第3話 リバーズ・エッジ~恋する少年の天獄と地獄

「窮鼠はチーズの夢を見る」の行定監督の、私にとっては2本目の作品です。今を時めくNHK御用達の二人、二階堂ふみ、吉沢亮が主演。NHKでの姿しか知らない皆さんがぶっ飛びそうな内容で、私も驚きました。当時、二階堂ふみは既にいくつかの問題作に出演してましたが、吉沢亮は抜擢されての起用とか、けっこう鍛えられたのではないかな、いじめられっ子のゲイという難しい役どころですし。彼の演技、本作ではじめて拝見。美しいだけじゃないですね、ファンになりました。


 一郎(吉沢亮)が恋する先輩がグラウンドでサッカーをしている。その屈託ない笑顔。彼を好きなだけでいいんだ、といったことを一郎は、となりに立つハルナ(二階堂ふみ)に語る。

 バックには美しい合唱が流れ、まるで天国です。しかし、一郎の心の中には天国とは言い切れない、いわば天獄とでも言いたい闇があるような。

 2階で歌う生徒の中に、一郎のカモフラージュ役の彼女・カンナがいて、二人の後ろ姿に嫉妬する。ここには彼女の地獄絵図が見えるようで、映画的な多重構造に感心、一番好きなシーンです。その後、危惧した通り、とんでもないことになっていく。一郎が恋する先輩も、一郎の夢をかなえてくれそうにないし。


 あと、印象的なのは。一郎がベッドに腰かけたパンツ一丁の男の前にガウン姿で進み出る。ガウンを脱ぐと白いブリーフだけです。ここでドアップ、目には眼帯、大口を開け舌を伸ばして男の方へ。ひえっとのけぞると、次の場面では、摂食障害のこずえ が、太いソーセージをむさぼり食っている。周囲には食べ物が散乱、彼女は過食症でレズビアンなのです。


 一郎に、ゲイについて、非常にあけすけなことを質問するハルナ。こ、こんなこと訊いていいの、と焦っていると、一郎は、失礼だよ、ゲイだからって、と反論。

 本当ですよ、マジョリティであるという「権力」をかさに、どうして人を人とも思わぬ言動をするのだろう。こちらも忘れられないシーンです、私も気を付けなくては。


 最後に。すっかり耳慣れた行定監督の声が、インタビュアーとしてたくさん聞けますが、正直、不要だったかと。でもいろいろ考えさせられる、いい映画でした。

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