高木 瀾(らん) (3)

「何やってるんだ?」

 この東京の「自警団」の中でも中堅どころらしい連中が、刑務所の各棟を取り囲んでいた。

「中を浄化する。力まかせの手だが……ゾンビもどきから普通の人間に戻れる奴が出る筈だ」

 そう答えたのは関口だが……。

「何故、突入する前に刑務所ごと、やらなかった?」

「説明が難しいんだが……まず、悪霊や魔物は強い『気』や『霊力』に引き付けられる。悪霊や魔物がウジャウジャと飛び交ってる状態で、強力な術を使うと、悪霊や魔物に襲われる」

「え……っと……つまり……刑務所全体を浄化するより、刑務所内の各建物に『浄化』とやらをやる方が、その『浄化』をやる奴が安全だと」

「ああ、あと……『門』を完全に閉じるまでには、まだ、時間がかかるが……それでも、『門』は小さくなってる。悪霊や魔物の数は、突入開始時点よりは少なくなってる」

「なるほど……」

 そして関口は、私の方を見る。

 微かな違和感。

 ああ、そうか……。

 顔を隠すのも一長一短かも知れない。

 見ているのが私なのか、たまたま私と同じ方向に有る別の何かなのかも、すぐに判断出来ない。

 敵に、こちらの感情を悟られにくくなるが……仲間の感情も読み取りにくくなる。

 よく知らない他のチームの人間と共同作戦をやる事が多く後方支援チームが充実している私達「正義の味方」「御当地ヒーロー」は顔を隠すのが「普通」で、良くらない相手と共同作戦をやる事が少なく後方支援チームがイマイチなNEO TOKYOの「自警団」は顔を出すのが「普通」。

 組織の目的は似ているのに、組織の有り方が現場でのやり方の違いを生み、更にそれはコスチュームにまで影響を与える。

「どうした?」

「いや……お前みたいな『観』えない人間しか居ない世界だと……私達は商売上がったりになるんじゃないかと思ってな」

「ところでさ……こう言う事って、やった前例有るの?」

 ふと、私は有る疑問が浮かんだので口にする。

「い……いや……どうだっけ?」

「あのさ……これでゾンビもどきは、全員、元に戻るのか?」

「い……いや……全員じゃ……ない……と……思」

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