第5話

 宿の主人は2人を覚えていてすぐに村長を呼びに行きそうして旅に入ってきた村長はレスリーとアイリーンを見ると


「これはこれは風水術士様。お久しぶりです。いつぞやはお世話になりありがとうございました」


 そう言うと頭を下げてくる村長。


「お元気そうでなにより。村も活気があって良いですね」


 レスリーが言うと村長は破顔し、


「おかげさまで安定した暮らしをさせてもらっております。前回教えて頂いた村の周囲で安全な場所とそうでない場所のことについては村人も皆喜んでおります」


「アルフォードからこの村に来る途中の草原も開拓されてるし、この村もますます発展するんじゃないですか?」


 アイリーンの言葉にそうなんですよと頷き、


「実は村の人口も少しずつですけけど増えてきておりまして」


 そう言ってから村の人口が増えるのはありがたい話しなんですが村が段々と手狭になってきてましてと言う。


 聞いていたレスリーはアイリーンと顔を見合わせてから村長に顔を向けて、


「この村を広くするのなら山裾側に広げるのは問題ありません」


 その言葉を聞いて安心する村長。


「私らも広げるのなら山裾側じゃろうという話は村人としてたんですがいかんせん根拠がないもんで踏ん切りがつかなかったんですわ。今のお話を聞いて決断できました」


「村を広げるのなら私たちも手伝いますよ」


 アイリーンが言いもちろんとレスリーも言葉を重ねる。


 この日は村の宿で旅の疲れを取った2人は翌朝から村の拡張工事を始めた。


 レスリーが倒木を集め、アイリーンと村人でそれを柵にするために枝を切り長さを揃え、そうしてレスリーが村人の希望を聞きながら地面に柵を立てていく。


 丸2日かけて村は従来の広さの約1.5倍の広さになった。村の入り口も新しく作り頑丈に出来上がった村の新しい柵を見て村長始め村人は大喜びで


「これで大丈夫です。何から何までありがとうございました」


 村長始め村人からお礼を言われた2人。その日の夜は泊まっている宿の食堂で村人らと飲めや食えやの宴会となった。


 村人の歓待を受けた翌日、2人は村の外にでると果樹園を見て周りそれから背後の山に登っていく。


「果樹園は何も問題がないな。美味しそうな実がなってたよ」


 そうして山を登りながらそこに生息している魔獣を倒していく2人。山の中をゆっくりと探索して山の頂上まで上がると、


「以前と魔獣の分布は変わってなかったわね」


「そうだな。魔獣の生息域が変わってない。村人も安心だろう」


 村に戻って村長に山の魔獣の分布状況について以前と変わっていなかったと報告をしてから明日は村人に行くのを止めてもらっている川の向こう側の森の中の状況を見てくるつもりだと言う2人。


 よろしく頼みますと村長に託されたレスリーとアイリーンは翌日村を出ると村の手間を流れている川を渡って反対側にある森に向かって歩いていく。


 ドーソンの南の深い森を踏破している2人だがそれでも森には何がいるかわからない。川を渡り終えたところでアイリーンが片手剣を抜刀して構えたままで森に入っていった。


「森に入る前から感じられていたけどここは高ランクの魔獣の気配が濃いわ」


 隣を歩くアイリーンの言葉に頷きながら風を飛ばして周囲を警戒するレスリー。森に入って数分でAランクの魔獣が2人を見つけて遅いかかってきたがそれより前に魔獣を感知していた2人は準備をしていてアイリーンが魔獣の突進を交わしながら片手剣を一閃して綺麗に首を刎ね飛ばした。


 その後も1体、ときには2体とAランクが襲ってくるが問題なく倒していく2人。


「エルフの森の様な感じだな」


「あっちの方が強かったんじゃない?」


 そう言いながら奥に進み魔素が相当濃くなっているとレスリーが感じているとランクが上がってSランクの魔獣が生息しているエリアになった。


 レスリーが地面からの槍で足止めをしてアイリーンがその首を刎ねていく。時には連続しての戦闘になるがレスリーが竜巻で魔獣を足止めしてアイリーンが倒すというコンビネーションで危なげなく討伐を続ける2人。


 結局この日は森の中を6時間ほど歩いてSランクの魔獣を倒しながら森の状態を調べていった。


「森の中はどんな感じ?」


 Sランクが生息している地域のど真ん中で地面にしゃがみ込んで土を見ているレスリーにアイリーンが話かけてくる。


「土壌は悪くないよ。ただ魔素が濃いから高ランクの魔獣の生息地になっている。ここはこのまま放置しておくのがいいだろう」


 そうして立ち上がると周辺に生えている太い木々の状態を見て


「木は大きく育ってる。しっかりと地中から養分を吸い上げているからだな。木にとっては良い森だよ」


「森の外は魔素が薄いって言ってたわよね。となるとここにいるSやAランクの魔獣は森から出ないってことでいいのかしら?」


 アイリーンが言うとそうなるねと答え、2人は森の中をきた道を戻って森を抜けて川の流ていいる河原に出てきた。陽は大きく西に傾いていて2人の長い影が河原に伸びていた。


「村に戻ったらここの様子も説明しておこう。それからこの村を出て一旦アルフォードに戻るか」


 2人が村に戻った頃にはすっかり日がくれていたので村長への報告は明日にする。


 そうして翌朝旅立ちの準備を終えた2人は村長宅に顔を出して川の向こう側の森の様子について話をした。


「川の向こうの森はかなり高ランクの魔獣の生息エリアになっていました。幸いに森の外は魔素が薄いので魔獣はあの森からは出てこないと思いますがくれぐれも川の向こうには足を伸ばさない様に村の人たちに徹底させてください」


 アイリーンの言葉に頭を下げて


「ありがとうございました。村の連中は以前からあの川の向こうには行かない様に通知しておりますが最近は新しい村人も増えてきております。今一度徹底させておきましょう。それにしても本当に毎回毎回ありがとうございます。今回は村を広げてくださって村人も皆感謝しております」


 村長から丁重なお礼の言葉を頂いた2人はまた来ますと村長宅を後にする。すると宿の主人が2人に近寄ってきて村からお二人への贈り物ですと言って村特産の果実がたくさん入っている袋を差し出してきた。


「ありがとうございます」


「いやいや、あんた達はこの村を広げてくれた。こんな果実くらいじゃ足りないだろうがわしらにはここの特産品くらいしかお礼ができなくてね」


「十分ですよ。これ美味しいし。遠慮なく頂きます」


 村長や宿の主人そして村人たちの見送りを受けながらレスリーとアイリーンは西の村を後にして街道を歩いて村を出て20日後に久しぶりにアルフォードに戻ってきた。

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