帰ってきた
アヒルがわあわあ泣いた。
「おかしいと思ったのよ、白い花なんて門出のときに贈るものだもの」
ヤギは染めたばかりの青いテーブルかけを、アルマジロは手作りの深いカップを枕元に置き、肩を落とした。
「せっかくの贈り物も見せられなかったな」
カンガルーが懐から小さな手紙を取り出し、枕に添えた。
「ヨナじいさんに手紙を書いてきたのに。何を書いたら喜んでもらえるかわからなかったから、ずいぶん書き直したけど、大好きだって書いてきたんだ」
しんみりとしていると、扉が開いた。誰もがヨナじいさんかと思って振り向いたが、そこに立っていたのは若いカエルだった。
「お久しぶりです。おじいさんはどこです? 帰るって手紙を送っておいたのに」
帰ってきたのは占いの修行に出ていたドンという名のカエル。ヨナじいさんの孫だった。
誰もが言葉を失い、顔を見合わせた。やがて、無言のまま置き手紙を差し出したのはカンガルーだった。
ドンは置き手紙に目を通し、空のベッドにそっと手を置いた。
「さては、自分を占ったな」
しんみりとした声だった。
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