入れ替わりは超速に

ざーと

第1話 説明抜きで超速に

「あんた、私に何をするつもりなの!?」

 なぁに、俺が悦ぶことをさせてやるだけだ。

 誰も来ないこんな場所に、いつもの調子でからかうつもりで来たのが間違いだったな!

「いやっ!乱暴しないで!!」

 しないとも、俺は。自分からするんだよ、お前のその体が。

「な、何を言うのよ?脅されたって、私はあんたになんかしない!」

 するんだよなぁ、それが。さあ、こいつを見ろ。

「何、それ、ガラス玉?・・・え、ひかりに、わたしが、吸いこまれていく・・・」



「ふへへ、成功だ!」

 え、私がいる?どういうこと?あっ、服が入れ替わって!?

「あん?服だけじゃないんだよ、頭悪いな。汚ねえ面を触ってみな、自分のをよ」

 ひっ!?ま、まさか、あんたの顔??このおぞましい手触り!!

「うわっ、ひでえ言い方すんなお前・・・元俺まで自虐趣味みたいじゃねえか」

 き、汚いって言ったのは、あんたの方が先なのに・・・

「まあ、別に今は責めはしねえよ、そういうやつだよお前はさ。目的は・・・へっへっへ、こっちだ」

 え、ちょっと・・・胸とスカートの中に手を入れるなんて、何を!??

「分からねえ?じゃあ改めて言うぞ。心が入れ替わったお前の体で、俺の体が悦ぶ行為をさせてやるんだよ!」

 やっやめなさい!女性がしていいことじゃないわ!!

「あ!?お、おう・・・わたしの体にそんな真似させないで、じゃねえのかよ。そんなヤツだったっけお前って?」

 し、知らないけど、破廉恥な女は目の毒だわ!

「へえ?あー、そうかい。残念だがなあ!破廉恥なお前自身の姿をお前に見せつけたくて、こうしたんだ!さあ見ろよ!」

 く、っ。み、見ないから、ね。

「そっぽ向いても目が追ってるぜ!さすが俺の体の本能・・・ほんと、スケベめ!」

 見ちゃダメ、わたし、見ちゃダメ・・・

「さあ、やるぞ・・・やるからな・・・あ、あれ?」

 あっ・・・うわぁ、そんな半端な恰好で、赤面して戸惑って・・・

「やっ、やってやる、やってやるんだから・・・な・・・・・・」

 やだ、私も変な気分になるよ、エロいな・・・なんて下手ないじり方。いざ実践であがりまくる女の子って、ほんとにいい。

「ウゲッ!?微エロなサイト見てる俺特有の下種な笑み・・・真似しすぎだよこのくそ女!俺も俺だ、ゾワッとしてるんじゃねえよ・・・」

 ああっじれったいわね、開きなおってやる!早くやんなよ、ったく。たまんないのよ、そそるのよ、あんたの目玉で見てると・・・

「ひいいっキモいっつうの!なんだよもう、やめてやるこんなこと!言っとくが!恥ずかしいのはエロじゃねえよ、お前って女を誘ってるって見られることなんだよ!」

 あっ?

 えっ、あの、や、やめちゃうの・・・?

「へっ、へへっ、マスかきたいかよ!今までの俺の気分思い知ってみろよ!好きなだけ俺の体を慰めてやりな!」

 え、いいの!そんなことしちゃって!?

「お前さ、触りながら言うんじゃねえよ・・・その、とっとと帰って俺の知らない間にだ!」

 いや、でもちょっと間に合わない、でしょ?ここが、お勃起がこんな状態じゃ・・・。

「お前が自分で擦ってんだろが・・・なんなの?男の股間への好奇心だけはすげえ!」

 ねえ、このままだと精液、ズボンに染みちゃうから困るよね?

「あ、だめだ。皮肉にならないんだこれ・・・ああもう、分かった、お互い後ろ向こうか。ファスナーから出してしごけばどうだよ」

 しごく・・・右手で握るだけでいいんだっけ?分かんないかも・・・

「わひゃっ?ろ、露出したな、俺の目の前で、お前・・・俺、そこまで変態じゃなかったと思うんだけど」

 何が変態なのさ、持ち主に教えてもらうだけですけど。手で顔を隠してないで、早くやってみて?

「自分の体と知ってて手コキやらせるんだ。最悪だなお前」

 あ、いきなりすごっ・・・気持ち良さが速いよおっ!

「男の喉でそういう声出すなよ吐き気するから・・・あと早漏じゃないから、俺は」

 そういうことじゃなくってね、お勃起から一気に駆け上がってきて凄いからよ、あんたのってさ。

「あ、ああ、そんなほめ方されると、なんか複雑だ。収まらないこいつを、ずっとからかわれて来たのに」

 そりゃあ見直しちゃうよ。鼻で吸ってるどころじゃなくて首に注射するくらいの、速さなのよ?

「・・・悪趣味なたとえ、どーもありがとうっ」

 あっ、それ、その力加減がいいのっ・・・じゃない、いいんだぜ!

「それ逆にしらける、なのよね・・・って言ってみた。もうさ、早くイってくれないかな?」

 だから、あんたの体なんだから、ハッ、ウッ、あんたの加減で、ンッ、イくんでしょっ?!

「俺は俺だよ、けど。女性のお前の手を使ってるから、こっちだって扱いにくいんだ、お前は気持ちいいかもしれないけど」


・・・・・・


「ていうか、苦手な女でも奉仕されたら快感なんだ?なんか嫉妬しそうだなあ、自分自身の体に」

 いいよっ嫉妬して!

「いや、お前に許してもらうことじゃないし。たとえですよ、分かりなさいよ」

 ツンツンしているのも、エロくていいよねえ!

「あのさあまだ?俺はそんな遅漏でもなかったはずよ?もしかして、素数でも数えてるんじゃないでしょうね?」

 え、あ、悪い悪い・・・。


「で。良くなかったのよね、俺のやり方?」

 速度は良かったよ?でも、気持ちいいはいいけど、頂点に届かない、これが・・・。

「ふん、ショックなんて受けないわ。もう分かってるの。やっぱりお前の方が、隠れ変態エロなのよ。決定っ」

 そうかな?慣れないせいもあるんだろうけど、お勃起ってさ、女のより頑丈すぎるでしょ?

「うーん?そっか、そうなのかなあ・・・?」

 あと、所詮は前戯ってことかな。

「うーん?・・・ってお前、するっと前戯とか口をついて出てくるじゃないの。やっぱ変態」

 はあ?ちょっと待った。あんた、行為してるのにそんなことで変態って言うんだね・・・。

 よろしい、これからはあんたをピュア変態と呼んでやる。

「ああ、また俺をからかうのね・・・ううっ、ぐすっ」

 はいはい。泣きまねでうやむやにする女の武器とか、半生が女だったやつに通用するかっての。

 ・・・でも、お勃起が萎えるって感覚は分かった。

 これが、インポテンツ、か。

「断じて違うからね!!!!ふざけすぎ、もう!」


・・・・・・・・・・・・


 俺たちは元通りの体に戻った。


 恋人のように触れあう様子で、周りはどう思っているか知らないが、セックスはまだしてない。十数分で性を超えてわかり合いすぎて、かえって本能以上の欲情に至らない。

 でもあの経験は、他に代えられない。

「じゃあ週末×時、あの場所で待ち合わせね」

 ああ、分かってますとも。


 もう、入れ替わりオナニーはだいぶ訓練している。あんたの体での手際もうまくなった。

「やっぱり女性の性感帯って、波が大きくて気持ちいいわよね!俺、また飛んじゃうかもぉ!」

 私は男の特急が急停車する方が好きだ。だけど、あんたは決まってそう言う。分かるが、どうも分からない。それはいい。こちらだって楽しめればいいことだ。

 で、さ?まだ、嫌かな?

「ええー?いっつもそれじゃない。そんなに他の女じゃなく、自分をヤリたいなんて。ほんとにド変態」

 うう、告白するべきか。あんたの心が入ってる体だから、貫きたいんだって。

 その前に、入れ替わった姿でのデートでもしておこう。

 ・・・などとも思いつつ、そういう軽めのことほど言えないのがこの体の性質のようで。嫌いじゃないが、もどかしいのだった。

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