第168話

 メナという少女を連れて帰ることに決めたが……これ、どこで預かることになるのだろうか。

 ……仮にメナの年齢がミエナの言う通り50歳だとして、大人になるのは100歳ぐらいだろうか。


 ……流石に50年の間、面倒見れるという奴は少ないだろう。

 ギルド全体で育てるというのは当然としても中心になって育てる親代わりのような人はやはりいるわけで……。


 ミエナの方を一瞬だけ見て首を横に振る。

 多分頼んだら大喜びで引き受ける気がするが、ダメだ。絶対に一線を超える。このエルフは絶対にダメだ。


 だが、俺もロリコンだしなぁ。

 今はこの少女には全くそういったことに対する興味は湧かないが、だからと言ってずっとこのままとも限らないわけだし、俺も預かるのは不適格だろう。

 そもそも見た目の年齢がほとんど同じ嫁がいる時点で、俺が預かればメナも変な目で見られかねない。


 ……一度ギルドに帰って聞いてみるしかないか。……最悪、持ち回りのたらい回しになる可能性もあるが……それでもいつ死ぬか分からないところに放置するわけにはいかないだろう。


「ランドロスさん、どうしたんですか?」

「……いや、少し考えていただけだ。ここで迷宮の出入りをしたら危ないかもしれないから、一応階段のところに行ってから帰るか」


 カルアはかなり楽観的に思っているが、エルフの子供なんて育てられるだろうか。

 不安でしかなく……。「放っておくのよりかはマシだろう」という考えにしがみつくことにする。


「ランド、何か難しい顔してるけど大丈夫?」

「……この子が成長するまで50年とかかかるだろ。……いや、そうでなくとも子供を拾って育てるということはな……そう容易ではないと思うというか」

「……ん、大丈夫。私が責任を持って育てるから」

「それが一番の心配要因なんだけどな」

「いや、同族にはそこまで心惹かれないから大丈夫だよ」


 人間フェチのロリコンエルフめ……。性癖が倒錯しすぎだろう。俺は半分は人間だから、人間しか好きにならなくてもなんとなくセーフだ。


 次の階段までカルアとメナに着いて歩きつつ、少女の後ろ姿にニヤニヤとしているミエナにため息を吐く。


 ……気が重い。……これから迷宮の中で、メナと同じように逸れた人を見かけることもあるかもしれないし、その時また拾うというのも……限界がある。


 見つければ見捨てることは難しいし、さっさと登ってしまう方がいいか。

 ……少なくともエルフの村などの迷宮の中の村にはカルアを連れていきたくはない。


 特殊な環境の中の生活だ、俺達からしたら不幸に見えるところは多くあるだろうし、それを放っておくことはカルアには無理だろう。


 ……予定を変えて、一人で迷宮を進むか。

 おそらくそっちの方が手っ取り早いし、カルアを傷つけずに済む。


 階段に着いたところでカルアが振り返ってニッコリと俺に微笑む。


「小さい女の子が増えたけど、好きになったりはしないでくださいね」

「分かってる。……信用ないな」

「信用はしていますけど、女の子に対するだらしなさも知っているので。じゃあ戻りましょうか」


 俺はカルアの言葉に頷いて扉を出現させる。

 真っ先にミエナが「ママー!」と言ってギルドの中に帰っていき、続いてカルアが怯えているメナの手を握りながら扉をくぐる。


 ネネが戻らないのを見て目を向けると、つまらなさそうな表情を俺に向けていた。


「……帰らないのか?」

「……お前、今、帰らないつもりだろ」

「……いや、少し探索を進めようと思っただけだが……」


 俺がそう言うと、ネネは「ふんっ」と俺を蹴って扉の中に押し込む。俺は思わぬ衝撃で倒れながら顔を上げると、見慣れた白く細い脚と薄桃色の下着があった。


「お、おかえり……」

「た、ただいま」


 マスターはスカートの下に顔を突っ込んだ俺を見ながら、赤らめた顔を俺に向ける。


「え、えっと、そ、その……それは、恥ずかしいかな。み、見たいなら、夜にした方が……」

「……いや、違うんだ。たまたま転けて入ったら、マスターの脚の間に頭が突っ込んでしまっただけで」

「そ、そっか、たまたまなら仕方ないよね」


 マスターは足の間にいる俺の頭を両足で挟みながらしゃがみ込み、目の前にマスターのパンツがくる。唐突な幸せすぎる光景に目を奪われていると、腰をガンと誰かに蹴られる。


「何マスターにセクハラしている」

「いや、ネネが蹴ったせいだろ。わざとじゃない」

「じゃあさっさと顔をあげろよ」


 いや、そうしようとしてはいるが、マスターが俺の頭を足で挟んでいて逃げれない。

 ……マスター、わざと見せるのを禁止されてしばらく経っていたせいか、かなり強引に見せてきているな。


 ……嬉しいんだけど、今は困る。


 ミエナに足を掴まれてずりずりと引きずられて背中が擦れる。


「……ランドロス。そういうのは最低だと思うよ?」

「お前が言うな」


 マスターは顔を真っ赤にしながらもゆっくりと立ち上がり、誤魔化すように笑う。


「おかえりみんな。早かったね。それに……その子は、エルフ? ……ミエナに似てるけど、もしかして……妹さん?」

「いや、迷宮の中で拾った。詳しい話はカルアから聞いてほしいが……親がいない捨て子だ。見捨てるわけにもいかないから拾ってきた」

「……ナンパしたんじゃなくて?」

「それだと誘拐だろ」


 頭の中でマスターの下着の映像を思い浮かべながらミエナの手を振り払って立ち上がる。


 みんな、蹴ったり引きずったりナンパを疑ったりと俺の扱いが酷くないだろうか。


「……捨て子って、迷宮の奥に?」

「まぁ、迷宮の奥にといえばそうだが……そもそも迷宮の中に住んでいる奴らの村から追い出されたらしい」


 身体についた埃を払いながらマスターの方を見つめる。……またピンクだったな。ピンク好きだな。

 ……どうしよう色々と説明することを考えていたのに、マスターのパンツやうちふとももを目の前で見せられてしまったせいで全部頭からすっぽ抜けた。


 いや、これは仕方ないだろう。だって、好きな女の子のパンツが目の前にあるのだ。そりゃ、夢中になって、我を忘れて見てしまう。俺は悪くない。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る