関口 陽(ひなた) (4)

「あのさ……これでゾンビもどきは、全員、元に戻るのか?」

 ランはいきなりそう訊いてきた。

「い……いや……全員じゃ……ない……と……思」

 その時、ある棟のある窓が赤く染まった。

「マズいな……」

「ああ……マズい」

「救急車呼んで、病院の空きベッドも確認した方がいいな」

「わかった……上に連絡しておく」

 冗談じゃない。刑務所の各棟内には……ゾンビもどきのままの奴と……マトモに戻った奴が入り混じってる。

 では、その状態では何が起きるか……。

「一番、人が残ってそうなのは、どの棟だ?」

「判らん……」

「ここ、刑務所だろ? 職員や受刑者に発信機とか付けてないのか?」

「ちょっと待て……」

 私は強化装甲服パワードスーツのマスクを開け、携帯電話ブンコPhoneを取り出して、知ってそうな奴に片っ端から連絡を取ろうとする……。

 だが、笹原ささのはらが絶望感満載の表情かおで、首を横に振る。

「聞いた事が有る。セキュリティの問題で、職員や囚人の位置情報は……刑務所内からしか見れないらしい」

「この刑務所の電算機ルームがどこか、すぐに調べてくれ。あと、電算機ルームの端末のIDとパスワードも」

 そして、ランは少し考えた後……。

「そもそも、この刑務所、まだ電気来てるのか?」

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