関口 陽(ひなた) (16)

 2つのデカい「異界への門」は、まだ完全に閉じていない。

 しかも、小さいとは言え見通していた「門」が1つ有った。

 なのに……この棟には、邪気が異常に少ない。

 そして……奴からは強い「気」を感じる。

 逃げてるのに、「気」を隠すつもりが無いらしい。明らかに私なんぞより遥かに上の技量うでまえの奴がだ。

「マズい……更に奴が暴走したようだ」

 笹原ささのはらが私の気持ちを代弁。

「どうした?」

 霊感がほぼゼロのランは事態を把握してない。

「邪気が消えてる。すごい勢いで」

「いい事じゃないのか?」

「いや……だから……奴の守護尊は烏枢沙摩明王……穢れを喰らう明王だ」

「えっ?」

「マズいな……力押しできたか……」

 私の守護尊である金剛蔵王権現や、笹原ささのはらの守護尊の摩利支天や、奴の守護尊は烏枢沙摩明王が実在するかは……はっきり言って良く判らない。

 これらの「守護尊」の名前は、得意な術の種類・系統や「気」「霊力」の性質を一言で言い表す為のモノだ。

 私を含めて「守護尊」が明王系の奴は、一般的に、浄化系の呪法を得意とし、霊感が有る人間には、そいつの「気」や「霊力」が炎に見え、そいつから「気」や「霊力」を用いた攻撃を食った場合は……「熱さ」を感じる事が多い。

「だから、どう言う事だ?『魔法』の素人にも判るように説明しろ」

 MC富三郎が、いらだたしげに、そう言った。

「奴の得意技は……悪霊や魔物を『浄化』して、自分の力として取り込む術だ」

「ちょっと待て……この騒ぎの原因は……悪霊や魔物が『異界』とやらからドガドガと出て来たせいだったよね?」

 続いて藤井詩織。

「だから……あいつは……一時的だけど……並の『魔法使い』の数倍の『霊力ちから』を持ってる可能性が……」

「なら……何故、逃げ……罠かよ……」

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