HIGHT SCHOOL FLONTIER

神条

#00 硝煙

「ユイカ!行くよ」

「うん」


 実地訓練。鼻に強く残るこの硝煙の匂い。

 私はこの匂いを忘れることはないだろう。


 学校へ戻り、背中にかけていたライフルを下ろす。


「さあお前達、今日はもう疲れただろう。このあとはメシを食って休め。しっかりと英気を養って明日の訓練に臨んでくれ!」


 担当教官が訓練終了の号令をかける。全員で礼をして解散する。


 ――いつからだろう。世界がこんな風になってしまったのは。


 日本政府崩壊から10年が経ち、新たに極東地域と名付けられたこの地では、かつての日本の面影はどこにもなかった。

 国内各地では市民同士が毎日のように争いを続けている。

 なぜ彼らは争うのか。問題は一つや二つではない。

 みんな、様々な問題を抱えている。


 まともに教育を受けてこなかった私たちの世代は、知能指数も極めて低く、非行に走る人間がほとんどだ。

 育ててくれる親もいない。まともな親がいないからまともじゃない子供が育つ。そしてその子供が親となり、子を産んで。その繰り返し。


 この世界は腐っている。

 私はとうにその事実を受け入れている。


 きっと、生まれたときからこうだったんだ。


 このどうしようもない世界でトリガーを引く。

 それだけがこの腐った世界に抗う唯一の術だった。


「必ず、自由を掴み取る……」

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