旅立ちの白い花

 翌日、今度はヨナじいさんにおかしなことが起こった。

 最初に気づいたのは、郵便配達のカンガルーだった。いくら玄関をノックしても返事がない。


「困ったな。いつもなら家にいる時間なのに」


 そこにヤギとアルマジロ、アヒルが続々とやってきた。みんな両手に贈り物と白いバラを抱えている。


「やあ、カンガルー。早かったね!」


「うん。でも、おかしいんだ」


 カンガルーの話を聞いたヤギが思い切って扉を押し開けた。鍵はかかっていなかった。家の中は薄暗く、しんとしていた。急いで中を探してみたが、ヨナじいさんの姿はない。


 アヒルがまだ温もりの残るベッドに一通の手紙が置いてあるのを見つけた。手紙に目を通したカンガルーが青ざめた顔で叫ぶ。


「大変だ! ヨナじいさんが旅立った!」


 ウタカタンの者ならみんな知っている。誰もがいつかはどこかへかえるのだと。誰も知らない、どこかへ。


 そしてヨナじいさんは人間だったらちょうど百歳になる誕生日の朝に、どこかに旅立って行った。

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