もう愛しかないじゃないか

ささき

第1話 解雇通告

「はい、、、はい、、、決定ですか?、、、はい、、、わかりました」


正午過ぎ。

AZ(エージ)は、ランチを済ませた行きつけのカフェの前で、お辞儀をしながら電話に対応している。


「そうですね、、、今日も何度も電話をかけたんですが、、、そうですね。多分、

ずっと電源を切ってるみたいで、連絡が取れません、、、家にもいません」


AZの職業は歌手。人気音楽グループのリーダーだった。なぜ「だった」というかというと、つい先日、その音楽グループは解散してしまったのだ。人気がなくなったわけではない。解散の半年前のコンサートツアーも、チケットはすぐに完売した。解散の原因は、メンバーの不貞スキャンダル。


そのメンバーの名前は、ビネガー。

妻子持ちであったビネガーは、若い20歳のモデル、カオリと浮気する。カオリは、極度に独占欲が強く、極度に利己的な性格で、ビネガーが結婚していることが許せなかった。ただの不貞行為ならそれほど大きな騒ぎにはならなかっただろうが、カオリはあろうことか、ビネガーを離婚させるために、彼の家に毎日出向き、ビネガーの妻に様々な迷惑行為を繰り返した。


たまりかねたビネガーの妻が、警察に通報、マスコミが嗅ぎ付け、世間をにぎわす大スキャンダルに発展、グループは解散に追い込まれた。


AZの電話の相手は、所属事務所の社長。会話の内容は、「ビネガーの解雇決定」の連絡である。

一通り要件は伝え終わったようで、AZは深くお辞儀して電話を切ろうとした。が、彼は直前で手を止めた。

「ちょっと待ってください。ほかのメンバーにはこれから電話されるんですよね?、、、私から直接、伝えたいんですが?、、、はい。任せてください。はい、、、失礼します」

AZは、電話を切ると、すぐにまた電話をかけた。

「もしもし、AZだけど、ああ、今どこにいる?え?全員一緒か?ちょうどよかった。みんな、今から会えないか?場所は、いつものカフェで」

AZは、ビネガー以外のメンバー3人を収集した。

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