第一章 大男side

第2話 耐え難い恥辱



 俺は一介の冒険者だった。


 身を粉にして働く母のために十二歳で剣を持ち、魔物の討伐を始めた。



 幸いにして俺には剣の才能があった。

 十八になる頃には名の知れた冒険者になり、二十で見目良く魔法の才覚がある女を引き入れたパーティーを構成した。



 二十代も後半になって久しく、権力者とも渡り合える力を手にしたと思った時。


 俺は、魔王討伐への参加依頼を再三断っていた教会相手に嵌められた。




 あれよあれよという間に俺のパーティーは拘束された。女には魔法封じの縄がかけられ、俺は筋弛緩作用のある鎖で全身を縛られた。


 加えて、俺の首には”呪縛の首輪”――――強大な力を持つモンスターを使役する際に使用される首輪をつけられた。



 耐え難い恥辱だった。今まで挫折の無かった人生において、奴隷の身分を象徴する首輪をはめられたのは最大の汚点だった。




 抵抗する俺が最後に見たのは桃色に近い紫の光だった。

 対モンスター用の昏睡魔法だ。



 奴隷になる屈辱的な未来を予感しながら、俺は長い眠りについた。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る