レスリー街道

第1話

「やっぱり人が多いわね」


「辺境領最大の都市だからな」


 アルフォードに入城する列に並びながら30分ほどしてようやく城門をくぐって街の中に入った2人は人が多い通りを歩きその足でギルドに顔を出した。


 丁度昼過ぎの時間帯であったせいか外の人通りとは対照的に人が少ないギルドに入るとそのままカウンターでギルドカードを見せてギルマスとの面談を申し込む。


 「久しぶりだな。あちこちで活躍してる様じゃないか」


 挨拶を終えるとギルマスのスティーブが話しかけてきた。

 2人が黙っていると


「レスリー街道を開通させたり農地の開発だ辺境の村の村おこしだと、お前さんらの名前は辺境領ではすっかり有名になってるぜ」


「そのレスリー街道っての、本当に皆使ってるのか?止めてもらいたいんだが」


 レスリーが言うが


「そりゃ無理だ。ここアルフォードからウッドタウン、そして辺境領からホロにかけての全ての街道沿いの村の皆がそう言ってる。レスリー街道ホテルって名前の宿が多数あるって話だ。もうダメだな。諦めな」


 そう言うとギルマスのスティーブが声を出して笑ってから


「レスリー、アイリーンもだが、お前さんたちはそれだけの事を成し遂げてるんだよ。お前さんたちがやったことでどれだけ多くの人が助かり、便利になってるか。彼らは感謝の気持ちといつまでもそうやって助けてくれた人の事を忘れない様にって名前をつけてる。

お前さんだってそこまでやってくれてる人たちの好意を無にするなんてできないだろう?」


 ギルマスにそこまで言われると返す言葉がない。大きなため息をつくと、


「わかった。名前についちゃあ諦めるよ」


「そうそう、諦めな。ところで辺境領じゃあまたこの前と同じ様に西や東や南にいくんだろう?」


「そうするつもりなの。前に来てレスリーが言ったところがどうなってるのか見てみたいし」


 アイリーンの言葉に頷くギルマス。


「最近またギルド本部経由で王家からの通達がきていてな」


 そう言ってその通達文を2人に見せるギルマス。2人はそれを一読して顔を上げると、


「そう言う訳だ。お前さん達は好きに動いてくれて構わない。ただレスリー街道を通ってホロに向かう日だけは教えてくれ。それとマイヤーから連絡が来ている。アルフォードでは以前使った家を拠点に使ってくれて構わないそうだ」


「わかった。色々とありがとう」


 そう言ってギルマスの部屋を出て人が少ない受付の前を通って通りにでると2人はそのまま通りを歩いてとある路地に入っていった。


 扉を開けると前と同じく綺麗な鈴の音が響いて奥からオズか顔を出してきた。2人を見ると


「いらっしゃい。久しぶりだね」


 そう言って2人の来ているローブとズボンを見るとほぅと言ってから


「そうかい。あそこに行ってきたのかい。まぁお座り」


 2人が座ると奥からお茶を持ってきてテーブルに置いて自分も座って目の前にいる2人を見て


「よくまぁあの森の奥まで行けたもんだね。高ランクの魔獣がうじゃうじゃといただろうに」


 そう言ってからまぁあんた達ならあの程度の魔獣なら問題はないかと独り言を続けた。


「エルフの村の長のティモナさんもお元気でしたよ」

 

 アイリーンはドーソンの街から森に入って南下していく途中で大きな結界を見つけてエルフの村に入ったこと。そこで広場の奥にあったエルフがご神木と呼んでいる大木が眠っていたのをレスリーが風水術で目覚めさせたこと、その後も村に留まって村の中の土地を回って農業に適した場所を教えていったことなどを説明する。


 アイリーンの話を黙って聞いていたオズは彼女の話が終わると大きく首を縦に振り、


「レスリーそしてアイリーンも2人ともいい仕事をしてきてくれたね。私からも礼を言わせてもらうよ」


「皆喜んでくれて何よりだったよ。それよりもお礼にとこんなに優れた防具をアイリーンと2人分いただいてこちらが恐縮するよ」


「あんた達はそれを貰える資格が十分にあるよ。それだけの事をエルフの村でしてくれた。エルフがお礼をするのは当然さ。そしてあんた達2人はエルフの真の友となったのさ」


 そうしてアイリーンの防具を見て、妖精が目覚めたからだろうね。以前のよりずっと効果が高くなってるねと言ってから視線をレスリーに戻すと、


「この辺境領内でもいろいろ活躍してるじゃないの」


「見て思いついた事を言っているだけだけどね」


 レスリーのその言葉にふふんっと言うと


「普通なら見えないものが見える。それは大切な事だよ。エルフの村の結界だってエルフが作った防具を身につけていたアイリーンが見えるのは当然だがレスリーにも見えたんだろう?それは風水術を極めているからだよ。極めれば極めるほど今まで見えていなかったものが見えてくる。その感覚は他の人には無いものだよ。そしてレスリーはまだまだ伸びるね」


「鍛錬は欠かさない様にしてるからね。伸びるかどうかは自分ではわからないが自分の生活スタイルはこれからも変えないつもりだよ」


 そう言うとそれがいいと大きく頷くオズ。そう言うと今度はアイリーンを見て


「レスリーが目立ちすぎていてその影に隠れてるみたいだけどアイリーン、あんたも相当だよ。ティモナが新しい防具をアイリーンにも渡したのがその証拠さ。ちゃんと見ている人は見ている。アイリーンもすごい冒険者だってね。あんた達は2人で1つ。どちらが欠けてもうまくいかないだろう」


「ありがとうございます」


 と頭を下げるアイリーン。アイリーンは自分はレスリーをサポートする黒子で十分だと思っている。彼が仕事がしやすい様に邪魔となる魔獣を討伐するのが自分の仕事だと思っていた。レスリーと一緒になった時いやその前から彼女はそう決めていた。だから今の自分の立場に何ら不満はない。


 ただ見てる人は見ているよとオズに言われて正直嬉しかったのも事実だ。こういう言葉をかけて貰えるだけで彼女は自分のやっていることが間違っていなかったと納得できる。

 

 オズは微笑みながら前に座っている2人を見て、


「これから辺境領内をウロウロするんだろう?このアルフォードの街にいるときはいつでも訪ねておいで、あんた達2人なら歓迎するからね」


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