第110話 買取額

神父さんが鑑定用の水晶を持ってきてくれる。


ローザ達はお布施を渡している。

いくら渡したのかは不明だ。


「借りてきたわ。誰から鑑定しようかしら?……アメリからにしようか」

ローザはアメリを指名した。理由は簡単だ。

待ちきれないって感じをずっと出しているからだ。


「なにか魔法スキルを頼む!」

アメリはそう言いながら水晶に魔力を流した。


結果をみんなで見る。アメリが元々持っていたスキルは剣術のみだった。

今は硬質化と脚力低下魔法の二つのスキルが増えていた。


硬質化は何かを硬くするスキルだろう。体を硬くするのか、武器の強度を増すのかわからないけど……。

そして念願の魔法スキル。でもこれはデバフだ。

アメリは更に近接向きになったようだ。


「う…、火魔法とかが良かった」

アメリは残念そうだ


「何言ってるのよ。大当たりじゃない!どっちもアメリ向きのスキルよ」


ローザの言う通り、アメリの戦闘スタイルに合ったスキルだ。硬質化もそうだけど、近接戦で脚力を低下させられればかなり有利になる。

でも違うのだ。アメリは遠距離で攻撃するような魔法スキルが欲しかったんだ。

まあでも、全然関係ないスキルが手に入ったと思えば、当たりな事には間違いないね


「次は私が鑑定させてもらうわ」

フレイの鑑定結果を見る。


複写と魔力操作、それに乾燥のスキルだ。

あれ、3つ増えてる


「なんで3つも増えてるの?」

僕はフレイに聞く


「魔力操作はみんなに言ってなかったわね。少し前に習得したのよ。だから今回増えたのは複写と乾燥よ」

フレイが答える


「そっか。それだとあんまり良いスキルじゃなかったね」

僕は素直にそう思った。

どちらも生活には便利って感じのスキルだ


「そうね。でもスキルは使い方次第だからね。私はハズレだとは思ってないわよ」

フレイはそう言った。少しでも良く考えようとしてるのかなって思ったけど、本当に嬉しそうだ。


「最後は私ね」

ローザの鑑定結果を見る


棒術と火炎魔法が増えていた。


僕はローザの結果を見て2つ驚くことがあった。

1つ目は棒術である。創造では棒術は創れない。棒術だけじゃなくて、剣術などの体に覚え込ませる系のスキルは創れないのだけれど、スキル書では覚えることが出来るようだ。


そして2つ目……火炎魔法が増えているけど、火魔法が無くなっている。これは火魔法が火炎魔法に変化したと考えた方がしっくりくる


「ローザ、火魔法のスキルが消えてるよ。使えなくなってる?」

僕はローザに尋ねる


「え……本当ね」

ローザは気づいていなかったようだ。新しいスキルにばかり目がいっていたのかな?


ローザは火魔法を使おうとして失敗した。


「使えないわ」


「そうみたいだね。火炎魔法で火魔法みたいなことは出来ないの?」

名前的には火魔法の上位互換のようにもとれる


「やってみるわ」

ローザがそう言って試すと、ローザの手の平から大き目の火球が浮かんだ。

ローザはビックリして、火球をすぐに消す。


「屋内なんだから、気をつけないと危ないよ」

僕はローザに言う


「全然魔力込めてないのに、あのサイズの魔法が発動したのよ。火魔法ならさっきの半分くらいのサイズだったわ」

完全に上位スキルのようだ。ただ、感覚は火魔法から直さないと危ないね。


「なんで火炎魔法を覚えたんだろうね。状況的には火魔法が火炎魔法になったようだけど……。火炎魔法を覚えたから、重複している火魔法が消えたとも考えられるね」


「細かいことは良いのよ。これは大当たりのスキルだわ。欲を言うなら棒術が杖術だったら良かったわね」

確かに考えた所で答えは出ないのだから、考えても無駄か。

でもこれの要因が分かると僕のスキルも上位互換に変換できる可能性があるので知りたい。

とりあえず寮に戻ったら火炎魔法が創れないか試してみよう。


「今回の依頼は大当たりだったとギルドに報告して帰りましょう」

ローザはそう言って教会を出て、ギルドの方に向かって歩き出した。


浮かれているローザは珍しいと思いつつも、声を掛けて止める


「まだやらないといけないことが残ってるよ」


「そうだったわ。買い取りに出したままだったわね」

ローザは恥ずかしがるけど、忘れているのはそれだけではない。


「処理場に馬車も置きっぱなしだよ」


「わ、わかってるわよ。行くわよ」

ローザは逃げるかのように、スタスタと歩いて行く。


処理場の方が近いので、先に馬車を回収する。

簡単にではあるけど、荷台の掃除もしてくれたようだ。


次は馬車に乗って買い取り屋に行く。

スキル書が見つかっているので、既にプラスではあるけど、僕個人としてはここの額によってはマイナスである。

少なくても処理に掛かった銀貨12枚は超えて欲しいものだ。


「いらっしゃいませ。昼間のお客様ですね。査定は終わってますよ」


「おいくらになりましたか?」


「銀貨40枚になりますが、金額を付けられなかった物をこちらで引き取ってもよければ大銀貨1枚で買い取ります」


少なくてもお宝は無かったようだ。支出を超えたのは良かったけど、結構量があった割には少ないなぁ


「簡単に内訳を聞いても良いかしら」


「まず買取額のほとんどはこちらの書物になります。1冊1冊にはそれほど価値はありませんが、数が多く需要もあるので、全部で銀貨25枚です。それからこちらの家具などは貴族向けの品になります。良い物ではあるのですが、貴族などのお金を持っている方が中古品でも欲しいと言う程のものではなく、一般の方にはサイズなどの理由で売れません。全部で銀貨5枚としました。残りの10枚は未使用の食器等の細々した物の合計です。金額を付けなかった物でも、店頭に置いておけば売れる物も中にはあるので、こちらで引き取ってよろしければ上乗せさせて頂いています。ある程度したら処理場に持っていくことになりますがね」


「全部引き取ってもらっていいわよね?」

ローザが僕達に相談する


持って帰ってもまた処理場でお金を取られるだけなので、迷うことなく全て引き取ってもらうことに決まった。


「全て引き取りでお願いします」


「かしこまりました。こちら大銀貨になります。まだ馬車から品物を下ろしていませんが、ギルドの馬車のようでしたのでこちらで返却しておきましょうか?」


「助かるわ。お願いします」

冒険者ギルドが紹介するだけあってサービスがいいな。後日馬車を取りに来る手間が省けた。


「かしこまりました。ではギルドにはそうお伝えください」


買い取り屋を出る。


「処理場で掛かったお金を引いて銀貨38枚ね。4人で分けてたら1人10枚もないし、パーティ資産にしていいかしら?」

ローザは提案する。

僕達は賛成した。今回だけでなくローザは毎回確認するけど、今のところ報酬は全部パーティの資産として貯めてある。

生活の為に依頼を受けていないから出来る事である

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