幕間 ディオンの夢

 僕の夢は、二つある。

 一つは王太子としての夢で、ジェナの繁栄と民に安寧をもたらすこと。

 二つ目は個人としての夢で、リーズと共に暮らすこと。


 あの子との生活はあの頃からの夢なのだけれど、その気持ちは日に日に強くなる。リーズと会うたびに、強くなっていった。


『でね。それからね。兄様のことを考えているとね、心がほわっとするようになってね、近くにいてくれたらもっともーっとほわっとするようになったの。ヘンテコな夢はね、最初は怖くって、最後は兄様をもーーーっと好きになる夢になったんだよっ』


『あのね。兄様と一緒にいる時が、一番幸せなの』


『私ね、いい子にしてるからね。また会いに来てね』


『ふにゃ……。にい、さま……。もっと一緒に、いたいな……。ずっと一緒が、いいな……』


 ありがたい事にリーズも僕との時間を大事に感じてくれていて、起きている時は普段は困らせないように本心を隠してくれている。

 そんなのを聞いて知ったら、強くならないはずがない。


(……ソレは僕の我が儘だと感じていた時期もあったけれど、今はもう迷いなんてない……。もう少しだけ、待っていてね)


 髪を梳いている最中に、ついつい眠ってしまった――表現を借りると『すーーーーっごくほわっとして』眠ってしまったリーズの頭をそっと撫で、あの日のようにそっと右手を握る。

 この時を好きなだけ続けられるようにすると約束し、僕は改めて誓いを立てたのだった。


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