僕はあなたを愛しているし、苦しむあなたは愛らしい
カネヨシ
プロローグ 転生者side
第1話 「首輪、僕とお揃いですね」
僕は普通の大学生だった。
そして、どうしてか知らない世界にやってきてしまった。
気が付くと僕は仰々しい召喚陣の中心に倒れていた。高熱を出した時のように全身がだるく、指の一本さえ動かすことが出来なかった。
そんな中で、世界史の教科書に載っていたような煌びやかな服をまとった人たちが僕に首輪をつけた。
「魔王を討伐せよ。そうすれば”呪縛の首輪”から解放してやる」
僕は王様にそう言われた。
その後、僕は城の裏門から連れ出され、城下町を取り囲む巨大な壁の外にある草原に放り出された。気怠さは未だ残っていたが、何とか立って歩けるくらいにはなっていた。
何故かやるべきことはわかっていた。
何も持たない僕は、ただ一つ大きな使命を背負っていた。
僕は頭の中にある道しるべに従って歩き続けた。道中で気味の悪い獣も巨大な化物も退けた。
この世界は剣と魔法の世界だった。
僕は強かった。だから、僕は魔王を討伐しなければならなかった。
ある日、僕は奴隷商のキャラバンに遭遇した。ずっと人がいない場所を旅していたため人間に会うのは久しぶりだった。
キャラバンの周りには武装した教会の人間が四人、御者が一人。キャラバンの中には奴隷が四人いた。奴隷は綺麗な容姿の女の人たちが三人、筋肉質な巨漢が一人だった。
女の人たちは手足を縄で縛られていた。
一方、男の人は全身を鎖で縛られ、首には僕のそれとよく似た首輪がつけられていた。
男の人だけは何かで眠らされていたようで、周囲がどれだけ騒がしくなろうと目を覚まさなかった。
僕は処理した奴隷商と女の人たち、そして眠ったままの男の人をキャラバンに乗せて旅を続けた。
男の人は長く眠ったままだった。四日経って彼はようやく目を覚ました。
目覚めた彼は酷く動揺していた。
おはようございます、と声をかけた僕に、彼は不自由な身体を器用に動かして噛みつこうとしてきた。
僕は彼が暴れないように押し倒し、死なないようにその首をそっと絞めて言った。
「首輪、僕とお揃いですね」
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