第6話
「西の街道を端の村まで行ってきたんだろう?」
アルフォードの街に入ってそのままギルドに顔を出すとギルマスの執務室に案内されソファに座るなりギルマスのスティーブが聞いてきた。
「行ってきた。途中の街道沿いの新しい農地はかなり開拓が進んでたよ。一部ではもう作物の芽が出ていた。あそこは一大穀倉地帯になるな」
「お前さんたちが言った通りじゃないかよ」
スティーブはあそこの開拓の提案をしたのが目の前にいるレスリーだということを聞いていた。報告書ではリックをリーダーとするパーティということになっているが実際は風水術士のレスリーの見立てだというのは皆知っている。
「開拓したせいか街道も人が多かったわ。突き当たりの西の端の村にも行ってきたけど村の人口も増えてきているって村長さんから聞いたの」
アイリーンの報告に頷くギルマス。その後2人と村人で村を大きくしたと聞いたときはびっくりして
「村をでかくしたのか」
「人が増えて狭くなってきたって言ってたからね。レスリーが倒木を集めて村人らと一緒に柵を作って敷地を広げたの。これで少々人が増えてもあの村は大丈夫よ」
あっさりと言う2人だがやってることは規格外だ。柵を作って村を広げると一口に言っても実際には大勢の人夫を使って時間をかけてやる作業だ。それをこの2人は村人にも手伝って貰ったからと2日でやり遂げている。
しかも話を聞くと2人だけで村の近くを流れている川の向こう側の森の中にいるAランクだSランクらを倒しながら森の奥の探索までしてきている。当人達は当たり前の様に報告しているがこれだって普通の冒険者なら無理な探索だ。
「もうお前さんたちが何をやっても俺は驚かないぞと思っていたがこうやって聞くとやっぱり驚いてしまう。お前さんたち一体何者なんだよ」
そう言って最後には笑い出したギルマスのスティーブ。
「まぁ普通の冒険者とはちょっと違うわよね。でも村人やここに住んでる人の生活がよくなるならこれからも続けていくつもりよ。リックからも頼まれてるし」
アイリーンが言うとスティーブは真面目な表情になって
「それは俺からも頼む。お前さんたちがあちこちを探索してくれて報告してくれている情報はギルド内で共有している。おまけに村や道路も修復してくれている。それらのおかげで冒険者や村人達の事故も大きく減っているんだ。助かってるよ」
そうして今度南に行くときにも行く前に声をかけてくれと言われて2人はギルマスの部屋を出た。そしてギルドのカウンターで西に行った時に集めた魔石の換金を依頼する。
テーブルの上に山の様に積まれていくランクSとランクAの魔石。それを見ていた受付嬢はびっくりするが、同じ様にレスリーらを見ていた酒場の冒険者達も次々とテーブルに置かれる魔石を見て驚愕する。
「あの魔石見ろよ、ランクAとSばかりだぜ」
「二人でランクSをあれだけ倒してるんだろう?何と言う強さなんだよ」
「ドーソンからホロの近くまである地元の冒険者すらやばすぎて入れないと言っていた森を踏破してきてるからな。あいつらにとったらランクSも脅威にならないってことか」
「そうだとしてもだぜ、二人でランクSを倒すんだぜ。普通なら信じられないよな」
などと口々に話をする冒険者達。
レスリーとアイリーンはそんな酒場からの視線を浴びながらもギルドを出るととりあえずアルフォードで拠点にしているリックの(と言うか王家の)一軒家に入って旅の疲れをとったあとは二人で街に繰り出した。
アルフォードは冒険者の街と言ってもいいほどに冒険者の数が多い。そしてそれら冒険者達は街の中でも冒険者の格好をしており私服を着ている者は少ない。これは冒険者であることをアピールすることによって多少の値引きをしてくれる店が多いからだとアランから説明を聞いていた二人。従い家を出て街を歩いている二人も冒険者の格好のままだ。二人ともローブを着てレスリーは杖を持っている。アイリーンの片手剣は今はローブの中に隠れていて外からは見えない。
夕方になっていたので街をブラブラとしながらレストランを探して歩いているとすれ違う人とアイリーンの肩がぶつかった。夕刻でレストランのある通りは1日の仕事を終えた市民や冒険者、商人らで人通りが多かった。
「何ぶつかってんだよ、オラ!」
肩がぶつかったというか人通りの多い中で全く人を避けずに歩いていてアイリーンとぶつかった大男がアイリーンを睨みつける。冒険者の男だ。そしてその取り巻きというか同じパーティメンバーらしき男が3人いて4人で通りのど真ん中で立ち止まってアイリーンを睨みつけてくる。
アイリーンもレスリーも一目見てその男がランクBクラスの戦士の男だと見極めた。アイリーンがごめんなさいと言うが大男は
「おいおい謝ったら済むと思ってるのかよ?こっちは身体張ってるんだよ、お前らここじゃあ見ない顔だがそのなりから見てよそから来た冒険者の様だが後ろで離れたところからちまちまと魔法打ってる軟弱な魔法使いか何かだろ。常に最前線で魔獣相手に身体を張ってる俺の身体に何かあったらどうするんだよ?ああん?どう落とし前つけてくれるんだ?」
一気に捲し立てる大男。それを聞いているアイリーンの顔が無表情になる。レスリーも同様だ。
黙っていたのをビビったと思ったのか大男とその取り巻きが通りの真ん中で2人を囲むと
「辺境領アルフォードの冒険者がどんだけ強いのか身を持ってわからせてやろうか?」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます