第13話 種族という分類
何でも願いが叶うラクリマ、七つの種族。自宅に帰りながら、考えてみた。
有翼人、竜人、エルフ。この三種族が持っている事は分かった。他は分からないってババ様は言っていたけど。
大昔、勇者がその族長らに託したんだろ?
って事は……最低限、話が通じる種族だと思う。それでいて、悪いヤツじゃない種族。そんな大事なものを悪人に預けるとは思えないからだ。
それから、弱いヤツにも渡せないな。盗まれたり奪われたり、いざって時、心配だ。
力のある代表的な七つの種族が保持しているのではなかろうか。
いや、待てよ。
ふと気付いた。分からない事があるなら、携帯電話で調べればいいではないか。俺には国王に貰った
西暦二千年以降の地球同様、アロファーガにも携帯電話はある。そして、インターネットもある。文明の利器ってのは利用すべきだ。
携帯を取り出し、俺は早速ネットにアクセスしてみる。初めてのネットサーフィン、知らない検索エンジン。何もかもが初めてだったが、ユーザーインターフェイスは似ているし、直感で操作できた。
デジタルネイティヴ世代を舐めてもらっちゃあ、困るね。ただ……ワイファイは流石に飛んでいない、か。パケット通信費が心配だ。
まぁ、電話もしないし、月々の料金は大丈夫だろう。電話帳には和田君とババ様の二人だけだ。
検索窓に「グランド・ラクリマ」と入力する。ヒットしたのは多数。その中に、ウィ○ペディアのようなものがあった。流石、何でも載っている大先生だ。
だが、どの種族が持っているかまでは明記されていなかった。概要欄は……ババ様が言っていた事ぐらいしか載っていない。
その調子で、俺は様々なサイトで知識を蓄えていく。
調べた所、この世界の種族自体は多岐に渡り、ゴブリンやハーフリング、サキュバス、ラミア、アラクネなど他にも色々存在するみたい。
……って事はだ。ラクリマを持っているのはその地域、棲家を仕切っている強い種族である可能性が高いんじゃないか?
ちなみに、種族に関して新たな発見があった。どうやら種族ってのは人間、すなわちヒューマンが一方的に付けた偏見のようなのだ。
ここで問題だ。例えば「エルフやドワーフは何の種族に当たるのか」と聞かれたら。……実は明確な答えがないようなのだ。カテゴライズで言えばドワーフとエルフは〈妖精〉である。じゃあ、妖精族かと問われると、疑問が残る。
妖精族という言葉は厳密には存在せず、考え方が普及していないからだ。
しかも、〈亜人〉という考え方がある。ドワーフやエルフは妖精だが、亜人とも言える。……ややこしいのだ。
バーで襲われかけた吸血鬼も、オーガ等の鬼人種に該当するのか、それとも吸血種や吸血族という一つの種族として捉えるべきなのか。同じく、分類的な問題が発生してくる。
つまり、学問的な分類を試みた時、〈種族〉という考え方が複数存在するのである。
となると……「ラクリマはそれぞれの族長が持っている」という前提すら怪しくなってくる。
それぞれの族と言っているが、分類法によっては鬼人族の中にオーガ、ヴァンパイア、二種類以上が存在するという事になる。もし双方の族長がラクリマを持っていた場合……鬼人族が持っているラクリマは二つだ。族長がそれぞれ持っているという事実に反する。
これが何を意味するか。例えば「ヴァンパイアからラクリマをゲットしたから、鬼人種はコンプリートしたぜ!」と思っていたら、それ以降、ラクリマの探索は迷宮入りする事を意味する。
むむむ、事態はあまり芳しくないようだ。
だが……
補足すると、見た目が人っぽい種族を大別すると〈人間〉〈亜人〉〈魔人〉〈妖精〉といった分類になるみたい。つまり俺が好きな人外は、このカテゴリーに属するってわけだ。
その他の生物を分類するなら動植物、昆虫、魔物といった具合になるらしい。……魔物も居るのか。
ついでに調べた所アサーガ、というかアロファーガにはスーパーマーケットが存在するようだ。
少し寄り道をしてみたら、二十四時間営業のスーパーを見つけたので入ってみる。中は人間の客も居れば、人外の客も居た。
肉、シーフード、野菜、フルーツ、日用品なんかも置いてある。見慣れない食品も多く……得体が知れないものは買わない事にした。暫くは自炊する余裕もなさそうだし、そのまま食えそうな加工食品などを購入しておけばいいかな。
両手にビニール袋を提げて帰路に着く。
冷蔵庫に食材をしまい、常温でいける食品は一箇所にまとめて置いた。
電子レンジとポットが欲しいな。ネットで注文が出来るだろうか。
疲れたな……。そういや晩飯を食べていなかった。適当に摘まんで、寝るか。
深夜四時。外がやや青みがかってきた頃、俺は心神耗弱状態で眠りに就いた。
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