第199話

 くちゅり、と、舌が絡み合う音が鳴るたびにシャルの白い頰に赤みが差して、恥ずかしげに身を捩る。

 どういう行為に身を委ねているのか分かっているようで、ぴちゃぴちゃと水の音に合わせて、抱きしめているシャルの心臓の音が響く。


「わ、わざと、音、立ててないですか?」


 口を離すと羞恥を隠すようにシャルが口を開く。


「別にそんなつもりはないけど……」

「カルアさんとしていたときはそんな音出てなかったです」

「嫌か?」

「い、嫌じゃないですけど……は、恥ずかしいので」


 顔を隠すようにしているシャルの口を押さえるように唇を重ねる。シャルは驚いた表情をするが、そのすぐあとに俺の唇を受け入れて自分から舌先をちろりと伸ばして俺の舌を誘う。

 健気に不器用に動かすのが可愛らしく、少し何もせずに待っていると、唇を離したシャルがほんの数センチだけ離して「意地悪、しないでください」と呟く。


 その甘えた子供のようながらも、その実、舌を絡ませ合うキスをねだっているという倒錯的な状況に、心臓がいやに早い速度でドクドクとなっていく。緊張はいつの間にやら興奮に移り変わり、抑えがたい嗜虐心にかられてわざと品がない音を出すようにキスをしていく。


 小さな舌を貪るように舌を絡ませて口内を好き勝手になぶるようにしていくと、シャルはギュッと俺の服を掴んで必死に舌を動かす。


 押さえつけているシャルの体がぴくぴくと動く。隠そうとはしているようだが、こんな体勢でシャルの反応が分からないはずもない。

 次第にシャルの気持ちよくなれる動かし方に気がついて、必死そうにしているシャルをいじめるようにしていき、ゆっくりと舌を離していく。


 シャルとの間に名残惜しそうな白い唾液の線が伸びて、離していくうちにぷつんと途切れる。


「ふぅ……ふぅ……」とシャルが真っ赤な顔で息を漏らして、唾液で濡れた口元を拭うこともせずに俺をぼうっと見つめる。


 余韻に浸るようなシャルの表情。

 シャルが苦手な恥ずかしいことをして虐めるような行為だったはずなのに、嫌そうな表情はなく、疲労と快感のまじった、少女にはあるまじき姿をしていた。


「シャル……シャルって、いじめられるの好きなんだな」

「……そ、そんなこと……ない……です」

「こんな風にされて、嬉しそうにしているけど」

「う、嬉しいなんて……」

「嫌なら、もうしない」


 シャルは俺の言葉を聞いて、俺の服を摘んた手をくいくいと引っ張る。先程のようなことをしたいという意思表示であるとは分かるが、飛びつきたい気持ちを抑えて分からないフリをする。


「あ、あの……その、ランドロスさんが、喜ぶなら、僕は何でも……」

「いや、シャルが嫌がるような行為はしないから。な?」


 潤んだ瞳がパチパチと瞬いて、濡れたままの幼い口元がもじもじと動かされる。

 布団の中のシャルの服はキスの時の身動ぎで乱れていて、いつのまにか布団を押し除けていたせいで目から上がった長いスカートからシャルの白いふとももが惜しげもなく晒されていた。


 白いうちももがすりすりとお互いをこすり合わせられる。


「い、意地悪、言わないでください」

「意地悪なんて言ってないだろ? ……それとも、無理矢理してほしかったのか」


 シャルの視線は不安げに揺れる。

 もう少しで見えそうになっているシャルの下着の方に目がいってしまいそうなのを耐えながら、シャルの腕をベッドに押さえ込む。


「俺の好きなようにしろ、というのも……シャルが無理矢理触ってほしいからじゃないのか?」

「そ、そんなこと……」

「嫌ならしない。俺はシャルのことが好きだからな」

「……んぅ……あ、あの、その……き、気持ちよかったので……ま、またしてほしいです」


 我慢の限界がきていたので、シャルのおねだりに対して食い気味で反応して唇を引っ付ける。

 わざとシャルを虐めるようなキスではなく、普通に舌を絡ませるようなキスをしていくと、シャルはくいくいと求めるように俺の服を小さく引く。


 やっぱり、こうやって押し倒されるようにしながらいじめられるのが好きらしい。


 被虐趣味があるのか、少し強引にして、動かないように全身を押さえていた方が反応が良い。

 喜ばれるままにキスをしていると、次第に疲れてきたのか舌の動きがなくなっていき、ゆっくりと唇を離す。


 息を荒くしながらもぐったりとしているシャルを見て、愛しさに耐えきれずに上から抱きしめる。

 シャルの手も俺の背にまわされて抱きしめ合う。


「……えへへ、意地悪なランドロスさんも好きですけど、やっぱり優しいのが一番です」

「……随分と、喜んでいたように見えるが」

「そ、それは……その、あの……求めていただけているように思えて……」

「ああ、なるほど」


 柔らかい布を取り出してベタベタに濡れた色っぽい唇を拭って、自分のものも拭く。それからまた軽く触れさせ合うだけのキスをすると、それもやはり恥ずかしそうにしながらも受け入れる。


「えへへ……その、ランドロスさんは、まだ進むのが嫌ですか? 僕は、幸せなのが更新されました」

「……抱きしめていいか?」

「はい。えへへ」


 再びギュッと小さな体を抱きしめて……。不意にめくれているスカートのことを思い出す。

 体を起こしてその方に目を向けると……膝丈よりも長いスカートがめくれきっていて無地の白い下着が露わになっていた。


「……ランドロスさん、何を見て……あ、や、やだっ」


 シャルはパタパタと動いてスカートを直し、顔を真っ赤にして俺の方を睨む。


「え、えっち」

「……悪い」


 先程のキスもあってめちゃくちゃ興奮してしまってジッと見つめてしまった。

 そういえば、シャルのパンツは初めて見たが……やはり地味というか、綺麗にはしているが飾り気が少ない清楚な感じだ。


 同じ女性の下着なのにクルルの可愛らしい感じとは全然違うな。めちゃくちゃどうでもいいが、ミエナの物とも違う。


 落ち着いた……というか、飾り気のない下着は人に見せるつもりが全くないものであることが伝わってきて、それが露わになったのを俺だけが見たという優越感を覚える。


 まあ一緒に着替えたりしているカルアやクルルは見ているだろうが。


「……か、可愛いのじゃなくて、その、ごめんなさい」

「いや、可愛いと思った」

「地味ですし、その、子供っぽいです」

「それも興奮する」

「えっ、こ、興奮するんですか? へ、変ですよ」

「……いや、普通だと思う」


 シャルは顔を真っ赤にしながらパタパタと動いて俺から逃げ出す。


「……え、えっち」

「……キスをあんなにねだっていたシャルが言うか?」

「そ、それはそれですっ!」


 顔を真っ赤にしたシャルは俺に手を伸ばして、ギュッとしたまま俺をベッドに寝るように言う。


「夕方から行くから、仮眠するんですよね。寝ましょう、ね?」


 シャルはそう言っているが……よほど長いことキスをしていたのかもう日は傾いている。

 ……まぁ、寝ることは出来ないが、少しの間シャルを抱いておくか。普通に抱きしめるのも、それはそれでめちゃくちゃ好きだ。

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