My sweet home~恋のカタチ。13 --marigold--

森野日菜

第1話 From now on(1)

あゆみが『ルシエ』に勤めるようになって、2ヶ月。



はじめは客層の違いに戸惑うこともあって、なかなか会話が弾まなかったり困ったことはあったが



素直で清潔感のある空気を持つ彼女には自然と客がつくようになった。



普通は歩合制だったりするのだが、ここはママの意向で定額制で



客を取り合ったりのギスギスした空気がここにはなく



先輩のホステスたちもあゆみに親切に色々教えてくれた。





キャバクラのときのような激務もなくなり、ようやく落ち着いた生活ができるようになって。




それが全て有吏がひょんな偶然から北都エンターテイメントのクラシック事業部のアルバイトに採用されたことから始まっているのかと思うと




人の縁の不思議さをしみじみ感じていた。




「あら。 北都の若社長。 いらっしゃいませ、」



真太郎は今日も接待で銀座の会員制高級クラブ『ルシエ』に客人を伴ってやって来た。



「若社長はやめてください。 本当にぼくは社長でもなんでもないんですから、」



照れて笑う。



とにかくお酒の場が苦手で。



今までは極力避けてはきたものの。 徐々にそんなことを言ってはいられなくなり。



こうしてお客さんを連れて飲みに行くことも度々になった。




「あ、ようこそいらっしゃいませ。」



この店に勤めるようになったあゆみが真太郎に挨拶にやって来た。



「こんばんわ。 この前連れてきたお客様もすごくこのお店を気に入って下さって。 今度紹介してもいいですか?」



真太郎はニッコリ笑った。



「ええ。 喜んで。 そう言っていただけると嬉しいです、」




「どうですか? 慣れましたか?」



「はい。 まだまだですけど。 ママや先輩方もすごくいい方で。 いろいろ教わっています。」



「そうですか、」




北都グループの社長の息子さんなんて


本当に手が届かない人のようなのに



あたしにも敬語を使ってくれるような物腰の低さで。



ぜんぜん偉ぶってなくて、気さくで。



ステキな人だなあ・・




あゆみは小さなため息をついた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る