッキリ感とドキドキ感。ミステリーを読む上で味わえる感覚だと思うが、もう一つ加えたい要素がある。それは『騙された感』だ。
最後まで怪しそうな性格最悪な男性の登場人物がおり、トリックや動機も思い付く限り犯人として当てはまると思いきや、実は無関係そうな可愛いらしい女の子が犯人だった、なんて結末のミステリーがあったりする。私はその結末に対し憤るどころか『やられた!』と称賛の意を露にし、清々しい気分になる。この騙された感がまた楽しいのだ。
謎を解くことが醍醐味でありながら、謎が解けずともこの騙された感を味わいたい。一見矛盾しているようだが、ミステリーを読んだことのある人ならこの相反する気持ちを理解していただけると思う。
だから私は今回、読者の皆さんにこの感覚を味わっていただきたい一心でこのミステリーを書いてみた。クローズドサークルである館もの。繰り返される殺人事件。犯人はなぜそんな殺人を犯したのか。皆様には考えながら是非楽しんでもらいつつ、そして最後に騙された感を受けてもらえるでしょう。なぜなら……。
……これを読んだあなたはすでに私の術中にハマっているのだから。
桐華 江漢
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