第2話 From now on(2)

「あら、初めてのお客様?」



そこに、少し派手めだが、長い黒髪が印象的な女性が現れた。



「ああ、リエちゃんはこの前いなかったから。 こちら北都社長のご子息でホクトエンターテイメントの専務でいらっしゃる真太郎さんよ、」



ママがその彼女に真太郎を紹介した。



「え、北都社長の? そういえば似てらっしゃる、」



なんともエキゾチックなその美女は真太郎の隣に座った。



「リエです。 よろしくお願いします。」



「こちらこそ。 こちらには度々お世話になっています、」



真太郎もお辞儀をすると、



「真面目な方なのねえ。 北都グループの御曹司なんて遊び倒してそうなのに、」



リエはクスっと笑った。




「いえ・・。 本当は酒も苦手だし。 けっこうインドア派だし、」



真太郎は頭をかいて笑った。



見た目と違って、彼の暮らしぶりは本当に地味で。



趣味といえるものもなく、ストイックに仕事をこなす。




「お若いけどもう結婚されて何年も経つのよね、」



ママが笑うと、



「え、結婚されてるの? いきなりショックだわ、」



リエはオーバーにそう言って笑った。




4つ年上の姉さん女房ひとすじで。



『初恋』といっていいほどの相手・南だけをひたすら愛し。



女性は彼女しか知らず、もちろん浮気なんてことも一度もない。





「え、ユーリのお姉ちゃんのお店に行ってきたの?」



帰ってきた真太郎のスーツの上着を受け取りながら南は言った。



「ウン。 あそこは誰を連れて行っても喜んでくれるし。 ママさんもいい人だし。 女性の平均年齢がちょっと高いけど、そこがまた落ち着くっていうか、」



真太郎はシャツの腕ボタンを外しながらそう言って笑った。



「真太郎はさ~、やっぱり年上好きだよね。」


南は笑う。



「はあ?」



「熟女好きっていうか、」



「熟女って、」



「あ、あたしも立派な熟女か、」



南はひとりでつっこんでひとりで笑ってしまった。



そんな彼女を見て真太郎も笑ってしまう。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る