第123話 護衛
リリスちゃんと一緒に学院祭を回る事にした僕達は食べ歩きをしていた。
「私、こうやって誰かと出歩くのは初めてです」
リリスちゃんが言った
リリスちゃんは良い子だと思うのになんで友達がいないのかな?
あの護衛は臨時だって言ってたし、ローガンさん達はさっきの護衛と違って良い人だったけど。
「いつも護衛が側にいるの?」
「いつもではないです。学院の外に行く時は護衛を付けるように言われてるんです。学院祭の最中は外からも人が自由に行き来出来るので護衛を付けることになったんです」
「そうなんだ。護衛の人って皆あんな感じなの?」
「そんなことはないです。いきなり剣を抜くからびっくりしました」
やっぱりあの護衛の人達がおかしいようだ。
「護衛ってどうやって選ぶの?」
気になったので聞いてみる
「私の場合は専属がいますので、まずは連絡をします」
「ローガンさん達だね」
「はい。それでローガンさん達がお願いした時に護衛してくれるのですけど、今回みたいな時は冒険者ギルドに依頼を出します。その依頼を受けてくれた人が護衛をしてくれます」
「今回は運が悪かったんだね」
「……そうですね」
「僕が聞き始めた事だけど、あの人達のことは忘れて楽しもうか」
「はい」
「リリスちゃんはどこか行きたいところはある?元々はどこに行く予定だったの?」
「今日は高等部に行こうと思ってました。聖女様が魔法を使った劇をやるらしいです」
お姉ちゃんが?
「ラクネは何か知ってる?」
「うん。お姉ちゃんが劇をやるって言ってたよ。今日と最終日の2回やるって言ってたから、私は最終日に観にいくつもりだったよ」
「そうなんだ。今日でもいい?」
「うん。エルクくんも観たいんじゃないの?」
「みたい」
「それじゃあ行こっか」
僕達は冒険者ギルドに寄って、リリスちゃんの護衛依頼を僕が代わりにやっていることを伝えてから高等部へと移動する。
本来はいけないことのようだけど、あの護衛の人の対応の話をして、依頼主の許可が出ていることもあり許してくれた。
僕が勝手にやったことなので、依頼料はもらわない。
あの護衛の2人は失敗扱いにはならないらしいが、もらえる報酬は前金だけになるらしい。
処理的には雇っていた護衛は解雇して、新しく護衛を雇ったということになるようだ。
劇は夕方からだというので、まだ間に合う。
劇は何故か屋外でやるらしい。前に高等部のチーム戦を観戦したコロシアムだ。
まだ昼過ぎなのに、コロシアムの前の方は既に埋まっていた。どれだけ人気なのだろうか……
「どうしようか?思ったよりも人がいるから今のうちに場所を取って待つ?それとも他の出し物を見てから戻ってくる?」
僕は2人に聞く
「あ、お姉ちゃんが特別席を用意してるから観に来る時は教えてって言ってたよ」
「そうなの?それならリーナさんに会いに行こっか。どこにいるか知ってる?」
「時間が近くなったら闘技場の控室にいるはずだよ。まだ早い気がするけど行ってみる?」
「行ってみようか」
控室に行ったけど、誰もいなかった。
「他の出し物を見て時間を潰そうか。何見る?」
「この飛行体験をやってみたい」
リリスちゃんは空を飛びたいらしい。
僕のスキルで飛ばすことは出来るけど、これは誰にも教えてないスキルだし危ないので秘密だ。
「どうやって飛ぶんだろうね?行ってみようか」
僕達は飛行体験をやりにいく。
「ここの訓練場でやってるみたいだね」
訓練場に入ると、少し列が出来ていた。
「すごいね。本当に飛んでるみたい」
リリスちゃんが感動している。
確かにスゴい。安全の為にか天井から吊るされたロープに括られてはいるけれど、ロープ自体は弛んでいるので確かに浮いている。
そして、ゆっくりではあるけど空中を動いている。
どうやっているんだろう?
「これってどうやって飛んでるんですか?」
僕は列の整理をしていた人に聞く。
「重力魔法で体を浮かせて、風魔法で動かしているんだよ」
「そうなんですね。ありがとうございます」
なるほど、制御力がスゴいなと僕は思う。
どこまでも上り続けているわけではないので、重力を0にしているわけではないと思う。
ちょうどいいバランスを維持しているんだな。
僕の場合はなんでも力押しなので、こういった繊細なスキルの使い方は勉強になる。
「あれ、エルク何してるの?」
飛んでいる人を眺めながら順番待ちをしていると、お姉ちゃんに話しかけられた。
「飛行体験をしにきたんだよ。お姉ちゃんは?」
「私はここのお手伝いよ。魔力の消費が激しいから回復を頼まれたの」
「そうなんだ。頑張ってね」
「その子は?」
「リリスちゃん。前に依頼で遠くに行った時に馬車で一緒になって仲良くなったんだよ。1人で学院祭を回っているって言ったから誘ったんだ」
「友達なんだね」
「うん」
「私と友達になってくれるの?」
リリスちゃんが不安そうに聞く
「もう友達だよ」
「私も友達だと思ってるよ」
「初めてお友達が出来た。それも一度に2人も」
リリスちゃんは嬉しそうだ。
「エルクはこの後どうするの?」
お姉ちゃんに聞かれる
「あ、そうだ。お姉ちゃん達の劇を観に行くつもりだったんだけど、リーナさんが特別席を用意してくれるみたいな話をラクネから聞いたんだ」
「ああ、それならここのお手伝いが終わったら一緒に行きましょ。案内するわね」
「ありがとう」
お姉ちゃんが案内してくれるそうだ。
「あの、聖女様ですよね?エルクくんは聖女様の弟なの?」
リリスちゃんが聞く
「聖女だって名乗ったことはないんだけどね。エルクは私の弟よ。仲良くしてあげてね」
「あ、はい!握手してもらってもいいですか?」
「もちろんよ」
お姉ちゃんはアイドルのような存在のようだ。
「エルクの友達なら私の友達のようなものよ。何かあったら頼ってくれていいからね」
「ありがとうございます」
「エレナちゃん、お願いしてもいいかな?」
お姉ちゃんが呼ばれる。魔力がなくなってきたようだ。
「行ってくるわね。それじゃあ、飛行体験が終わってもここで待っててね」
「うん、わかったよ」
少しして僕達の番になった。
僕は自分で飛ぶことも出来るので遠慮して、体験するのはラクネとリリスちゃんだけだ。
まずはリリスちゃんが体験する。
万が一のことがあってもロープで括られているし、シールドも掛けてあるので怪我をする心配はない。
護衛を代わりにすると言ったのだから、ちゃんと約束は守り安全を確保する。
リリスちゃんが浮かんでいく。
自由自在に飛べるというわけではないけれど、リリスちゃんは楽しそうだ。
「エルクくんは良かったの?」
ラクネに聞かれる
「うん、僕は見てるだけで十分満足だよ」
だいぶ魔力の消費が激しいようだから、実際には自分で飛べて、気になった程度の僕は遠慮するべきだ。
その分、もう1人体験できるだろう。
「楽しかった」
少ししてリリスちゃんが降りてくる。
「どんな感じだったの?」
「なんだか自分が雲になったみたいだった」
「そっか、楽しめて良かったね」
「うん!」
その後、ラクネが飛行体験した後は、お姉ちゃんのお手伝いが終わるまでお菓子を摘みつつ他の人が飛んでいるのを眺めながらお喋りして待った。
「お待たせ。それじゃあ行こっか」
僕達はコロシアムへと向かう。
待っている時に近くにいた人が、お姉ちゃん達の劇の練習をしていたのを見て迫力が凄かったと言っていたのが聞こえたのですごく楽しみだ
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