中也 怒る 前編
姐さんの部屋に続くいつもの廊下を歩く。
なんのことはない。通常業務の連絡だ。別段変わったところもないし、武装探偵社との停戦命令も出ているところだから、いたって平和だ。
扉の前に立ち、ノックをする。
「姐さん」の、「ん」の字どころか、「さ」に差し掛かったところで勢いよくドアが開かれ、…気が付くと、肌触りの良い着物の布地に包まれていた。
「・・・ぇ?」
「ちゅ~やぁぁぁぁ。わっちには…わっちにはお主しかおらん…」
姐さんが、…抱きついてきた。
「ち。…ちょっ。姐さん、落ち着いて…」
周囲を見渡すが、とりあえず人の気配はない。
なんとか姐さんをなだめすかして部屋の中に入ってもらう。
もう、鏡とか見なくてもわかる。おれ、今、顔が熱い。
「ど、、ちょっと、どうしたんですか?」
「中也…お前だけがわっちの癒しじゃ…」
「…ん?」
―――ややあって。場所は武装探偵社。
「太宰っ!貴様っ、仕事さぼってフラフラふらふらどこをほっつき歩いていたかと思えばっ!戻って来て早々、来客用のソファでごろ寝とはいいご身分だなぁぁぁぁぁっ!仕事しろっ!仕事をぉっ!」
国木田の怒号などどこ吹く風と言わんばかりに鼻歌と共に、ごろん。と仰向けに寝返る太宰。
「くにき~だくん。あんまり怒ると…はげるよ?」
「うるさいっ!誰のせいで怒らなければならないと思ってるっ!」
「あー。敦くぅ~ん。そろそろお客さん来るから、お茶の用意しておいてぇ~」
「お客さん?…アポ、ありました?」
「ん~、ないけどぉ。あと10数えるぐらいの間に来るんじゃないかなぁ~?」
「じゅう?」
「どっから来るかが問題なんだよねぇ~。」
いーち。…にぃ~い。…さぁ~ん。…
「国木田さん。お茶、いくつ用意しましょうか?」
「んなもんしなくていいっ!」
「えぇ?でもなんか、…嫌な予感が」
「はぁ?敦、お前、そんなんだから太宰に遊ばれるんだぞ?」
しぃ~い。ごぉ~お。…
「国木田君は、そんなんじゃなくても遊ばれてるじゃーん?」
「乱歩さん…」
「あつしぃ~。三つで大丈夫だよぉ~」
「あ、乱歩さんがそういうんなら、用意してきま~す」
ろぉ~く。…しぃ~ちぃ。。。
「だぁぁぁぁざぁぁぁぁぁいぃぃぃぃぃぃっ!!!!!!!」
ちゅどぉ~ん!
「…天井ぶち抜いてエクストリーム入店かぁ。でも、ワンパターンだねぇ中也ぁ」
修理代は中也持ちね。あと、ご近所さんへの謝罪回りもよろしくぅ♪
…と、にこやかに告げる太宰の胸ぐらは、先ほど空から降ってきた中原中也につかみあげられている。
「あと三つ数えるの待っててくれたら完璧だったのにぃ~」
「黙れ、クソ青鯖。今すぐ息の根止めてやる」
「ちょっと…襲撃かい?停戦中のはずだろ?」
「わりぃな、探偵社。これは襲撃じゃねぇ。ここに太宰がいたから来ただけだ。こいつくびり殺したらさっさと帰るから安心してくれ」
与謝野にそう告げる中也だが、視線は太宰から一切外しはしない。
「えぇ~?ちゅーやぁ~?私も探偵社の一員なのだけれどぉ~?」
「うるっせぇっ。てめぇ、今日という今日こそは許さねぇからなぁ?」
「うーん。代り映えのしない脅し文句だなぁ。なんかいつも聞いてる気が…」
「んぁ???」
「あぁ。やはり間に合わなかったか…」
とは、探偵社の正規の入り口から入ってきた広津。
後ろには芥川も控えている。
「停戦命令中ですぞ。幹部殿、お退きを」
「
「黙れ芥川。用が済んだらさっさと帰る。邪魔するとてめぇもぶっ殺すぞっ!」
「やれやれ。いったいどうしたっていうんだい?」
一人冷静な与謝野先生の問いに、広津が答える。
「いや。それがですな…
我がポートマフィアの幹部、
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