第三章:This Is Not a Film

高木 瀾(らん) (1)

「あの……眞木さん……。これ、マズいよ……」

 撮影チームの久留間さんは、そう言っていた。

「けど……他に方法が有りますか?」

『おい……今、良く知ってる名字が聞こえたけど……お前、そっちで、何て偽名を使ってんだ?』

 私のモバイルPC上で立上ってるビデオ・チャット・アプリで会話している相手は……「御当地ヒーロー」ネットワーク「世界の守護神ローカパーラ」の久留米支部の後方支援チームの中で最も古株の権藤さんだ。

眞木まきらんです」

『あのさ……もっと、頭使った偽名を使えよ』

「ぎ……偽名?」

「ええ、偽名です」

「何が……どうなってんだよ?」

 白いダブダブのジャージにサングラスの三〇過ぎの男……広島沖に有る通称「渋谷区」の自警団「四谷Heads」のMC富三郎だ。

「やるのはいいけど……これ……この島Site04の『自警団』の面子メンツを潰す真似だよ。……判ってるの?」

 そう言ったのは、和装で腰に大小二刀を挿している女性……同じく広島沖に有る通称「新宿区」の自警団「四谷百人組」の藤井詩織。

「とりあえず……この混乱を収拾するのが先でしょう。御協力願えますか?」

「気に食わねえが……正論では有るな……」

「でもさ……」

「どうした?」

「いや……何か、今から引き返し不能地点を……あっさり通り過ぎようとしてる気がすんだよね……」

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