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︎︎ 例の2人のおかげで、私は不登校から脱却する事ができた。が、それでも尚、猫の死骸は私の頭の3割近くを支配していた。そうして、徐々に、絵も描き始めた。彼らに死骸の美しさを語ろうとした時もあったが、私は、秘密という背徳を味わいたいがために、そうすることはなかった。ただ、死体の美しさを絵で描く夢がある、とだけ話していた。

中学3年生となった。私達は地元の美術高校を受験する事にした。そこは特別有名な芸術家を輩出した訳でもなく、偏差値も自分より低い上、有名な高校でもなかったが、流石に、たかが高校で遠くまで行くというのも気が引けたので、そこを受けることになったのである。

受験期の時の流れは、滝が落ちるような早さであった。私は、勉強はしたが、やはり頭の中には猫がいるのだ。それは、試験当日でも同様であった…。

受験に受かりはしたが、私は特別喜ぶことはなかった。しかし、彼らも同様に受かったという連絡が来た時は、流石に、喜んだ。ひどく人間的な喜びの感情であった。私にも、こんな感情があったのか。死を悲しむこともできないような私にも、他人の幸福を、喜ぶことができたのか。


既にその時には、猫は悩みのひとつであった。社会で生きる上での妨げである。

高校生活は、特別、中学と変わることなく進んで行った。猫が相変わらず頭の中で鮮血を吹き出しているのが悩みではあったものの、そこまで問題だとは思わなかった。

1年生の冬、私は、いつものように彼らと共に帰途についていた。ふと、佐竹が西を指さし言った。

「おい、見てみろよ、あれ。」

ひどく日本的な光景であった。遠くに見える連山の隙間から、卵の黄身のような夕日が放射状に光を放っていた。旭日旗のようであった。金城は、眩しそうに手でその光を遮っていた。

ノスタルジアを感じた私は、しばらく黙ってその夕日を眺めていたのだが、またもや、突然佐竹は言い出した。

「お前、変わったな。」

「何が。」

「前のお前なら、まるで臓器みたいだ、とか言い出す所だぞ。」

はっとした。私は、そんなグロテスクな情景など、一切夕日に見出さなかった。猫は、単なる死骸として横たわっていた。嬉しそうな私を見て、佐竹は、

「それで良いのか?」

「何が。」

「お前、死体の美しさを絵で表現したいんだろ?」

瞬間、私は、絶望した。金城も同様に、

「うん。そんなこと言ってた。本当に、死が美しく見えないの?夕日が臓器に見えないの?」

と聞いてきた。私は、家へと向かい走り出した…。

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