堕天使に羽衣を献上せよ! ~推しのVtuberが俺の服を着てくれる理由~

アンビシャス

First Wear 採寸に他意はない!

プロローグ 男が女に服を贈る、たった一つの理由

 

 脱がすためだ。


 俺は長年、女性をより美しく見せる服を縫ってきた。だからこそ知っている。

 ――――全裸こそ、女体の美を最も発揮させるのだと!


 故に、制服ブレザーも、体操服ブルマも、スク水も、メイド服も、ナース服も、逆バニーも、牛柄ビキニも、童貞を殺すセーターも、全てはみかんの皮と同然なのだ!


 だけど、皮があるから、中の果肉に期待が高まる。

 自分の好みの服を着てくれるからこそ、布の下の裸に『特別な想い』が生まれる。

 それが自分の好きな女子なら、尚更――――――否。



『誇れ! 汝は選ばれた! 神すら嫉妬した至高の美を有する堕天使にして、電脳バーチャル界に降臨したアイドル――Vtuber宵月レヴィアにな!』



 リンリンと鳴る鈴のような可愛らしい声で、尊大な言葉を紡ぐドヤ顔の美少女。

 そんな彼女に名指しされ、口をぽかんと開けた俺の視線は……少女の頭頂部に一点集中。

 一対の小さな黒翼が、まるでケモ耳のようにパタパタ動いていた。


『 聖岳ひじりはじめ! 汝に誉れと権利をくれてやろう! そう、この至高の美を有するわらわを! 彩り、飾り立てる誉れと! 妾と使徒デザイナー契約ちぎりを結ぶ権利を!』


 天の川のように流れる白銀の長髪。

 その銀糸の先がうっすらと青白い燐光に包まれている。

 その光こそ、彼女が二次元から三次元に現れた証。


 Vtuber宵月レヴィアの立体映像ホログラムが、一眷属リスナーでしかない俺に向かって語り掛けている。


 そんな妄想ユメのような現実が存在している証だった。


「え、選ばれたって……何に、です、か」


 息も絶え絶えに、何とか言葉を紡ぎだアッヤバい息できなっ……‼ 


 ぱっちり大きな空色の瞳、見るだけでもう柔らかスベスベな頬に、舐めるほど滑らかなフェイスライン。

 そんなご尊顔を目にして、只人が平気でいられるわけがない。

 脳内で止めどなく繰り広げられる、すこの乱舞が俺の息を止めにきてた。


 尻もちついて呆然としてる哀れな眷属おれを、円らな瞳が傲慢に見下ろし、『ふふん』とふんぞり返る。


『全く、汝は不甲斐ない眷属だな。先の配信で述べたであろう。わらわが……数多のVtuberが集うバーチャルファッションショー【RAVFICラヴフィック】のエントリーが決まったことも知らぬとは!』


 いや、それは知っている。だからこそ、信じられない。

 だって、そんな筈ないんだ。


 そんな都合の良いことが有る筈ない。

 服を縫うしか取り柄が無くて、親のコネでデザイナーになれたけどクビになった。そんな俺にとって都合の良すぎる妄想ユメを、堕天使は続く言葉で容易く叶えてくれた。


『天にまで聞こえた有名ブランド【Siiシィ Forteフォルテ】のデザイナーである汝に命ず! きたる電脳の祭典にふさわしき羽衣を、5着。わらわに献上せよ!』


「おぎゃああああああああああああああああああああああっ⁉」


 推しのVtuberが俺の仕立てた服を着てくれる。

 そのありがたさと尊さで、俺の心は転生オギャった。


    * 聖岳はじめ in自室 10/4(月)PM24:00 * 

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