第81話 side エレナ④

今まで私はチームを組んでいなかった。

私の力に合わせれる人がいなかった事もあり、特例的にチームを組まない事を認められていた。


今はリーナとチームを組んでいる。

リーナが私とチームを組みたいと言ったからである。特に断る理由はなかったのでチームを組むことにした。


リーナが私に魔法の使い方を教えて欲しいと言ってきた。


私はリーナと一緒に訓練をする。

多分、私の魔力量がおかしいのはエルクに教わった訓練法が原因だろう。気絶するまで魔法を使うやつだ。


それをリーナに教えて良いものか迷う。

迷った私は他の方法でリーナの訓練を手伝うことにした。


リーナが火魔法を使う為に魔力を込める時に、私はリーナの魔力を回復魔法で回復させる。

そうする事でリーナは自分の魔力量よりも多い魔力を操ることが出来るようになり、熟練度の成長が早くなるだろう。


訓練を始めた当初はうまくいかなかった。

魔力を制御しきれずに暴走して何度も自身を丸焦げにしそうになる。

リーナの身体に水の膜を張っているので、実際には火傷をする事はなかったけど、見ていて気持ちのいいものではなかった。


リーナから昔の事故のことは聞いていたので、続けるか聞いたけど頑張ると返ってきた


訓練をしている際にリーナからたまに妹の話を聞いた。

姉思いのいい子のようだ。


私はその話を聞いて思い悩むことがある。


エルクの為を思って会わない決心をしたけど、本当にそれでよかったのかと……


学院長から連絡も来ないので、エルクは自分の力に気づかずにうまく学園生活をやっているのだろう。

そう思ってエルクに会いたい気持ちを抑える。


気持ちを抑えてきたけど、我慢出来なくなってくる。

エルクは自分の力を知ったとしても大丈夫なのではないかと、それなら会っても大丈夫なのではないかと……そう自分にとって都合のいいように考えてしまう。


こんな事を相談できる相手は学院長しかいないので、私は中等部に行くことにした。


学院長に会わせてもらいたいと事務の人に話し、学院長に確認してもらい、会わせてもらえることになった。


私は学院長室に行く


「エルクの為を思って会わないと言いましたけど、本当にそれがエルクの為になっているのか不安になってきました。本当にこのままでいいのか悩んでいます」

私は学院長に悩みを相談する


「今の状況が最善かどうかは、私にもわからないよ。エルク君が自分の力に気づいたとしても、去年の君みたいにはならないかも知れない。そうであれば真実を話してしまって君とエルク君がいつでも気兼ねなく会える方がいいと思うよ。でも、そうはならないと思ったから私に力を隠すように頼んだのではなかったのかい?」

学院長の言う通りだ。エルクがどう思うかは私もわからないけど、私と同じ思いはしてほしくない。


「はい、そうです」


「元々は君に頼まれたから、エルク君に秘密にしているだけだからね。君がエルク君と会いたいと言うのならば止めはしないよ。どっちに転ぶかはわからないけど、どっちに転んだとしても手助けはするから」


「エルクは今、普通の学園生活を送れていますか?」


「周りの安全も保たなけばいけないから、実際には普通の学園生活ではないかな。どうしてもエルク君の行動を制限しないといけない時があるからね。でもエルク君にその自覚はないから、今の生活を楽しんでいるように見えるよ」


「そうですか…」


「消極的な意見を言わせてもらえば、現状のままでも良いのではないかと思うんだけど、私は君の気持ちを尊重するよ。どうしたい?」

学院長から選択を迫られる。エルクに会いたいけど、それでエルクの今の幸せが壊れるかもしれない……


「今はこのままでお願いします」

私は現状維持を選択した


「わかったよ。また悩んだら相談に乗るからいつでも来なさい。それと、少ししたら高等部で模擬戦の公開があるだろう?そこにエルク君も行かせるようにさせるから顔だけでも見るといい。例年通り模擬戦出場者には認識阻害を掛けるから君の事はバレないと思うよ」


「ありがとうございます」


「さっきも言ったけど、いつでも来ていいからね。協力できる事もあると思うよ」


「よろしくお願いします」


私は学院長にお礼をして部屋出る。


相談する前と何も変わらないけど、少し気持ちが落ち着いた気がする。


それに、会って話すことは出来ないけど、もう少ししたら顔を見ることが出来る。

今はそれで我慢しよう


リーナとチームを組んでからほとんど活動していないのに、いつのまにか高等部のチームランキングの1位になっていた。

学院長が何かしたのかもしれない。


認識阻害で私とわからなくても、カッコいい所をエルクに見せなくちゃ。


私はリーナとの訓練に力を入れる。


事故があるまでは優秀だったというリーナの言葉は本当だったようで、訓練を続けるうちにどんどんと制限出来る魔力量が増していった。


そして、模擬戦を公開する日になった。

私は観客席にいるはずのエルクを探す。


見つけた!男の子と獣人の女の子と一緒にいる。

友達かな?楽しくやっているのを見て安心する


途中で帽子と変なメガネを掛けた。ぷっ、似合ってない。


私は試合を見ずにエルクを見ていた。

昼過ぎからエルクは観客席で肉を焼きだした。常識に欠けているのは相変わらずのようだ。


ぐー。じゅるり。


お腹がなって、涎が出てきた。


王都に来てから美味しいものは色々食べたけど、エルクがつくった食べ物が1番美味しかったと思う。

今と違って空腹だったから、より美味しく感じただけかもしれないけど……


また食べたいなぁ


そんなことを考えていたら、試合が終わってエルク達は教員に連れてかれてしまった。


やっぱりあそこで肉を焼くのは問題だったのかな…。

あんまり怒られなければいいけど…


次の日からも私は試合を見ずにエルクを見ていた。次はいつ見れるかわからないから…


そして最終日、観客が多すぎてエルクを発見することが出来なかった。


どこかで見ているだろうエルクにカッコいいところを見せる為、私はリーナと頑張り勝利を収める。


「リーナ、訓練の時よりも魔力量多く込めてたけど問題なかったわね」

訓練ではこの量の魔力は込めていなかった。リーナは本番に強いようだ


「そうね。妹も見てたし張り切っちゃったわ」


「訓練の成果が見せれて良かったわね」


「ええ、ありがとう。でもあれだけ魔力を込めてもエレナの水の牢獄にはまったく影響がないんだからまだまだよ」


「あの牢獄が壊れたら相手は怪我じゃ済まなくなるかもしれないんだから当然じゃない。牢獄が壊れる以上の魔力は回復させてないわよ」


「そうよね。これからも訓練よろしくね」


「うん、もちろんよ」


私達は会場を出る


翌日から騎士団や冒険者、王城などから誘いが来たけど私は全て断った。


まだ卒業は先だし、今は教会での仕事で手一杯だ。


リーナにも話は来ていたようだが保留にしたようだ。

今は自分がどうなりたいか考えている途中だと言っていた。


少しづつ私も将来の事を考えないといけないよね

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