第6話
ラウダーの街を出て数日後、2人はアルフォードに向かう街道から草原に入ったところにある村に顔を出した。
「あの時の冒険者の方ですね。いやお久しぶりです」
2人が村に入るなり2人を覚えていた村人が村長を呼んできて会うなり頭を下げて2人にお礼を言う。
ここは以前リックら5人で来た時に急に水がなくなって畑が枯れて廃墟寸前だった村だったがそこに水を引き村の周囲に新しい柵を作って生き返らせた村だ。そしてレスリーとアイリーンの間柄がぐっと近づいた村でもある。
ジムという村長は2人に礼を言ったあとで、
「あなた方が村に水を引いてくれておまけに柵まで新しく作ってくれて以来この村では作物が良く採れる様になりました。最近では余った農作物をラウダーの街まで売りに行ける様になって村人の暮らしぶりも随分と良くなりました。そして少しずつではありますが若い人達も村に戻ってきたり移住してきたりしてくれて人も増えてきております」
そう言ってまたお礼を言うジム村長。その話を聞いて、
「よかったじゃないですか。村の人の生活がよくなったのなら私たちも嬉しいです。ここでいっぱい作物を作って美味しい作物を沢山周囲の人たちに分けてあげてください。この村がもっと賑やかになるといいですね」
アイリーンが言うと本当にそうなるとありがたい話ですわと村長が言う。その後は村人達が集まってきて村で作った野菜を中心とした料理を2人に振る舞ってくれた。
「これは美味しい。新鮮な野菜を使った料理は味が全然違う」
レスリーが言うと本当ねとアイリーン。そうして村人達の暖かい歓待を受けた次の日、お礼を言って村を出た2人は街道とは反対側の山の方に歩いていく。
以前土砂くずれでできた自然のダムの奥にある池の辺りがどうなったかを見るためだ。2人は草原の中を1日歩いてそこで野営をし、その翌日、小川を渡ると森の中に入っていった。
「魔獣は以前と変わってないわね」
ランクBの魔獣を倒して魔石を取り出しながらアイリーンが言うと
「そうだな。魔獣の分布は以前と変わってない様だ。これならあの村の柵は全く問題ないだろう。このまま奥に行こうか」
その後も単体で現れるランクBの魔獣を倒して森の奥に進んでいき、堰き止められて池になっている場所に着いた2人。
その場でじっと池とその周囲を見ているレスリー。アイリーンもレスリーの隣に立って同じ様に池とその周辺を見て、
「池は以前と同じくらいの大きさ?」
「そうだね。変わってないな」
「ねぇ、この自然にできたダムって大丈夫?決壊とかしない?」
この自然のダムが決壊したら大量の水が草原に流れ出してひょっとしたら村まで行くんじゃないかと心配になったアイリーンが聞くが、
「大丈夫だ」
池を堰き止めている自然のダムを見ながらレスリーがキッパリと言い切った。
どうして?という表情を隣のレスリーに向けるとそのアイリーンの顔を見てから再び正面の自然のダムを指差して、
「この池に溜まった水はここから反対側に流れていってる様だ。池に溜まっている水がゆっくりとだけどダムとは反対側に流れているのがわかるからね」
そう言ってから池の向こう側を見てみようと池に沿って歩き出す。途中でランクBの魔獣を倒しながら池の周囲を歩いて自然にできたダムの反対側に着くと2人の目の前に池の端から水が流れ落ちていってるのが見えた。高さはそれほどないがそれは滝の様だ。滝はいくつもありそしてその先には山あいを縫う様に流れている川が見えた。
「あそこにあるいくつかの滝から落ちている水が以前からあった川に合流して山あいを流れて南の方に向かってる様だ」
「本当だ。だから雨が降っても池の水も増えないのね」
レスリーと同じ様に小さな滝となって落ちていく水がその先で川と合流して流れているのを見ているアイリーン。
暫く池のほとりで池や滝を見ていると2人のいる池の縁の反対側の森の中から魔獣ではなく野生の鹿が数頭出てきたかと思うと池の縁に近づいてそこで水を飲みはじめた。
「動物達の新しい水場ができたのね」
「そう言うことだ。魔素が少ないから魔獣も多くない場所だし野生動物にとっては生活しやすい場所なんだろう」
水を飲んでいた鹿は池の反対側にいる2人に気がついたのか首をあげてこちらを見たがすぐにまた首を垂らすと池の水を飲み始める。山には魔獣ではなく野生動物も暮らしている。そんな野生動物にとってはこの池は自分たちが生きていく上で必要な水分を得られるありがたい水場になったんだろう。
レスリーはその場でしゃがみ込んで池の中に手を入れて、暫くしてから手を抜いてから立ち上がると、
「池の水も綺麗だ。山で浄化されているんだろう」
暫く池のほとりに立っていた2人。
「自然ってすごいね」
そう言ってからアイリーンがレスリーの手を取って行きましょ?と言うと頷いて来た道を戻っていった。
途中では魔獣に出会うものの全て単体でしかもそれほど魔獣も多くは生息していない様だ。これなら安心だよねとアイリーンが言うとレスリーも頷いて同意する。
森を出て草原を抜けて再び街道に出た2人はゆっくりと街道を歩き、そして左右に草原や森を見ると街道から外れてその中を探索しながら南に進んでいく。
そうしてラウダーの街を出てから1ヶ月後に2人は今回の2つ目の目的地である辺境領最大の都市のアルフォードに着いた。
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