獣化をしたら彼氏はエサ ♪
楠本恵士
獣化なんですけれどぅ①「獣化するって大変」
昼食時間──学校の中庭にある芝生の上で、ランチマットを広げて四人の女子生徒が昼食と会話を楽しんでいた。
彼女たちは、仲が良い獣化人グループだった。
家から持ってきた、キャベツやニンジンをバリバリかじっている、草食動物系の獣化人女子生徒が。
赤い肉汁がパンに染みている、レアな焼き加減の厚切り肉が挟まったサンドイッチを食べている女子生徒の
「ねぇ、調って今も純正人間の
「ん? 普通につき合っているけれど、それが何か?」
生魚を丸ごとかじっていた、別の獣化人女子生徒が驚いた顔をする。
「よく、デートしていて食べないね……不思議」
トゲが生えた平らなサボテンを、ムシャムシャ食べている。おっとりした感じの獣化人女子生徒が言った。
「獣化人同士は、草食系、肉食系、雑食系とあるけれど。一緒にいても食べるコトはないけれど……獣化人と純正人間のカップルっていうのは……ねぇ」
そう言って、サボテンを食べている獣化女子生徒はベキベキと制服の背中を破って、ゾウガメの甲羅を出現させた。
生魚をかじっていた、女子生徒の腕から、ザワザワと灰色の毛が生えてきて、ハイイロクマの腕と頭にクマの耳が生えた。
キャベツやニンジンを食べていた女子生徒の頭からニョキニョキと、ヘラジカの角と耳が生える。
部分獣化〔コスプレ獣化〕の時には、動物のパーツ耳と人間の耳がなぜか一緒に体にあった。
ゾウガメ獣化人の女子生徒が、破れた制服の背中を振り返り見ながら言った。
「第一段階の部分獣化って、服破れるから嫌い……家の自分の部屋でなら、スッポンポンになって思いっきり第四段階の完全体獣化〔ケダモノ獣化〕なら……脱衣しているから、服破れる心配しないですむのに」
手鏡で角を見ながら、ヘラジカ女子が言った。
「破れても学校側から、新しい制服支給してくれるからいいんじゃない……支給回数には上限もあるけれど」
ヘラジカ獣化人の女子生徒が、自慢の角を触って爪を磨くように研磨する。
彼女は女子でもなぜか、ヘラジカの角を持っていた。
野生のヘラジカのメスは角が生えていないが、ヘラジカ獣化人にはメスでも角が生えている。
ハイイロクマの獣化人女子が、四肢の動物ポーズになって言った。
「学校だと、これ以上の獣化はムリか……足もクマ獣化したいんだけれどストレスたまるぅ。
そう言えば、調って学校では一度も獣化した姿見せたコトないね? 肉食系動物の獣化人なのは、わかっているけれど──なんの肉食獣?」
サンドイッチが入っていた空のお弁当箱を閉じて、両手を合わせてから調が言った。
「あたしは、別にいいよ……学校で獣化したくないから、ストレス溜まっていないから」
「本当かなぁ……獣化ストレス溜まってないの?」
ハイイロクマ獣化人の女子生徒の頭が、一回り膨れてハイイロクマの頭になって立ち上がる。
人間の体サイズのまま、腕と頭だけ獣化した第三段階の頭部獣化〔被り物獣化〕なので、見た目のバランスが悪い。
獣化人たちの悩みのタネは、人間形態から獣化すると体のサイズ変化で着ているモノが破れるリスクがあるので。
衣料費が純正人間よりもかかると、いうことだった。
男性獣化人の場合は、上半身裸体になって。ベキッベキッと気楽に獣化できるが、女性の場合はなかなかそうはいかない。
最近は獣化人用に、破れないように伸縮性が高い衣服や下着も開発されて売られているが、まだちょっと価格は高い。
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