幕間 出会い

『リーズ。明日、お兄ちゃんが家に戻ってくるよ』

『一時間くらいしか居られないみたいだけど、どうしても貴方に会いたいんですって。明日が楽しみにね』


 私にはジェナに留学している8歳上の兄がいて、今まで一度も会ったことがなかった。

 当時5歳だった私は、お父様とお母様に聞いた時からドキドキ。どんな人なのかな? どんなお顔なのかな? 優しい人なのかな?

 そんな思いで一杯になって、あっという間にその時が訪れた。


『リーズにとっては、初めましてになるよね。こんにちは。僕が君のお兄ちゃん、ユーグだよ』


 大きめの眼鏡をかけてシルバーグレーの髪を腰まで伸ばした、綺麗でカッコいい男の人。

 それが、初対面の時の印象だった。


『勉強が忙しくって、ずっと会えなかったんだ。本当に、ごめんね。これからは、一か月に一回は会えるように頑張るよ』


『リーズのことを、沢山知りたいな。好きな食べ物や嫌いな食べ物を教えてよ』



 あの時のことは、今でも鮮明に覚えている。

 兄様はとても嬉しそうに接してくれて、


『この世界をもっと良くしたくって、政治の勉強をしてるんだ。いつかきっとリーズの事も、もっともっと幸せにするからね』


 別れ際に口にした言葉には、力強さと優しさが溢れていた。


 だから、そうなるのは極々自然なことだったのだと思う。

 当時は人見知りだった私があっという間に打ち解けられて、この日から毎回一か月後が待ち遠しくなったのは。


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