高木 瀾(らん) (10)

 何が起きてるか把握するまで時間がかかった。

 複数の「自警団」で情報のやりとりのルートは別々だ。

 どうやら、この棟の外から見ると、何が起きてるかは一目瞭然だったらしいが……肝心の「外」から入る情報が一本化されていない。

「燃えてるってどこがだ? おいッ?」

「だからどこだよ? 屋上? 中庭? えっ?」

「あの……どこから、何が撃ち込まれたんすか?」

 その時、私のヘルメットに組込まれてるセンサが、ある警告を出した。

「すまん……結構マズい……。酸素量がかなりの勢いで減ってる。この建物内に居て無事で済むのは……あと……一〇分以上、一五分未満だ」

「な……長いか短いかビミョ〜な時間だな……」

「あくまで酸欠にならずに済むまでの時間だ。本当に火事なら……もっと早く出た方が良いが……」

 だが、「原宿Heads」のMC富三郎が首を横に振る。

「刑務所の外から攻撃されたみたいだ……。迫撃砲らしいがな」

「えっ?」

「この刑務所の外から……ええっと、塀を飛び越して……えっと何てんだっけ? 高校の物理か数学で何かで習った……」

「放物線?」

「そう、そう云う感じで複数発。ただし、攻撃されたのは、この棟だけみて〜だ」

「他の棟に居る奴の話では、この棟の屋上が燃えてるのが見えるってさ」

 続いて「四谷百人組」の藤井詩織。

「あと、この棟の中庭側の出口と……隣の第2棟との間」

「反対隣の第8棟との間も燃えてるそうだ」

 どうやら、迫撃砲で焼夷弾系の弾を撃ち込まれたらしいが……。

「まさかな……」

「行ってみるか……」

「この棟に居る受刑者や職員は?」

 私の質問に嫌な沈黙。

「気が進まんが……まずは、自分の命を優先するしかねえな……」

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