黄色の攻略者の決意
第332話姉のプライド
悪役令嬢カメリア・スピネルの私は、今、燃えに燃えていた!!
「ベンさん! 私の可愛い可愛い可愛すぎる妹と弟の大切な大っっっ切なお茶会が我が家で開催されます! ブレティラとニコラが恥ずかしくない立派なお茶会を私はあの子達の姉として執り行いと思っております! これは二人の姉としての私のプライドが試されるとき! ベンさん、インタリオ商会の全総力を挙げてこのお茶会に対応してください! 宜しくお願いしますっ!!」
そう、間もなくスピネル侯爵家の庭園で、ブレティラとニコラの属性検査の結果をお祝いするお茶会が開催される。
本来ならば、ブレティラとニコラの親であるお父様とマリア様が計画をし、準備をするのが普通だが、そこは勿論この姉である私が大きく手を挙げた。
私の大切な妹と弟のお披露目会。
そんな一大イベントをこの私が見逃すはずがない!
絶対にどの家のお披露目会よりも、最高のお茶会を開いて見せる!
そしてブレティラとニコラの素晴らしさを、このジュエプリの世界に大々的に知らしめて見せるのだっ!
そんな計画を立てた私は悪役令嬢らしい笑みを浮かべ心の中で笑っていた。
インタリオ商会を味方に付けた時点で独り勝ち決定。
ブレティラとニコラのお茶会は伝説になりますわよっ!
オーホッホッホッホッ!!
「あー……カメリア、まあ取りあえず落ち着け……お茶会の話はカジミール様からもマリア様からも聞いている……だから先ずは座って、ほら、深呼吸をしよう。それで落ち着いたら先に頼まれていた二人の衣装でもチェックするか?」
「ええ、ベンさん、勿論ですわ! 可愛い二人の衣装この私がじーっくりチェックさせて頂きますわ!」
「はぁ……まったくお前は……おーい、ジョン、仮縫いしたブレティラとニコラの衣装を持ってきてくれー、合わせた装飾品も一緒にだぞー」
「はーい、お持ち致しまーす」
ムフフ、ムフフ。
ブレティラとニコラの衣装衣装~。
この衣装も属性検査が終わってすぐ、マリア様と相談してインタリオ商会に注文していたもの!
二人はまるで男の子女の子の双子コーデのように衣装を合わせている。
当然スピネル侯爵家の色である赤をメインに、ブレティラはマリア様の実家の色である黄色に近づいていくようなグラデーションを施したドレスになっていて、中々に斬新なデザインだ。
形はプリンセスラインで一般的なものだけど、大きなリボンを右肩に付けた特徴的な形は、私の可愛い妹であるブレティラだからこそ着こなせるものだと思う。
そしてニコラは、やはりスピネル侯爵家の赤色をメインに、師匠であるツィリル先生の家色パッションピンクを所々に取り入れた、こちらもまた新しいタキシードだと言える。
ツィリル先生が身に着けると色気が溢れて仕方がない派手なピンク色も、可愛いニコラが身に着ければキュートな装いになるから不思議だ。
そしてニコラは……
『僕当日はカメラ魔道具を首から下げますね。そうすればツィリル先生の弟子だってすぐに分かるはずですもんねー! えへへ』
とそんな気遣いが出来る面も持ち合わせている。
うちの子天才!!
ただし……タキシードにカメラ魔道具……
とある芸人さんが頭に自然と浮かんでしまうのは、私にへっぽこながらも前世の記憶があるからだろう。
この世界の人達から見れば、人気のカメラ魔道具を子供であるニコラが抱えているなど、もの凄い事だ。
それもニコラはお茶会に合わせ、赤いカメラ魔道具を自分で作ると言っていた。
家色で作り上げた魔道具……これまた人気が出そうだ。
最高の宣伝になるだろう。
本人の意図しないところで師匠だけでなく魔道具の宣伝をも行うニコラ。
ニコラの将来が益々楽しみになった私だった。
やっぱり天才やーーー!
「よーし、じゃあ、ドレスとタキシードはカメリアからのオッケーが出たからこのまま本縫いに入らせるな。装飾品も問題なし、スピネル侯爵領の鉱山から取れた大粒の宝石だ。お茶会が良い宣伝になる、ハハハハッ、これでまたスピネル侯爵領は発展するだろうなー、良質な宝石を見せられれば、誰だって欲しくなるだろうからなー」
ベンさんの口元が悪巧みをしている悪代官のように歪む。
スピネル侯爵領が潤えば、その取引を一手に請け負っているインタリオ商会も益々発展する事は間違いない。
だけどスピネル侯爵家はハッキリ言ってもう財産はいらないと言えるほど潤っている。
それにこれからこの国初のダンジョン開発が予定されているので、領地の更なる発展は約束されているも当然だ。
そしてブレティラが薬関係の道に進もうとしている。
これは絶対にカジミール製薬がこの国一の製薬会社になる事は間違いない!
だってブレティラは存在そのものが素晴らしいからね!
だけどそうなると絶対妬みを買うわけで……
スピネル侯爵家って本当にどーうしても、不幸呼び寄せ体質を奪還出来ないようで気が抜けない。
ただし、今現在家族仲が良い事だけは救いだろう。
そう、ゲームの中とは確実に違う。
それは私にとって励みになる事だった。
「それで……あー……茶葉も決まって、あとは茶菓子だなー。どうする? カメリアが開発したダイアモンドクッキーをメインで出すのか?」
ベンさんが言うダイアモンドクッキーとは、別に特別なものではない。
普通のクッキーに砂糖粒が付いているクッキーの事だ。
キラキラの砂糖粒がダイアモンドに見える為、このダイアモンド王国で人気になり、本来の名前ではなくダイアモンドクッキーと呼ばれるようになったインタリオ商会を代表するお菓子だ。
だけど今回は違うものを準備したい。
私は悪役令嬢らしくアイリスの前世の記憶をしっかり利用し、ある計画を立てていた。
「フフフ……ベンさん、インタリオ商会のお菓子は全種類お茶会に用意してください……」
「全種類か……それはかなり目を引くだろうなー。だが、真新しさがないがそれでいいのか?」
「フッフッフ……ベンさん、私を誰だとお思いですか? ブレティラとニコラの姉ですよ。私がそれで満足するはずがないじゃないですか、今回のメインは ”プリントクッキー” これでいきます!」
「ぷ、ぷりんと? クッキー? 聞いたこと無いなー」
「ええ、そうでしょうとも! ブレティラとニコラの可愛い似顔絵をクッキーに印刷するんです! 二人の似顔絵の型を作りそれを焼き付ける……フフフ……イネスにはもう似顔絵を発注してあります。ベンさん、今後プリントクッキーは絶対に流行りますよ。この私が自信を持ってそう宣言いたします。フフフフ……お互い良い仕事してますよねー、グフフフ……」
「……カメリア……ウチとしては嬉しいが、お前何だか人相が悪いぞ……大丈夫か?」
「だーいじょーぶですっ!!」
こうして私は連日のようにインタリオ商会へと通い、ブレティラとニコラのお茶会への準備を進めていった。
二人の姉として絶対に最高のお茶会を開いて見せる。
それが私の ”憧れられる姉” としてのプライドだった!
☆☆☆
こんばんは、白猫なおです。(=^・^=)
今日から新章突入です。黄色のイネスが主役の章の筈なのですが……思ったよりもお茶会の話が多くなってしまいました……いつもながら……イネス、ごめんねー。まあ、音楽祭で主役だったから良いかな。えへへ。
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