可愛いコンビニバイトJKを助けたら、なぜか俺の部屋に差入れを持ってくるようになった。

たかなしポン太

第一章

No.01:コンビニの美少女


「だから万札出したって言ってんだろ!」


 コンビニのレジで、金髪ヤンキー風の男は大声を上げている。


 夕方のコンビニ。

 客はそれほど多くない。

 俺の前の客と、レジのお姉さんが揉めている。


「い、いえ、でも、お預かりしたのは確かに5千円札で……」


「何言ってんだよ! 俺が出したのは1万円札! 間違いないって! 早くあと5千円出してくれよ!」


「で、でも……」


 レジのお姉さんは、困り果てている。

 もう1分近く、そのやり取りを続けているのだ。


 まったく迷惑な話だ。

 そんなのヤンキーの一方的な言いがかりに決まっている。


 俺はボーッとその一連の出来事を眺めていたが、ふとレジのお姉さんの表情に目をやった。


 そして一瞬にして目を奪われる。


 さらさらなストレートヘア。

 シャンプーのCMに出てきそうな、ツヤツヤな黒髪だ。

 やや丸顔の輪郭に、綺麗な二重まぶた。

 小ぶりな鼻、少し厚めの唇はうっすらピンク色に輝いている。

 パーツの配置が恐ろしいほど整った、清楚系美少女だ。


 見た感じ俺より年下のような……。

 てことは、高校生なのか?

 そんな彼女を相手に、金髪ヤンキーが因縁をつけている。

 いや、そんな彼女だから因縁をつけているのか?


「わかった。金はいいわ。そのかわり姉ちゃん、LimeのID教えてよ。それで許してやるから」


「えっ? そっ、そんなの困ります……」


 お姉さんはちらちらと、奥の休憩室とかバックヤードの方に目をやった。

 おそらく店長か先輩が、そこにいるんだろう。

 でも……一向に助けが出てくる気配がない。


 それにしてもこのヤンキー、何を言い始めた?

 金が欲しいのか、ナンパなのかどっちなんだ?

 まあどっちも許されるこっちゃない。


 俺はさすがに我慢の限界だった。


「えーっと、お兄さん。あれ」


 俺はレジ前のヤンキーの横に立って、斜め上の監視カメラを指さした。


「あれ、監視カメラね。今の監視カメラってものすごく解像度が高いんですよ。今あなたが支払った金額が5千円か1万円か、録画されてる映像を見れば一目瞭然なんです」


「な、なんだオメーは? 口出してくんじゃねえよ!」


「それに今のレジは全部機械式だから、もらったお金が5千円か1万円か間違えるはずないですよね? これ以上難癖つけるんだったら、明らかに威力業務妨害罪です。3年以下の懲役または50万円以下の罰金ですよ。その覚悟があるんだったら、監視カメラの映像を確認したらどうですか?」

 

 あ、ちなみに俺、一応大学は法学部の1年生ね。


 金髪ヤンキーは俺のことを一睨みした後、「ったく! ざけんなよ!」と悪態をついて、トレーの上のお釣りをもぎ取って出て行った。


「まったく……えらい目にあったね」


 俺はレジの美少女に、笑顔向けた。

 美少女は俺の顔をボーッとした表情で、見つめていた。

 心なしか頬が少しだけピンク色だ。

 

「大丈夫?」


「……へ? は、はいっ! 大丈夫れふ」


 俺はペットボトルの水を1本レジ台の上に置いて、スマホのQRコードで支払った。

 そのまま帰ろうとすると……


「あのっ!」


「ん?」


「ほ、本当に、ありがとうございました!」


 彼女は深々と頭を下げた。


「いいって。特に何もしてないんだし」


 俺はそう言ってコンビニを出た。

 うわっ、暑いな……。

 9月の東京は、まだまだ真夏の勢いが衰えていなかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る