トマト
雲をみる
トマト
きみが、トマトに砂糖をかけた。
それから、
まわりの空気を
アプリで加工するみたいにきらきらにして、
にっこり笑った。
まだ早い時間の雨の帰り道、
じゃ、家くる?
って、
全然、ほんの軽いノリで。
それで、きみが、トマトに砂糖をかけた。
ぼくは、
あっけにとられて
その、赤でもオレンジ色でもない、
唇みたいなトマトの色と、
砂糖の純白をみつめた。
そして、
その砂糖の白が、
端っこでじんわりと透明に溶けた瞬間、
突然、身体中がときめいた。
全身の液体が電撃虹色になって
いっきに爪の先までとどいた。
「え、あ、砂糖??」
へんな、エモい乾いた声が出て、
じぶんでも驚いて消え入るような気持ち。
「うまいよ」
と、きみは、また笑った。
「中国ではみんなそうするんだって」
とつぜん、こんなことで、
「よくしらないけど。叔父がね、言ってた」
へぇ・・・
「ほんとかな?」
しらない。中国どうでもいい。
「今度、駅前の中華料理屋で聞いてみようか」
きみが、トマトに砂糖なんかかけるから、
ぼくはもう何も考えられない。
トマト 雲をみる @cloud_watcher
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
同じコレクションの次の小説
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます