この関係に、なんと名前を付けようか。(仮)

@EnHt_919

春の日の君

春のある晴れの日、窓から外をのぞく君がカメラに映った。

その瞬間、私は思わずシャッターを切った。


その日から君のことが忘れられずにいた。


~一年後~


「水無瀬~!ごっめんギリギリで。これ、よろしく!」

「まぁ、提出しないよりいいんじゃない?じゃあ、私プリント出しに行ってくる。」


香澄高校 二年二組 理科係 水無瀬春乃

背丈は平均。

黒髪長髪。

成績は上の下。

サボり癖あり。

めんどくさいことはしたくない系の女子(部屋は汚い)。

理科係になったのも、委員や係の中で一番楽そうだったから…ではなく。

ただ単に、委員や係を決める話し合いそのものを面倒に思いボーっとしていたらかってになってしまったのだ。

しかし、なってしまったものはしょうがない。

今は課せられた「課題のプリント」をクラスの皆から集め、第二理科準備室にいる教師へ提出という仕事をこなそうとしている真っ最中だ。


一人のクラスメイトから先ほど受け取った最後の一枚を自分の机にあった三十九枚のプリントを机の上でまとめていると、先ほどまで眺めていた一枚の写真が目に入った。

その写真には、今から向かう第二理科準備室であろう場所の窓から外をのぞく青年をとったものだった。この写真を撮影してから長い間この学校に通っているが彼を見たのはこの一度きりだ。

この世は狭い、それ故にこの学校もさほど広いわけではないと思うのだが…探しているものほど見つからないものなのだろうか。

と、写真片目に首をかしげてた。

「水無瀬?なにしてんの、そんな首なんてかしげて。」

同じクラスの女友達 華森すずな

背丈は小さめ

茶髪、髪型はコロコロ変えるのでこれと言って決まってない。

成績は悪いが頭の回転が速い。

明るい性格でクラスの中心になることが多いタイプだ。

「あー、この写真の子まだ探してるの?」

「いや別に探してるってわけじゃ。」

「そうなの?一年の時なんて全学年が集まるときはいっつもきょろきょろしてたじゃん!」

「まぁ…確かにそうだけど。」

「でも不思議だよねー、そんなに水無瀬が探してるのにちっとも見つかんないなんて。」

「それは確かに。」

「不登校なのかな、水無瀬の想い人」

「別に想ってないけどね。ただ、ちょい気になるなーってだけ。」

「ふーん、あっそう。」

「じゃ、うちいくから」

「いってらー」


確かにそれもそうだ。

一年間探しても見つからないんだ。

単純に考えて不登校という線もある。

最悪退学済みの可能性もないわけではない。

全くもって謎だ。

おまけにあの写真以外情報が何もない、名前も年齢もわからないんじゃ調べようがないというものだ。

こんな不毛なことは考えないことに越したことはない。

そう思いながら第二理科室の扉を開ける。


【ガラガラ】


その瞬間春の温かい風が春乃めがけて吹き抜けた。

その風に乗るように抱えていた四十枚のプリントが桜の花びらのように宙を舞う。

なぜか?

そんなの決まっている。

見つけたのだ、出会ってしまったのだ。

一年間も探して見つからず、すっかりあきらめていた忘れられない謎の青年が第二理科準備室で窓のそばに立ってこちらを見ていた。







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