関口 陽(ひなた) (2)

「なぁ……お前って、その……女の子の方が好きだってホント?」

 フェリーの甲板で、並んで夜の玄海灘を眺めながら……私はランにそう聞いた。

「何が言いたい?」

「ええっと……その……」

「『面白そうだから、一度、女同士のSEXを経験したい』とか言うんなら、ブチのめすぞ」

「……わかった。痛みよりも興味の方が上になる日が来たら、また相談する」

「そうか……」

「で……付き合ってる女の子とかは居るの……?」

「何で、お前に話す必要が有る?」

「……ええっと……この前、会った時、元彼女かのが居たとか……」

「あのさ……自分でも自覚はしてるけど……私みたいな命知らずを恋人に持ちたいか?」

「……あ……」

 ランは溜息を付いた。

「そう云う理由でフられた」

「悪い事聞いちゃったな」

「今んところは……戦いの時に背中を任せ合える相手としか恋をするつもりは無い……。『御当地ヒーロー』を引退した後は話は別だけど」

「引退って……」

「病気って訳じゃないけど……どうも、私は、鍛えても背も高くならないし、筋肉も付かない体質らしい……。いつかは限界が来る。まだ、ずっと先だけど、でも、普通の人間にとっては人生これからって時期……普通の会社員だったら係長になるぐらいの齢には、引退だろうな」

「じゃあ、引退した後はどうすんの?」

「この前の事件の時に使ってた、アレの後継機を設計したい」

 一瞬、何を言ってるのか判んなかったが……。

「あ……ああ、そう言えば、アレも誰かが作った訳だよな」

「でも……私達みたいな人間が要らなくなる世の中が一番いい」

「お前……結構、ロマンチストだな……」

「何の理想も正義も信じてないヤツがやったら、1年以内に確実に心が折れるぞ、こんな稼業しごと

「ま……たしかに……」

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