第118話
後ろから引っ張られてカルアの身体から引き離されたことで目が覚める。
「な、何をしてるんですか? ま、また……え、えっちなことをしてたんですか」
「……い、いや、違う」
「お、おっぱいですか!? やっぱりおっぱいがあるからですか!? 僕のはまだ小さいですけど、これから大きくなる見込みはありますよ!?」
「い、いや、そういうわけじゃない。シャルのも触ったりしたいと思っているからっ!」
そう言いながら、自分でも寝起きからとんでもないことを口走っていることに気がつく。11歳の子供に対しておっぱいを触りたいと口にするのって犯罪ではないだろうか。
「いつも反応してるのカルアさんのじゃないですかっ!」
「カルアだって一般的には小さい方だろう。大きさの問題とかじゃなく……その、触らせてくれそうだったから……」
「触れたら誰でもいいんですかっ!」
「そうじゃなくて、好きな女の子が触らせてくれそうならいくだろ! 男なら!」
俺とシャルが言い合っていると、カルアは眠そうにベッドの端に寄って布団を被る。
朝早いのに騒ぎすぎたと、思い声を小さくすると、シャルも声を小さくしていく。
「……じゃ、じゃあ、僕が触らせてあげるって言ったら、喜びますか?」
「い、いいのか?」
「た、たらればの話です。……け、結婚する前はえっちなことしませんよ? なので、数年待ってもらって…………あっ、け、結婚するんでした!?」
シャルは顔を紅潮させて手足をパタパタと動かす。
近くにあった枕にバタンと倒れ込みベッドの上でゴロゴロと転がる。
「あ、あの、夢じゃないですよね? 結婚するって話しましたよね?」
「あ、ああ……嫌じゃなければ、だが……その、酔って口走ったとかじゃないよな?」
「酔って? 何の話ですか?」
「……いや、覚えてないならいい。結婚はしようと思っている。早いうちに……式を挙げるんだったな」
「あ、は、はい。あ、あの……け、結婚したらえっちなこともするんですよね?」
真っ赤な顔を俺に向ける。
欲望のままに頷こうとすると、カルアが寝転がりながら俺の方をジトリとした目を向けていることに気がつく。
冷や汗を垂らしながら、何と答えようと迷っていると、カルアが代わりのように答える。
「ん、10歳前後で結婚することも貴族や王族では珍しくはないですが、一般的には家同士の繋がりのために籍だけ置いておくだけで、あまりその……そういう行為は大人になるまではしないものですね」
へえ、そうなのか。……えっ、貴族って子供と結婚しても我慢してるものなのか!? 普通触ったりしたくならないか!?
鋼の精神……流石は幼い頃から教育を施されてきたものだけあるな。俺とは比べ物にならない理性だ。
俺なんて最近毎日シャルかカルアを触ろうとして怒られているというのに。
「まぁ、政略結婚ではなく恋愛結婚ですし、事情は異なると思いますけどね。シャルさんが嫌でしたら、ランドロスさんも無理にとは言わないでしょうし……」
「い、いえ、嫌というわけでは……。その、僕も興味がないわけではありませんし、その、し、してみたくないわけというのではないので……あ、あの、け、結婚してから考えましょう」
「……ああ」
してみたいのか!? シャルもえっちなことを……!? どうしよう、めちゃくちゃ興奮する。
こんな小さな身体でそういうことに興味があるなんて……。
「そ、それよりですっ! あの、よく考えてみたら、僕の知っている結婚式って教会式のもので、ランドロスさんが嫌かもしれないと思ってですね」
「……教会式だったら何かあるのか?」
「えっと、魔族の方を嫌っている教えですから……気分は良くないかと。……あ、い、今更なんですけど、院長先生にランドロスさんの種族隠したままです」
……そういえば、一応念のためにずっと隠していたな。……あれ、不味くないか。仮にも魔族排斥を掲げている教会に長年所属している敬虔な教徒のわけである。
俺のような半分は魔族の男に、実の娘のように大切に育てている子供を嫁にやるだろうか。
「ど、どうする!? 目を隠したまま結婚式を挙げるか!? 万が一のことを考えて潰してから結婚式をして、それから治すか?」
「そ、それは……ど、どうしましょう。その、院長先生を騙すようなことはしたくないですし、祝福してほしいですけど……。院長先生がどう思うかが分からないです。……反対されたら、とても辛いですし……」
俺とシャルがあたふたしていると、カルアが顔を上げる。
「隠したままでいいと思いますよ。院長さんが嫌がって、強く反対されたらどうするんですか? ランドロスさんを捨てますか?」
「そ、それは絶対に嫌ですっ!」
「じゃあ、院長さんと絶縁しますか?」
「そ、それも……耐えられないです」
「じゃあ、現実的に、話さないのが一番だと思いますよ」
カルアは何を迷っているのか分からないとばかりにそう言う。
……まぁ、現実として院長が俺を受け入れられない存在と思われたら、どちらかがシャルから離れることになる。
……院長を選べば、俺はシャルを無理矢理にでも誘拐するだろうが……そういうことはやりたくない。
「……まぁ、話さないのが妥当なところ、か」
シャルの方に目を向けるが、彼女は幼い顔をパチパチと瞬きさせて、少し辛そうな表情を浮かべる。
「……そう、ですね」
「シャル、やっぱり隠すのは嫌か?」
「……いえ、結婚の時期を早めてもらったのも僕のためのことです。今、こういう話をしているのも僕のためのことです。……これ以上ワガママなんて言うつもりはないです」
「……そうか。……考えておいてくれ。俺はまた瓦礫撤去の手伝いをしてくるから」
「あ、ランドロスさん、ギルドで朝食を食べていかないんですか?」
「ああ……昨日のことを思い出すと、入りにくい」
「ああ……椅子になってましたもんね」
いや、それ以外も。というか、昨日はシャルからの求婚を除けば恥をかくしかしていない。
流石に顔を出すのは半日ぐらいおきたい。
しっかりと結婚や院長とのことなどを話しておきたかったが、復興作業を何度も休むのは悪い。俺以外だと時間と人手がかかる仕事だしな。
「……まぁ、今日は早めに帰るから、ゆっくり話そう」
「……はい。ご迷惑をおかけします」
俺は服を着替えて寮から出る。……色々と考えすぎて上手く考えがまとまらない。
……分かるのは、悩みはあるがそれでもめちゃくちゃ嬉しいということだけど。
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