幕間 3日後の牢屋で(1)
「久しぶりだね。今し方の会議で、処分の内容が決まったよ」
かつてリーズが収容された、牢獄。従者と共にそこを訪れたディオンは、鉄格子の中を覗き込みました。
その小さな部屋の住人は、元王太子のフィルマン・オズナウ。髪はボサボサで、顎には無精ひげ。頬はすっかり扱けてしまっており、かつての面影はもうありません。
「医師および協力者の5人は、強制労働を伴う終身刑。同じく報酬と引き換えに小細工をした友人達は、一年間の強制労働を。首魁であるマリー、ギュータス、フィルマンは、死刑。執行は一週間後だ」
「い、いやだ……。しぬのは、いやだ……。たすけて……。たすけて……」
「いやはや。あのフィルマン元殿下が、たった数日で抜け殻のようになるだなんて。何があったのでしょうかねえ?」
クククと喉を鳴らしながら現れたのは、オーギュスト・レーフェル。あの日ディオンに手を貸した、この国の公爵です。
「ディオン殿下、解決おめでとうございます。目の上のたんこぶがもうじき消え去る事、心より深謝いたします」
「……レーフェル……。お前のせいで……。おれは――」
「オレが協力しなくても、この御方なら自力でどうにかしていましたよ。所詮は、時間の短縮。どの道未来は変わっていないので、恨みながら死んでいくのは止めてくださいね」
オーギュストはフィルマンを軽くあしらい、「それはそうと」とディオンとの会話を続けます。
「おかげ様で愚者ツートップは粛清されますが、残念ながら王族は他の面子も腐っているんですよ。この三日間で、理解されましたよね?」
「ええ、そうですね。祖国ジェナには劣りますが、自浄作用が働かない程に腐敗していましたね」
王家の血を引く者は、皆が皆同じ。私利私欲を最優先とし、民はそのあと――。国の長にあるまじき考えの持ち主でした。
「こんな時代が続くと落ち着いていられませんし、何より国民が困りますよね。こう見えてもオレは、意外と
慈善事業には積極的に寄付をするなど、実際にオーギュストは数々の行動を起こしています。いつも飄々としていて掴みどころがない人間ですが、その想いは本物でした。
「今は、世論を活かして国を作り直せる絶好の機会です。こんなチャンスは、そうそうやってきません」
「ええ、そうですね。次があるとしたら、百年単位になるでしょうね」
「なので、ちょっとした革命を起こしたいなと思っていましたね。他の公爵などにも声をかけて、あれこれ考えているんですよ」
「…………。なるほど」
「しかしながら若輩故に妙案が出ず、暗礁に乗り上げる寸前なのです。そこで、殿下に。現国王陛下と共にジェナを立て直した殿下に、お伺いたい。貴方ならこの状況、どうしますか?」
「そうですね。僕でしたら、とりあえず……。『レーフェル卿は本当に曲者ですね』、と返しますね」
ディオンは苦笑し、肩をすくめました。
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