西尾維新

Q:西尾維新の作品では、読んでいる間は歪んだ社会描写を楽しめているのに、読み終えた後は、その描写を何一つ思い出せません。何故ですか?















A:口では個人主義的に考えても、実際の行動では集団主義に従う一般的な日本人の感性に共鳴しているからだろう。




 多作な西尾は実に趣向豊かな作品を次々と発表している。メディア化されると9割がた省略されるが、原作では毎ページひねくれた社会描写、人間描写が溢れている。

 その描写が、面白くとも読み終えると全て忘れてしまうのは何故なのかといえば、実は大して斬新でないからだ。

 西尾の風刺描写は、よく読むと「~という実は平凡な願い」という方向に流れていく。賑やかな名前の登場人物たちは、一見自由奔放に振る舞っているようにみえても、心理描写では「彼らは実のところ平凡な存在に過ぎない」という方向に流れていく。口先では自由を説くも、行動では集団主義で、度を越えたと判定した個性は排斥する日本人の心理に優しい風刺だ。


 最大の代表作の「~物語」の根本は、ヒロインたちの自由を類型的で平凡な男子学生の阿良々木が馴致させることだ。そんな平凡枠が主役でない他作品だと、平凡志向はややマシになっても、登場人物たちは常に平凡との戦いに晒されている。

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