第69話 別荘へ

温泉から出た後、カフェでお茶してから屋敷に戻った


僕は屋敷に戻ってきてすぐにローザに石鹸を渡すことにする。

明らかに他のみんなが使ったのはわかるからだ。


みんなには少しだけど小分けにして渡すようなことを言った気がするけど、忘れていた結果普通のサイズの物を渡している。

なのでローザの方の量を多くして渡すことにしよう。

石鹸は2つ渡して、シャンプーとリンスは大きいビンに移し替えればいいだろう。

そう思ったけど大きいビンなんて持ってないので、2本ずつ渡すことにした


同じサイズのビンしか創れないからこういう時に困る。


僕はローザがいる部屋を聞いてノックして開ける


「エルク、何の用かしら?」


「遅くなったけど、石鹸持ってきたよ」


「ありがとう!」

すごく嬉しそうに受け取った。くせ毛に効けばいいのだけれど……


ローザの髪を見るけど、やはり気にするほどのくせ毛には見えない。


「こんなにもらっていいのかしら?」


「毎日使うものだし気にしないで」


「ありがとう、いくら払えばいいかしら?」

教室でも売って欲しいと言っていたけど、みんなからお金はもらってないし、クラスメイトからお金を受け取るのも気が引けるのでプレゼントすることにする


「気にいるかわからないし別にお金は要らないよ。ローザにプレゼントするよ」


「それは悪いわよ。作るのに材料だって必要でしょう?」

ローザはそう言うけど、作るのに必要な物は僕の魔力だけである。

シャンプーとリンスを入れているビンも創造で創っているので本当に魔力以外は使っていないのだ


「高い材料とか使ってないから本当に要らないよ」

僕は再度断る。


「……わかったわ、ありがとう。貸しにしておいてもらえるかしら。エルクが困っている時に力になるわ」


「うん、そうさせてもらうよ」


僕はローザのいる部屋を出て、フレイの部屋に向かう


みんなに渡したのだから手土産とは別にフレイにも渡すことにする


僕はノックしてドアを開ける


「どうしたの?」


「フレイにも石鹸もってきたんだよ。みんなにもさっき渡したからフレイにもね」


「ありがとう、頂くわ。エルクがいるってことはみんな戻ってきてるのよね?」


「うん」


「それなら、みんなに話をしに行かないといけないわね。ちょうどいいからエルクにはここで言うわ。明日から別荘に行くわよ」


「行けることになったんだね」


「ええ、護衛を増やして行くことになったわ。専属の護衛と長年付き合いのある冒険者のみに護衛を頼むからリスクは少ないわ。……大所帯になってしまうのは許して欲しいわ」

フレイは申し訳なさそうに言った


「その分安心出来るってことだよね」


「そう言ってくれると助かるわ。みんなにも伝えてくるわ」

そう言ってフレイは歩いて行った


自室に戻りベットの上でゴロゴロしていると、使用人の男性がやってきたので部屋の中に入れる。街に同行していた人だ。


「失礼します」


「えっと、なんですか?」


「温泉でご使用していた石鹸を分けていただく事は出来ませんでしょうか?皆様が戻って来られたのを見た奥様が欲しいとおっしゃっております」


奥様にだけあげない理由はないので、僕はすぐに渡そうとするけどやめる。


「もちろんです。渡すのは後からでもいいですか?」


「ありがとうございます。奥様もお喜びになられます」


男性は部屋から出て行く


僕が今渡さなかった理由は、渡せずにいる手土産を渡すチャンスだと思ったからだ。


僕は早速、ラクネとエミリーの所に行って話をする


相談した結果、夕食後に石鹸を渡すことになった。

奥様に直接ではなく、さっき訪ねてきた人に渡せばいいだろう。


そして夕食を頂いた後、石鹸を3人からと言うことで使用人の男性に渡した。


干し肉は別荘でフレイに渡して、みんなで食べた方がいいよね?ってことになったので渡していない。


そして翌日、別荘に向かって出発した。


馬車は4台で、前と後ろを護衛の方が乗った馬車で守っている。

僕達が乗っている馬車にも護衛として雇われた冒険者の人が乗っている。極力気を使わないように女性の冒険者である。


ここまで、厳重にしている馬車を襲う賊はそうそういないだろう。


馬車に揺られること数時間、ハーベスト家の別荘に到着した。


屋敷のように大きい別荘の前には海が広がっていて、綺麗な砂浜があり、別荘の裏には山がある


山があるおかげで、隔離された空間って感じがしていい感じだ。


昼食は浜辺で食べるとのことで、準備が終わるまでは別荘の中で過ごす。


このタイミングでフレイに干し肉を渡した。


「ありがとうございます。中身は何かしら?」


「干し肉だよ。ラクネとエミリーと3人で作ったんだよ。うまく出来てると思うよ」


「干し肉でしたら、昼食で一緒に頂くことにしますわ」


別荘の中でみんなとしゃべりながら待っていると、昼食の準備が出来たと呼ばれた


浜辺に行くとバーベキューの準備がされていた


海の近くということもあり、食材は魚が多い。


「この魚はなんて魚ですか?」

僕は見たことない魚ばかりなので、聞きながら食べる。


さっき渡した干し肉も焼かれたので食べる


美味い!塩を擦り込んだからもっと辛くて、固いと思ってたけど、全然そんなことはなかった。

干さずにそのまま食べるよりも美味しく感じるくらいだ


干し肉の旨みを味わい、想像以上の美味しさにもっと食べようとする


あれ?

既に網の上に干し肉は無かった


結構な量持ってきたと思ったけど、全部は使わなかったのかな?


「干し肉ってもうないんですか?」

僕は側にいるメイドさんに聞く。


食べるものはこのメイドさんに言えば取ってきてくれるので、あるなら持ってきてくれるだろう


「申し訳ありません。なくなってしまいました」


「持ってきた分全部は使わないんですか?」

後で他の料理に使う予定でもあるのだろうか?


「いえ、全て使わせて頂きました」

あの量を既に食べ切った後だったようだ。人数も多いから無くなるのも早いなぁ。

王都に帰ったら作ろうかな……。干し方以外は覚えたし


「……そうですか。それならお魚をお願いします」


「かしこまりました」


僕はメイドさんが魚を取りに行くために側を離れたのを確認してから、醤油を取り出して皿に垂らしておく。

やっぱり魚には醤油だよね。こっちの世界で醤油を見ていないし、そもそも大豆を見ていない。

代用出来るものがあるかもしれないけど、分からないうちは出来るだけ隠しておこう


「お待たせいたしました」


メイドさんが焼き魚を持ってきてくれた

僕は醤油をつけて食べようとする。しかし……


「皿が汚れていますね、交換致します」


「……いえ、このままで大丈夫です」


「洗うだけですので遠慮しないで下さい」

そう言ってメイドさんは皿を醤油ごと交換してしまった


あぁ、醤油が……


メイドさんが側にいる以上、もう一度隠れて醤油を取り出すことは難しく、僕は醤油を掛けるのを諦めて魚を食べることにした。


塩で味付けはされているので、美味しかったけど醤油かけたかったなぁ

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