夢の断片
白いまごころ
~地球にうっかり不時着してやっと帰れることになった宇宙人視点です~
「明日ついに到着するそうです!」
わっとその場がわいた。
地球風に言えば二十センチメートルくらいの小人の俺たちは、けっこう昔に、地球に不時着した宇宙人だ。時間はかかったが、ようやく本星に戻ることができる。
良かった。これで俺のやるべきことは終わった。
俺はそっとお祝いムードの場を抜けた。
夜の闇に紛れて救助に来てくれた宇宙船に乗り込む人波に、彼の姿がなかったの。
隠れ家を探しに行くと、荒い息でぐったりする彼がいたわ。
「どうして来ないの? 出発してしまうわよ?」
彼から話を聞くと、彼は病気にかかっていて、宇宙船にのりこむと病気を持ち込むことになるから乗れないって言うの。
「そんな。ここまできて」
今まで尽力してきた彼も無念だろうに、すでに意識が
「なにか私にしてほしいことはある?」
「成体に……なって」
それはもしかしたら、無意識から出た言葉だったのかもしれない。
私たちが成体になるのは伴侶の前でだけ。地球で言うところの「裸が見たい」に等しい言葉を、こんな時に言うなんて。
でも、このまま彼を放っておいて本星に戻ったとして、私は後悔しないかしら?
さっきまで俺を気遣っていた声が聞こえなくなった。
あぁ救助船に行ったんだなと思ったその時、もふりと全身がやわらかい毛の感触に包まれた。
目を開けると、白くてあたたかい身体が俺を包んでいた。
あぁ、ありがとう。
やわらかな感触に抱かれて、俺の意識は消えていった。
end
この夢では男性視点で、他の人の気持ちはわかりませんでした。
成体は地球の猫型らしく、この女性の成体は真っ白の猫で、小さい男性の全身をもふっと包んでくれた感触が気持ち良くて安心できて、最期はすごく満足していました。
↓以下若干、蛇足です↓
でも、成体になるのは生涯で一対一っぽくて、彼女はもう他の宇宙人と結婚できないっぽい。しかも、成体になったら戻れない?(本星では大丈夫かもしれないけど地球では無理?)かで、今回の救助船には乗れなくなったっぽい。
後からよくよく考えたら、すぐ死んじゃうなら女性を引き止めない方が良かったのでは? 猫の姿になっちゃった女性は地球で猫として生きるしかなくなるんだから、ひどくない? などと微妙な気持ちになりました。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます