俺が英雄と呼ばれるまで

武田伸玄

第1話 神託

 「皆の者、神託が降りたぞ!」


 「おお!」


 オーセ神官の発表に神殿を埋めつくす群衆が沸き立つ。


 「明日の昼12時、一人の男がこの神殿に姿を現す!

その者を国王に致すべしとの神託じゃ!!」


 「神様の言うことだ、これは間違いない!」


 「戦乱を鎮める、希望の陛下だ!」


 この神託に群衆は歓喜の渦に包み込まれたのであった。




 「なにか毎日が楽しいといいんだけどな。」


 夕食、母の作った自慢の唐揚げをかじりながらボソッと言葉を漏らす俺。

すかさず母が反応する。


 「高校、楽しくないの?」


 「・・・だって、いつも同じような感じだし。」


 こう言いつつ、俺、高校1年の野村正弥はもう一つ唐揚げを掴み取る。

すると、父がこんなことを言い出した。


 「今日は母さんが頑張って作ってくれた料理だぞ。もっと美味しそうに食べなさい。」


 そんなこと分かっている。でも何か違うもの、そう、刺激が欲しいのだ。


 「毎日が同じようで良かったじゃない。世界には平和ではない所が沢山あるのよ。」


 出た、俺の考えをぶち砕く母の決め台詞。

・・・と、この時は思っていた。


 (あの頃は確かに平和だったな・・・。)


 今になって平和の有難さを痛感する俺、なぜなら・・・


 俺の現在地:戦乱渦巻く異世界


 しかも、どうしてか分からないがある国の王様になってしまったのだ。

アダメス神の神託によって・・・

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