第4話 会合

公園



 今日もいい天気ですねー、奏多ちゃん曰く、いじめられているらしい夕香です。南ちゃんは物を与えれば何でも言うことを聞いてくれますね。今日は相談事をするためとある人物を待っています。


 ようやく現れました。


「よぉ、夕香」


「お疲れ様です聖利ちゃんー」


「つーかクソガキを殺したあたりから勘づいていたが、そろそろ動くのか?」


「まずは情報提供しましょうー」


「そうだな、いったん整理するか」


 聖利ちゃんには利用されてもらっている立場なので今度ご褒美しないといけませんねー


「まだ続けねぇといけねぇのかこれ、見てるこっちもつらいぜ」


「私は構いませんよー、どっちにしても犠牲者は出ていましたからそれを私にさせただけですよー、実質いじめてるように装ってと提案した聖利ちゃん、聖利ちゃんには忠誠を誓っている礼奈ちゃんは巻き込んでますからねー」


「まあ普通自分からいじめてくれなんて言うやついねぇからな、奏多には誤解されてるだろうがな」


「のぞき見してること知ってたんですねー、さすがの洞察力です」


「これで条件はそろったな、美冬に知れ渡ったらまずいことになりそうだぜ」


「どうせならわからせたいですねー」


「少なくともあたしとお前と礼奈と奏多は見てるわけだしなぁ、礼奈に関してはセーフだぜ?暴力は振るってねぇ、だからこの学校の法律上殺害対象にならないぜ」


「もちろんしませんよー、暴力的いじめに関してのみ殺害は許されますからねー、現に奏多ちゃんがいじめと断定しましたからねー」


「まだもう一人いるんだよなぁ」


 どういうことでしょう、美冬ちゃん以外に暴力は受けてないんですけどねー


「ただそいつは殺害対象にはならねぇ、尚央達に見張らせてるぜ」


 まだいたとは驚きです。


「それよりもだ、教科書捨てたのか知らねぇがあれ何の意味があったんだ?」


 バレちゃいました


「燃やしましたよー、反応が見たかったので、あとは礼奈ちゃんは都市伝説とか信じそうですからねー、弱気なところもありますしこの件から退かせたかったんですよー」


「この件から退かせたかったのはあたしも同じだなぁ、で、今日は一人にさせちまったな、どこやられた?」


「主にお腹辺りを強くけられましたねー」


「お前はお前で辛いのか悲しいのか表情見せろよ、ロボットかよマジで」


「5年前に比べれば大したことないですよー」


「あの時はあたしのクソガキがお前をぼこぼこにしてたらしいな、あれ以来だ、お兄ちゃんと呼ばなくなったのは、そんな妹が隣にいて怖くねぇのかよ」


「目を見ればわかるんです、あなたの全てを悟ったような眼を見れば」


「切野夏だったか、あいつの真実も知ってるのか?あたしはそこまで知らねぇが、お前は知ってる、そんな気がした」


「はい、知ってますよ、自殺なんてしていませんからねー、知らないほうがいいこともあるかもしれませんねー」


「…そうか、なら聞かないでおく」


 久しぶりに話しますけど聖利ちゃんは昔より暗くなりましたねー。


「ではいったん整理しましょうか、まず奏多ちゃんは美冬ちゃん、礼奈ちゃん、そしてあなたにいじめられていると思っていますねー、でも実際には美冬ちゃん一人ですねー私の中では」


「そして尚央たち3人組、あいつらは共犯者をマークしてる」


「尚央ちゃんとイェンシェンちゃんと雪ちゃんですねー」


「そのうちの共犯者がボロを出さねぇってところだな、さらに厄介なのが共犯者の人脈が不明だ、今こうしている間にも増えてるかもしれねぇ」


「私は美冬ちゃんを更生させたいんですけどねー」


「あれだけやられて殺意の一つもねぇのか?更生するようなやつだとは思えねぇけどな」


 おっと、もうこんな時間です、あと3人来ますよ


「尚央ちゃん達も来ますよ」


「ここからが本番だな」




 共犯者をあたしはもう知っている、だが下手に出るのはまずいか


「夜も近いわね、待たせたかしら?」


「尚央ちゃんじゃないですかー」


「アタシもいるですヨ」


「イェンシェンちゃんもこんにちはー」


「夕香さんと聖利さんでしたよね…」


「そうだよ雪ちゃんー」


「よし、そろったな、まずどう動く?ここは一番頭脳の高い尚央に聞きたいところだな」


「ここでわたくしを出すのね?本当にこの中で頭脳があるのはわたくしかしらね?まあいいわ、この場に礼奈さんを加えなかったのは正解ね、まず共犯者を見つける必要があるわ、これにはイェンシェン、明日から夕香さんの下駄箱を監視させるわ、先に画鋲を仕掛けられていたらアウトだけれどね。雪、貴方様には美冬さんの監視をできるだけしてもらいましょう」


「げたばこですね了解デス!」


「わかりました、できる限り接触した相手を把握しておきます」


「あたしがいるときは監視しなくてもいいぜ、イェンシェンは主に早朝、雪は主に放課後っつーことになるなぁ、それ以外はほぼあたしがいるからな」


「それは助かるわ聖利さん、これであらかた共犯者は絞りだせるのではない?」


 ふん、尚央は勘がいいのか悪いのか。


「第一段階は共犯者を見つけるところからよ、こんなところかしらね、わたくしはあまり干渉したくなかったのだけれど」


「申し訳ございません、尚央様」


「雪が謝る必要がないわ、では、わたくしは忙しいの、失礼するわね」


「アタシも一緒についていくデス」


「私もついていきます、二人では危険です」


「大丈夫よ、イェンシェンと雪は二人で帰りなさい」


「ハ、ハイ」


「そこまで言うのならば、お気をつけて、行きましょうイェンシェン」


「いくですヨ」


 よし、だいたいの準備はできたな。明日が本番か?


「使えるといいですけどねー」


「少しは役立ってもらわねぇとな」


「雪ちゃんは頼れるんですけどイェンシェンちゃんって頭いいんですかねー」


「知らねぇな、つっても尚央が任せるくらいなんだからやらかしたりはしねぇだろ」


「言われてみればそうですねー」


「あたしたちも帰るか、明日には共犯者は絞りこめてるはずだからな、行動を起こせば」


「そうですねー、上手くいくといいですが」



翌日


 とうとう私の出番が来たわねー!主人公は遅れてやってくるものよー!南出撃よ

確かここで待っておけばいいのね、誰だったかしら、尚央だったかしら、なんか生意気だったけどケーキくれたからいうこと聞いてあげるわ感謝しなさい!

下駄箱に画鋲入れる馬鹿なんている訳…あっ、入れたわね、まだよ、まだ我慢よ


「任されるのがこっちでよかったですヨ」


 変なしゃべり方ね

 ……この子下駄箱監視してるわね、この子のことかしら?


「おはよー!」


「うわわ、おはようございまース」


「あんた可愛いわね、あたしほどじゃないけど、名前なんて言うのよ」


「イェンシェンですヨ」


「そう、イェンシェンっていうのね、わかったわ!また会いましょう、いい意味で会いたいわね」


「こちらこそですヨー!」


 イェンシェン?名前覚えにくいわねぇ、で、これを尚央に教えればいいのね、あとは雪って子でもいいのね、B組ここよね?


「おはよー!」


「え、誰?」


「尚央いるー?」


「え、こんな馬鹿っぽい人が尚央さんの友達?」


「誰が馬鹿よ喧嘩売ってんの?」


「尚央様の友達になんて酷いことを言っているの謝りなさい」


「し、失礼しました」


「いいのよ、分かればいいのよ」


「これが尚央様の友達ならぬオーラ、素晴らしい」


「あはははっ、ひれ伏しなさい」


「で、貴方様は何をしているの?ここではやめましょう貴方様、声が大きいわ、場所を変えましょう」


「いいわよ!」



 屋上は眺めがいいわー


「結果的にどうだったのかしら?」


「イェンシェンであってるかしら?その子が入れてたわよ、ああいう遊び流行ってんの?」


「イェンシェンね、分かったわ、良い子は真似しちゃいけないわよ、分かった?」


「わかったわ!」


「確定ね」



「聖利、夕香来たわよ」


「あ、やっべ、教科書とか忘れちまった、B組からパチってくるわ、先にトイレにいっトイレ、あとで礼奈と向かうぜ」


「おっけー、分かったわ」


 奏多、動いたな、監視は任せたぜ


 B組っつってもあたしの中ではイェンシェンだと思ってるからなぁ、尚央に用があるっつったら警戒されるな、ここは


「オイ、雪どこだ、用あんだけど」


「こわっ、あっ、雪さんですか、さっき登校してきたばかりです。呼んできます」


「早くしろ!」


「は、はい!雪さーん、えっと、友達?ですよ」


「聖利さんじゃないですか…」


「尚央はいねぇのか」


「青髪の子といわれていたのでおそらく南さんとどこかに行かれたようです、共犯者は南さんなんですか?」


「違うな、おそらく尚央ももともとわかってたんだろうなぁ」


「どういうことですか?」



「あら、来ていたのね聖利さん、予想通りイェンシェンだったわ」


「南に任せるのは賭けだったが以外とやってくれたな」


「どういうことですか尚央様、イェンシェンが共犯者というのですか?」


「そういうことね」


「信じがたいですね…」


「受け入れろ、次だ、ヤツの人脈を知りたい」


「わたくしと雪くらいかしら、学校内に関しては、だけれど留学生だから学校外なら他にもいるでしょうね」


「なるほどな、尚央みてぇに慕ってるやつがいる訳じゃねぇのか」


「別に慕われてないけれど」


「いや、慕われてんだろ」


「慕われるというのは貴方様の言う礼奈さんのような方では?」


「お前で言う雪見てぇなやつだろ」


「そうだったんですか?雪」


「え、本人に聞くんですか…ちょっと恥ずかしいです」


「つーかよ、共犯者前提で話してきたけどよ、美冬とイェンシェンに接点はあんのか?たまたま弄る相手が同じだったんじゃねぇか」


「またはいじめを目撃してしまい自分も興味本位で加担してしまったケースも十分あり得るわ」


「部活とか接点はねぇのか?美冬は陸上部だな」


「イェンシェンは書道部だったかしらね」


「ちっ、書道部か」


「あの…なにか問題でも?」


「礼奈も書道部なんだよ」


「無理に巻き込ませる必要はないわ」



 後ろから声が聞こえた、ある意味一番聞こえたくねぇ声がな


「あの、私が手伝えることなら、やります」


「なんで礼奈がここにいんだよ」


「だって聖利ちゃんが…聖利さんが」


「ちゃんでもさんでもいいけどよ、いつから聞いてたんだよ」


「私が聖利ちゃんを慕ってるところ辺りから!」


「聞かれたくねーとこばっか聞かれんなぁ」


「でもよかった」


「いや、よくねぇだろ!」


「聖利ちゃんは美冬に落ちたわけじゃないんですね」


 さらっと呼び捨てしてんなぁ、これが礼奈の本性なのかもな、ずっと我慢してきたんだろうな


「舐められたもんだな、あたしはあたしの理由で動いてんだよ、いじめる気なんてさらさらねぇ」


「暴力だけは絶対に振るわないでって言ってくれたから私は耐えられた」


「そうかい、お前はどうしたいんだよ、本当のことを教えろよ」


「もう、見たくない…止めたい、聖利ちゃんの力になりたい!」


「決まりだな、ちっ、時間か、二人で話したいがこっちもこっちで美冬に監視されてるようなモンだからな」


「昼食です、昼食に私が美冬さんだけを何らかの方法で誘います」


「露骨に怪しいだろ」


「わたくしに任せなさい、イェンシェンも入れてね」


「尚央が言うなら、まあ信用できるな、なら任せるぜ、それまでは美冬に付き合うだけか…」



休み時間


 奏多は見ていることしかできない、その一歩を踏み出せない。今日は屋上…やっぱり誰かが言わないと、でも


 礼奈さんはあまりいじめたくなさそうに見える、一番酷いのは美冬さん、暴力まで振るってるなんて、でも誰が信じる?学年トップの生徒がいじめをする?誰も信じてくれない、それに私が言ったってバレたら、今度は私が標的にされる。

暴力を振るっているところは見たことないけれど個人的に一番怖いのは聖利さん、本気でキレたら美冬さん礼奈さんですら歯が立たない地獄絵図が完成するだろう、でもなぜ主犯が聖利さんではなく美冬さんなのか、学年トップだから逆らえない?

 礼奈さんは何か怒りを感じているように見える、夕香さんにではない、美冬さんにだ、それをわかっているかのように右手で制す聖利さん、美冬さんはともかく聖利さんと礼奈さんが悪い人には見えない、聖利さんは暴言は吐くがなにか乗り気ではない感じが受け取れられる。それとも私の弱い心だろうか、適当に理由を付けて先生に相談するのを躊躇しているだけなのだろうか。なによりいじめられている夕香さん本人が全く助けも呼ばず、悲しみもしないのが気味が悪い。昼食中は3人で行動している、もしかすると上下関係のようなものがあるのかもしれない。夕香さんには悪いけど今日は探ってみようかな。



昼食



 いきなり予想外の出来事が起きた、美冬さんはB組の生徒に誘われていたのである、いじめっ子は3人ではないのかもしれない。

 一方教室では聖利さんと礼奈さんが二人で食事をしている。面識のないB組の生徒側を探るのは危険だ、同じクラスにいる聖利さんと礼奈さんを探ろう、これなら夕香さんと食べながら探ることができる


「どうしたのー、奏多ちゃん」


「何でもないよ、夕香さん」


「ほんとー?」


「いつも美冬さんたちって3人で食べてなかったっけ?」


「そうだねー、たまにはいいんじゃないかなー?」


「ねえ、私はボッチよ!無敵ね!」


ポジティブだなぁ南さんは


「一緒に食べる?」


「強者は一人で食べるものよ!羨ましくなんてないわよ」


「そっかぁ、じゃあやめとこっかなぁ?」


「しょうがないから一緒に食べてあげるわ!」


 素直じゃないなぁこの子



 こんなことに礼奈を使いたくなかったけどな


「なら本題に入るぜ、イェンシェンってやついるよなぁ?あいつと仲いいヤツいるか?」


「私もイェンシェンさんも一人で集中してするタイプだから私の知る限りいないかなぁ、でも仲良くなりたいとは思ってたのに」


「そうか、友達は作らないタイプなんだなぁ」


「あ、でも今日南さんと話してたよ」


「ああ、それは知ってるぜ」


「あとは奏多さんとかとはたまに一緒に帰ってるかなぁ」


「奏多?奏多ってお前空奏多のこと言ってんのか?」


「そうだよ?」


 いい手掛かりがつかめたぜ、ちょうど教室にいやがった、夕香はわかんだろうな、夕香、南の相手は任せたぜ!



「オイ、奏多」


「ひっ」


 その声に私は聞き覚えがあった、私の中では一番怖い存在聖利さんだ、覗かれているのがばれたのだろう、終わった。これで私もいじめのターゲットだ。


「オイ夕香、ちょっと借りてくぜー」


「わかりましたー聖利ちゃん」


 心の中で叫んだ、助けて、助けてと、でも自分は夕香さんを助けなかった、自業自得だ。土下座してでも謝らないと、体の震えが止まらない。


「ごめんなさい…ごめんなさい…」


 無意識にそう呟きながら席に座らされる。


「誰に謝ってんだお前」


「聖利さんと礼奈さんと美冬さんに…」


「あー?覗いてたことか?」


 やっぱりバレていた。礼奈さんの美冬さんに対すると思われていた怒りも自分に向けられていたのだろう、と思っていた矢先予想外の一言に混乱する。


「お前イェンシェンと話したことあんのか?」


「え?あ、はい」


 今度のターゲットだろうか


「あれ?怒らないんですか?」


「何がだ?」


「の、覗いてたことを…」


「あたしらを美冬と一緒にすんなよ、お前には話してもいいかもなぁ、今美冬いねぇし」


「どういうことですか?」


「嘘だと思うなら後で夕香に聞いてみな、夕香は望んでいじめの対象になってやってるんだぜ」


「はい?」


 言っている意味がよくわからなかった。


「本当の意味でいじめてんのは美冬だけだってことだな」


 更に頭が混乱する。


「そしてもう一人、イェンシェンがいじめに加担している可能性があるってことだな」


「え、イェンシェンさんがそんなことを?」


「美冬とつながりがあるかはわかんねぇ、だからイェンシェンとよく話してるらしいお前を呼んだんだよ」


「美冬さんとの関りは分かりませんね、あの、今日一緒に帰ると思うのでそこらへん聞いておきましょうか?」


「おう、そうしてくれると助かるな、あたしが言えた義理じゃねぇがもうこんなことしたくねぇんだよ」


 話せば分かり合えるのかな、私は人を見た目で判断しすぎていたのかもしれない、この話が本当なら実際にいじめている人は美冬さんだけ?この話が嘘だとしても聖利さんに逆らわないほうがいいのは事実だろう、なぜこんな真似をしなければならないのか、聖利さんなら美冬さんを簡単にねじ伏せられる、そんな感じはするのに。やはり弱みを握られていると考えていると考えたほうが妥当か。


「おう、じゃあ頼んだぜー、報告はあたしじゃなくて夕香にしな、南には聞かれるんじゃねぇぞ、じゃーな」


 夕香さんと聖利さんは繋がっていた?でも学校でそんな様子を見たことは一度もない、いじめの時くらいだろうか。南さんとは繋がってないらしい、これは夕香さんに聞く必要がある。



放課後


「夕香さん?」


「どうしたのー奏多ちゃん」


「聖利さんのことでお話が」


「昼に聖利ちゃんと話してたねー」


「率直に聞くね?夕香さんと聖利さんはどういう関係なの?」


「どこまで聞いたのかなー?」


 なにか聞かれてはいけないことがあるのだろうか、全部、と言いたいが聖利さんが関わっている、下手なことを言って聖利さんを敵に回すわけにはいかない。


「夕香さんは自分からいじめられに行ったの?」


「明かしたんだねー、そうだよー、だからいつも大丈夫だよーって言ってるんだよー」


「なんでそんなことを」


「それとも自分がいじめられる側になりたかった?」


「そのためだけに?でもイェンシェンさんが出てくるとは思わなかったよ」


「ふーん、共犯者はイェンシェンちゃんだったんだねー」


 しまった、これは言ってよかったのだろうか。


「そこまで聞いたなら私を覗き見する必要ないのわかるよねー、その気になったら聖利ちゃんが止めてくれるから奏多ちゃんより近くに監視はいるんだよー」


「じゃあ礼奈さんは」


「礼奈ちゃんは聖利ちゃんを裏切ることはないだろうねー、礼奈ちゃんは美冬ちゃんに怒りを覚えてるくらいだからー」


 思った以上に想像は覆された、聖利さんと礼奈さんはすごく仲がいいのだろう、これでは美冬さんが蚊帳の外だ。


「だから覗き見はされたくないなー」


「この話は信じていいんだよね」


「もちろんだよー」


 実際表情が変わらないのでよくわからないが友達として信じることにした。問題はイェンシェンさんだ、どう美冬さんとの話に切り替えるか。



「お疲れさまでした!」


「お疲れデス」


「じゃあ帰ろっか、イェンシェンさん」


「行きまショウ」


「イェンシェンさんはどうして書道部に入ったのですか?」


「にほんの字が好きだったからですヨ」


「でも難しい字も多いよね」


「ハイ、ですが書道は日本の美デス」


「私は成績トップになりたいなぁ」


「美冬さんや尚央さんには憧れマス!」


「そうなんだ、美冬さんと話したことあるのかな?」


「ありますヨ」


「どんな話か気になるなぁ」


「美冬さんは優しい人デス、言うことを聞いてくれたら日本のお金をくれマス」


「例えばどんなことかなぁ」


「ゆうかさんの財布を盗んできてほしいとかですかネ」


 そんなことまで夕香さんはされていた?イェンシェンさんはそれが犯罪だと気づいていないのだろうか。


「それはね…犯罪だよ」


「違いますヨ、学年トップのいうことなら何をしてもオーケーですヨ」


 この子はあることないことを美冬さんに叩き込まれたのだろう。


「ちなみにだけど尚央さんっていう人はどんなことするのかなぁ?」


「紅茶を入れます、そして持っていきマス、そしたらナデナデしてくれマス」


 まともな人で良かった。でもすごくお嬢様っぽい。

 でもはっきりしたことがある、美冬さんとイェンシェンさんは繋がっている、それにイェンシェンさんは美冬さんに洗脳されている。明日は辻褄合わせして聞く必要がある。



翌日、下駄箱


 よくわからないけどあの子とは友達になれそうね。あの針入れてる時は話しかけないほうがいいって言われたわね。変な趣味してるわねぇ。終わったみたいね!


「おはよー!リェンリェン」


「イェンシェンデス」


「あんた覚えにくいのよ!」


「アンタの名前なんですカ」


「あんたって失礼ね、鳴海沢南よ!覚えておきなさい!」


「ミがいっぱいデス」


「うるっさいわね、日本について教えてあげるわ!」


「ホントですカ」


「もちろんよ、実はこの学校で一番偉いのは私よ!覚えておくといいわ!」


「偉い人はお金くれるんですよネ?」


「え、誰に言われたのよそれ」


「偉い人デス」


「誰よそいつ、許さないわー!」



「おはよう、夕香さん」


「おはよー、奏多ちゃん」


「夕香さんって財布なくしたこととかないかなぁ?」


「うーん、3回くらいあったかなー」


「えぇ!?そんなに!その財布は?」


「戻ってこないねー」


「そっか…お金足りてる?」


「大丈夫だよー」


「ならいいんだけど」


 1回どころか3回も財布を盗んだ、それを悪いことだとは思っていないのは正直異常だ、この学校自体にも不信感を感じる。


「やっぱり、美冬さんとイェンシェンさんは繋がってたみたいだよ、でもイェンシェンさんは美冬さんに洗脳されてると言ったほうがいいかな」


「それは対象に入らないかなー」


「対象?何の話かな?」


「ううん、なんでもないよー」


 対象という言葉、美冬さんとイェンシェンさんの繋がり、夕香さんと聖利さんの繋がり、聖利さんと礼奈さんの繋がり、この一日でいろいろなことを覚えて混乱してしまった中、机に何かが入っていた、紙切れ?


『放課後、部活が終わったら公園に来い』


 差出人はおおよそ予想がついた、この男喋りは聖利さんだ、半分嫌な予感はする、だけど半分期待がみなぎる、こういう時は最悪の方向を考えてしまうのが私の悪い癖だ。


「脅されたりしないかな…」



 携帯で少女は何者かと連絡をしていた


「もしもし、うん、今からそっちに行くよ…わかった、じゃあまた後で…」


 プツリと通話は切られた




「あ、イェンシェンさん、ごめんね?今日は用事があって一緒に帰れないんだ」


「そうですカ、わかりましタ、アタシも実は見たいアニメがあってアニメ文化にもハマったんですヨ」


「そっか、じゃあ急いで帰ってたくさん見ないとね」


「ハイ、お疲れ様でしタ」


「お疲れ様ー」



「今日の弓道は疲れたなぁ」


 私は弓道部、イェンシェンさんは書道部で部活は違うのだが終わる時間が大体同じでいつの間にか一緒に帰る機会が増えて今となっては日常となっていた。


「今度は私が射られる番か…」


 公園で何をされるのだろう、もう夜も近い、夜なら誰にも見つからず暴力的行為を行っても気づかないだろう、これが美冬さんなら確実にそうなっているだろう、男喋りなだけで聖利さんという保証もなければ聖利さんに信用されているわけでもない。

公園についた、人影が多い、集団リンチを受けるのだろう、息が苦しい、肩が重い。心臓の鼓動が収まらない


「はぁ…はぁ…」


 恐る恐る人影に近づく


「おう、来たか」


「ひぃっ」


 美冬さんではなかった、聖利さんだった、どっちだろう、何をされるのだろう。近づくに連れぬいぐるみを持った礼奈さんが聖利さんの隣に、その逆の隣にはなんと夕香さんがいた。

 夕香さんも私を恨んでいた?それとも一緒に葬られるのだろうか?

更に、もう二人いた、一人は見たことがある、学年の中でも二位の実力を誇る尚央さん、イェンシェンさんの話を聞く限り悪い人には思えなかったが

 もう一人は初めて見る顔だった


「お初にお目にかかります…切野雪と申します…」


「あっ…あっ」


 混乱していて状況を把握するので精いっぱいだった。


「あら、初めましてね、わたくしは月村尚央よ」


「空奏多です!」


 メンバーが異常すぎて全く理解が及ばない、こういう時に南さんがいれば


「よし、そろったな、じゃあ始めるぞ」


「え、何するんですか?」


 メンバーを見る限り、悪いことは起きないはず、と願う


「今後の方針だぜ、つーか座れって」


「は、はい」


「まずは奏多のおかげで美冬とイェンシェンが繋がってるのもわかったし南もやってくれたしな」


「え、南さんも関係あるんですか、いませんよ?」


「いや、あいつはただ使っただけだ、とりあえずイェンシェンは対象外だな」


「あの、対象って何ですか?」


「貴方様も大変ね、この問題に干渉してしまうなんて、わたくしは南さんみたいな立場が良かったわね」


「申し訳ございません、尚央様」


「まあいいのよ」


 様付け?思ってた以上にお嬢様だこの人、私も様付けしないと怒られるかなぁ。


「なら話すぜ、裏切り者の共犯者もいなくなったことだしな、あたしと夕香しか知らねぇこの学校の秘密を」


「わたくしは多少は知っているわよ」


「はい…私もです」


「純粋な礼奈と正義感の強そうな奏多には打ち明けたくなかったんだけどなぁ」


「私は聖利ちゃんの話を受け入れる、どんなことがあっても!」


「わ、私も、まだ状況はつかめてないけれど、この学校のためなら!」


「ふん、礼奈と奏多、意外と気が合いそうだなぁ、仲良くなれるんじゃねぇか?」


「それは、仲良くできるに越したことはないかなぁ」


「ほーん、礼奈はどうなんだ?」


「友達は作っていきたいかな、ぬいぐるみ以外にも」


 え、ぬいぐるみが友達?だからいつもぬいぐるみ手放さなかったんだ


「仲良しごっこは後からにしてちょうだい、これでもわたくしは忙しいの」


「わーったよ、なら全部明かして明日決行するか」


「気が早すぎないかしら?」


「大丈夫だろ、やらねぇ方向で話すんだからよ」


 やらねぇ?やらねぇってどういう意味だろう、人をやるとかじゃないよね?


「わかったわ、でははじめてちょうだい」




次回予告


このコーナーいらなくない?とかうるっさいわねぇ、喧嘩売ってんの?唯一の私の出番でしょ!それに今日は私は活躍したわ!MVPね!褒めてくれてもいいのよ、あと尚央って子からケーキもらったわ!うまいわねぇ、気分爽快よ、あでゅー!



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