黒の余韻
べる
友
─自分でも分かった。いや、自分だからこそ分かった。これが死に際なのだと。─
意識が薄れていく。呼吸が浅くなっていく。子供たちの仇は取れただろうか。いや、子供たちは仇討ちなんてものは求めていなかっただろう。彼らはただ日々を生きていただけなのだから。これは俺の自己満足だ。それでも。奴と対峙せねばならないと思った。子供たちを半端に救い、結果守れなかった、巻き込んでしまった者として。
(あとは____ )
と思考の鈍ってくる頭に浮かんできたのは太宰の事だった。太宰は大丈夫だろうか。垣間見えた彼の孤独。それが気がかりだった。その時、扉を開けて誰かが駆け込んでくる足音が聞こえた。その者は
「織田作っ!」
と叫びながら駆け寄ってきて、俺の顔を覗き込む。
(あぁ、太宰か。そんな泣きそうな顔をして。)
彼に何を遺せるだろうかと、俺の心配ばかりしている太宰を見ながら考える。彼がマフィアに入った理由を話した時、太宰という人間の奥底を見たような気がした。周囲から恐れられ、闇に包まれたような彼の本質は思っていたよりもシンプルで、生きる意味を探しているという彼はまるで子供のようだった。ひとりぼっちの世界で助けを求める小さな子供。何か__。彼が棲まう闇の世界の中で道標となるものを与えなければならないと思った。この今にも泣きじゃくりそうな子供に。太宰は俺の言葉を聞くと、少し驚いたような、戸惑ったような表情をした。
少しして、太宰は
「何故分かる?」
と聞いてきた。少し迷ったが、その問いに答えたいと思った。
今なら言葉にしても良いだろうか。
「俺はお前の友達だからな。」
────────────────────いかがでしたでしょうか?
今回は番外編というよりは~織田作side~というスタイルのお話を書かせていただきました。個人的に「その手の言葉(友人という言葉)は軽々しく口にしない主義だ」と言っていた織田作がラストで太宰の事を友達だとはっきり言ったシーンが大好きだったので。文ストは色んなシーンが繋がってるのでそれを見つけられると感動します。
あとがきのようなものまで書いてしまいましたが、ここまでお読みいただきありがとうございました。
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