高木 瀾(らん) (17)

「え……えっと……こんなマヌケな決着って有りなのか?」

「有りも何も、現実に起きた」

 ヤツは、自分の血で足を滑らせた挙句、床で頭を打って気絶した。

 とんでもない量の「気」で肉体を強化して、並の攻撃ではダメージを受けなくなっていたが……「不意打ち」であればダメージを与えられる。その条件で……「相手からの攻撃ですらない、自分の失敗で受けた予想外のダメージ」はどうなるか?

 結果がこれだ。

 一時的とは言え、並の攻撃からはダメージを受けなくなっていたせいで油断するのは人情だろうが……油断にも程が有る。

「あと……こいつ殺していいのか?」

 私は関口にそう訊く。

「い……いや……一応は、この東京の『自警団』の幹部だから……死なせるのは……」

「なら、早く止血しないと失血死だぞ」

「あ……ああ、判った」

「違うよ、逆の足だ」

 気を失なったヤツを手当しようとした関口に「四谷百人組」の藤井詩織が指摘。

「へっ?」

「デカい動脈を断ち斬ってるのは……一見、軽傷に見える傷の方だよ」

「え……えっと……どう言う……あ、お前が昨日の晩言ってた……あの防刃繊維製の下着の話か」

「若いのに、何、エグい技使ってんだよ……。深く見える傷は囮で……浅く見える傷の方からこそ大出血って……」

「あ……しまった」

「どうした?」

「ここが撮影とらえてた映像、動画サイトで生配信中のままだった」

 そう言って、私はヘルメットの小型カメラを指差した。

「あ〜あ……この馬鹿の勇姿が全世界に生中継された訳かよ。見てるのは何人ぐらいだ?」

「せいぜい4桁……ちょっと待てIPアドレス解析……おっと、約半分は、この東京内みたいだ」

「この馬鹿、明日から、どんな顔して町を歩きゃいいんだろ〜な……。あと、お前、ライブ配信中だったのは……うっかりじゃなくて、絶対、わざとだろ?」

「その質問は、弁護士と相談した後じゃないと回答する気は無い」

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